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ia19200102
謎の女
「ちょっと、あなた」
大型書店の3階の一角。ひと気ない本棚の前で
目当ての本が見つからず、背表紙のタイトルを
ひとり真剣に眺めていた。
集中するあまり、どこかしら隙があったのかもしれない。
私の直ぐ横に60がらみの小柄な女が立っていた。
誰?
その瞬間、記憶を手繰り寄せてみても
会ったことがあるようには思えなかった。
女は私の顔をじっとみつめながら
続けてこう言った。
「あなた、左肩が凝らない?」
えっ?左肩が何だって?
「あなた、左肩がときどき痛くなるでしょ?」
私に何かが憑いているとでも言いたいのだろうか?
先回りしてそう考えた。
「いいえ」
と、そっけなく答えた途端に女は
何も言わずに行ってしまった。
また静かな空間に戻った。
真っ昼間の店内で起こった、わずか数十秒の出来事。
あれから数年経つ。
左肩が本当に痛くなった。
突然目の前に現れたあの女は
私が悩まされるようになることが
わかっていたのだろうか?
今となっては知る良しもない。
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