KP法とウェビングマップ
来年2022年度から、新たな学習指導要領による授業がスタートする。2019年に公表されたGIGAスクール構想(Global and Innovation Gateway for All)がコロナ禍で前倒しされたこともあって、生徒一人に一台の端末を持たせ、ICTによる授業デザインが教育現場で進んできている。私の勤務している高校でも、Chromebookを購入してもらい、これまでの一斉授業に個々の能力に応じたICT教育を組み合わせたやり方を模索している。
でも、端末やプロジェクターはあくまでも学習ツールであり、それを使うこと自体を目的化しないように注意する必要がある。私自身も、授業準備で画像を選択し、Power Pointを作成するなどしているが、問題なのは生徒が「何をどのようにして学び、そこから何を課題として考えるのか」が重要であることを、自問自答する日々を送っている。
そこで、授業テーマに即して、単元の導入や振り返りで実践しているのが、KP法とウェビングマップである。この方法は、デジタル教材の開発が進む中、その方向性に逆行するようなアナログ的な授業手法である。その方法を簡単に紹介したい。
1.KP法(紙芝居プレゼンテーション法)
この手法は、黒板やホワイトボードに紙をマグネットなどで貼り付け、授業の流れやテーマの説明などに利用し、授業に参加する人たちの思考を整理するのに効果的である。私はたまたま板書できなくなった事情があり、そこから板書せずに説明するKP法を取り入れたのだが、結果的に板書をノートに写す必要がなくなり、生徒が物事を考えたり文章化したりする時間を創出することにつながった。また、自分が何をどのように説明するのか、自分自身の頭の中を整理するのにとても有効であった。
ちなみに、私の専門である「マヤ文明」の授業をしたときのKP法の写真はこんな感じである。
この手法の利点は、以下の四つであろう。
・テーマや時代の流れを、短時間で要点よく説明できること。
・板書する時間を省くだけでなく、生徒のノートする時間もなくせること。
・シートがそのまま残るので、説明後も内容を確認できること。
・必要に応じて、シートのレイアウトを変えて再度説明できること。
2.ウェビングマップ
マインドマップとも呼ばれるこの手法(商品名として有名)は、自分の頭の中にある単語や用語、イメージやアイデア、知識や概念などを整理する思考ツールである。最初に一つの単語や図を紙の中央に描き、そこから連想される単語や用語を放射状に描いていく。とにかくイメージすることをどんどん書き続け、自分の頭の中にあるものを可視化して、その内容を整理・深化するのである。自己完結するのではなく、グループワークなどで各自が発表する活動につなげることもできる。
自分の授業で生徒の作品の写真を取り損ねたので、友人の授業の写真を拝借する(地理の授業で、友人からは快諾を得ている)。
この手法の利点は、以下の四つであろう。
・自分の頭の中にある知識や情報を可視化することで、内容を整理できること。
・マップを作っていく過程で、創造性が養われること。
・マップを他者に説明することで、表現力と協働性が養われること。
・他者の説明を傾聴することで、様々な視点を得られること。
実際、KP法で授業の目的ややり方を説明し、ウェビングマップを作成して各自が発表したところ、通常行っていたPower Pointを投影して説明する授業(といっても説明は10分にとどめている)よりも、生徒の思考が活性化され、集中して授業に参加できたという感想が、授業後の振り返りシートからも明らかになった。
さすがに毎時間というわけにはいかないが、ぜひ取り入れていきたい手法である。