28:変化
壁は新しく、新品の様相になる。
床はフローリングにして、
キッチンは総入れ替え。
家が一つ新しくなった。
私の家には、数十年支えてきた柱がいる。
彼はこのリフォームで壁の裏にいった。
もう見ることはできないであろう。
陰ながら私は彼に支えられた。
おもちゃのトラックをぶつけたこと、
私が初めてつけた傷だ。
落書きブーム、彼もまた標的になった。
小学生、父に穴を開けてもらってハンガー掛けになってくれた。
中学生、行き場のない怒りを君にぶつけた。
高校生、口も聞かなくなった。
大学、帰省して久しぶりに会った。
彼は変わっていなかった。
傷も、落書きも、凸凹もそのままで、
そこに立っていた。
今日壁の裏に彼は隠れる。
これからも変わらずそこにいてくれ。
ふと横に目をやると、
息子が柱に、
傷をつけていた。