中小製造業での現場カイゼン活動 ーその前にー(1)
製造業だけでなく、今や様々な企業や自治体にまで広がっているカイゼン活動。製造業では当たり前の活動で、重要施策として進められていると思います。
活動の拠りどころとなる考え方・手法・ツールとしてはTPS、5S、TPM等々あります。
TPS : Toyota Production System(トヨタ生産方式)
5S : 「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾」
TPM : Total Productive Maintenance(全員参加の生産保全・全員参加の生産経営)
これら考え方・手法・ツールの発祥は日本が多く、また日本発祥の方式が海外で研究され体系化されている例もあるとのことです。
名前を聞くことの多いこれら考え方・手法・ツールですが、製造業の歴史の中で生まれ発展してきたもので、今後も更に進化していくでしょう。
関係する書籍は多数出版され、指導者も多く、セミナー類も活発に開催されています。事例・失敗例は歴史の中で山のようにあると思います。
手法は確立され、ツールの使い勝手も向上し、成果の刈り取り確度も上がり、と思われがちですが・・・・・
カイゼン活動のあっけない頓挫、挫折
中小製造業でカイゼン活動を進めようとして、あっけなく頓挫、挫折してしまったということをしばしば聞きます。
手法・ツールの活用で躓いたとかではなく、 手法・ツールの活用以前に現場から反発を食らい、まともな活動が出来なかったということが多いようです。
カイゼン活動に対し、従業員の気持ちが後ろ向きで、モチベーションが低かったということです。
TPSでは「ものづくりは人づくり」を標榜しています。
TPMでは「全員参加の~」「人と設備の体質改善~」を掲げています。
5Sの躾では「ルールや規律を守るのが皆の習慣になるようにする」としています。
それぞれの考え方には現場の方のことが盛り込まれ、人に対し配慮した活動になっている、はずですが・・・・・
多様化する働き手
中小製造業の働き手ですが、コロナ禍で分野によっては一時求人は減ったものの、人手不足は相変わらずです。
働く人はますます多様化してきています。同じ職場内に正社員、パート、派遣社員、契約社員、アルバイトと雇用形態が異なる方々がいて、国籍も複数ということも珍しくありません。
また、誰でもネットで容易に情報入手できる時代です。「働き方」という言葉を聞くことが多くなりました。従業員は他社の働き方条件と比較したり(ネット上では信憑性に欠ける情報、偏った情報も多いでしょうが)、他社・他業種への転職もハードルが下がりました。
時代は刻々と変わって、働く環境も変化しています。
指導側がこれに気付かずに、あっけない頓挫、挫折になることが多いと思われます。
カイゼン活動の前に
このような時代における中小製造業での現場カイゼン活動ですが、手法・ツールの活用の前に、従業員の気持ち、モチベーションの在り方が非常に大切です。
手法・ツールの活用に長けている指導者は、手法・ツールを適切に使って進めようとします。この際、指導者がその現場の働き手のバックグラウンドをあまり理解していないとか、働き手の気持ち、モチベーションが上向いてないと、手法・ツールの活用以前に頓挫、挫折してしまうということです。
これは、経営者がカイゼンの必要を思い、外部から指導者を招き、「さー、やって下さい。後はお任せしますので」と投げてしまう場合に起こりがちです。お任せした指導者が、規則や命令で人を動かしてきた管理型マネジメントしか経験無い方の場合は要注意です。
外部指導者の下、成果を上げるには、3者(経営者/現場リーダー/外部指導者) 及び 2者(経営者/現場リーダー、経営者/外部指導者、現場リーダー/外部指導者)それぞれのコミュニケーションがとても重要になります。
活動開始にあたり、先ずは3者、それから2者間でベクトル合わせを行い、更に現場全員の気持ち、モチベーション向上の醸成が見えてきたところで、手法・ツールを適宜活用した活動に入ります。
(補足)
因みに大企業では、やるとなると計画を立て経営資源を投入します。直ぐに成果が出ずとも軌道修正しながらでも会社方針として継続させ、成果に結びつけます。
大企業でも働き手は多様化してきていますが、「働き方改革」「従業員エンゲージメント向上」と言った施策も同時に走らせています。
従って、いきなりあっけなく頓挫、挫折とはならないのが大企業です。
(大企業で成功をおさめた方が、同じようなやり方を中小企業に持ち込んで展開する際には注意が必要です。)
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
以上です。