【イベントレポート】monopo session vol.19 スクリプト(脚本) を考える-映画監督 川島直人さん 電通 諸橋秀明さん-
8月24日(水)に弊社オフィスにて開催されたmonopo session vol.19の様子をお届けいたします。今回は「スクリプト(脚本)」をテーマに映画監督 川島直人さん、電通よりCopywriter/CM planner 諸橋秀明さんのお二人をお迎え。スクリプト・セリフが効いている作品をワイワイと語っていきます。
SENPAIのご紹介
川島 直人 映画監督
1990 年生。日本大学芸術学部映画学科映像コース出身。
2016 年 映像制作会社ガンズロックに所属。
同年 自主映画「始まりの鐘をならせ」で FOX 短編映画祭にて最優秀賞を獲得。
2017 年 オフィスクレッシェンド主催「未完成映画予告編大賞」にてグランプリを獲得。
2018 年「高崎グラフィティ。」で商業デビューを果たす。同作品は都内で 6週間のロングランを記録。
諸橋 秀明 Copywriter/CM planner
秋田県潟上市(旧飯田川町)出身。
2006年 東急エージェンシー入社インタラクティブメディア局
2011年 同クリエイテイブ局に転局
2017年 電通入社
モデレーター紹介
宮川 涼 Creative Director/Engineer
ブランドとユーザーをつなぐコミュニケーションの企画から、クラフト、世の中にどう広げるかまで、横断的にディレクション・制作しています。 漫画・映画・音楽・テレビ・ラジオがめちゃくちゃ好き。
僕は人に迷惑をかけるタイプなんで
イベントはお二人の作品を鑑賞するところからスタートいたしました。
最初に川島さんは第9回BOVA準グランプリ作品のLINE「無言の仕送り」を観賞後にスクリプトをみながら、ボツ案がどのようなストーリーだったか、3分に収めるために台本を忠実に再現してくれる役者を選んだことなどの制作の背景を伺いました。なかでも興味深かったのがスクリプトの中に「あー」や「え」など、脚本家は省きがちな言葉が書かれており、監督だからこその演出が含まれたものになっているところでした。
諸橋さんの作品はコカ・コーラ「笑顔を、ここから。」キャンペーン「世界一のカフェ篇」。この作品のスクリプトは先程の川島さんのものとは対照的に、1枚に収まるとてもシンプルなものでした。広告案件ということもありクライアントへのプレゼンのための資料でもあるのでディティールではなく一目見て内容がわかるものになっていました。
監督が作成された細かいカット割やセリフなどが記載されている演出コンテをみせていただきました。ここに記載されているセリフも本番のものとは異なるもので、撮影に向かう新幹線の中でもセリフを推敲されていたとのこと。ご本人曰く「僕は人に迷惑をかけるタイプで」とのことでしたがギリギリまで細部までこだわるところがクオリティの高い作品を生み出す秘訣なのだなと感じました。
FILM WATCH PARTY
小休憩を挟んだ後は諸橋さんに集めていただいた、CGやどんでん返し、有名な曲などを使わない会話がメインのCMを見ながら、スクリプトについて語り合うパートになりました。
集めていただいたCMを3つのテーマに分類していただき、それぞれのテーマごとに3,4作品を鑑賞いたしました。3つのテーマは下記の通り。
「ひと匙の不幸」が会話のレベルをあげる
「ちょっとした発見と共感」が会話のレベルをあげる
「いつ」「どこで」会話をさせるか。を選び抜く。
「ひと匙の不幸」が会話のレベルをあげる
これはTUGBOATの岡康道さんから伺った言葉だそうで、ほんの少しの不幸が入ることによって会話がリアリティを持つとのこと。1から100まで幸せな人なんて存在しないから。スイカに塩をかけるように最後に幸せを際立たせる効果があるようです。
「ちょっとした発見と共感」が会話のレベルをあげる
見ている人が思わずなるほどと思ってしまうような視点を提示してそれを中心に会話を広げるパターンです。
これはどちらかというとユーモラスな作品が多いタイプで、風刺モノなども含まれるようです。
「いつ」「どこで」会話をさせるか。を選び抜く
この後、人類が滅亡するというときに言う「お腹いっぱい」と普段の会話の中で出てくる「お腹いっぱい」では意味が変わってくるように、同じ言葉でも場面によって大きく変わってきてしまう。会話が効果的になるシチュエーションを切り取られているパターンです。
隣の隣のクラスにいそうな人
最後は質疑応答のコーナーになり最初の質問は
セリフを決めていくためにどのように考えているかという質問に川島さんは、リアルな会話をつくるためには少しのフィクション要素を足すことを意識することが大事で、そのためには隣の隣のクラスにいそうだなと思うような人を想像して書くと若干ファンタジー要素が足されていいバランスになるとのこと。そのために実際に卒業アルバムを開いてみて、あまり関わりがなかった人を想像したりしているそうです。
対して諸橋さんは、「発見」を探しているとのことでした。これは先程のコーナーの2つめのパターン「ちょっとした発見と共感」のことで、その「発見」を中心にセリフを展開していくとのこと。また当日でも俳優さんが話したときに違和感があれば変えていくこともあるそうです。
映画と広告作品との違いが出ていてとても興味深いお二人の回答でした。
気持ち良くなったらアウト
最後は1つの作品にどのくらいの数のスクリプトを書くかという話題になりました。
諸橋さんは会話のバリエーションはそんなにでないので4〜5稿だけど、ナレーションやコピーは作れば作るほどよくなるので時間が許す限り書いて、コピーなどは100本くらい書かれるそうです。
対して川島さんがいま手がけている作品は52稿とのこと。いくつも作っては壊して壊しつくって残ったルートを選ぶのだそうです。ただ、その際に気持ち良くなってしまうとアウトで、気持ち良くなるというのは自分が知っているもの、どこかで見たことを書いているのでいい作品にはならないとのこと。しんどい方法を選んだ方が面白くなる傾向があるのだそうです。なるべくしてなったというよりもこうなってしまったかというようなスクリプトの方がいいとのことでした。
今回は映画と広告というフィールドが違うことによる、お二人の取り組み方や考え方の違いが明確で、とても興味深いお話を聞くことができた濃厚な2時間超のセッションでした。
川島さん、諸橋さん、ありがとうございました。
執筆:松村 広則(monopo Tokyo PR)
撮影:馬場雄介 Beyond the Lenz (https://www.instagram.com/yusukebaba)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?