【イベントレポート】monopo session vol.18 アイデンティティをデザインする -kern inc.タカヤ・オオタさん B&H Ryosuke Tomitaさん-
7月28日(木)に弊社オフィスにて開催されたmonopo session vol.18の様子をお届けいたします。今回は「アイデンティティをデザインする」をテーマにkern inc.よりタカヤ・オオタさん、B&HよりRyosuke Tomitaさんのお二人をお迎え。どのようにブランドと向き合っていくのか実際のプロジェクトを紐解きながらお話いただきました。
SENPAIのご紹介
タカヤ・オオタ Designer / Art Director
2017年、株式会社ケルンを設立。主にスタートアップ企業と協業しながら、アイデンティティ・デザインの設計と制作を行っている。CAMPFIRE (2022)、LUUP (2022)、青山ブックセンター (2020)、Mr. CHEESECAKEなど。
Ryosuke Tomita Art Director / Brand Designer
2014年よりB&Hに参加。ブランドのビジュアル・デザインプランニングから制作までを担当。アートディレクション、UIデザイン、グラフィック、パッケージデザイン、プロダクトデザイン、フォトグラフィなどの分野で活動。
モデレーター紹介
宮川 涼 Creative Director/Engineer
ブランドとユーザーをつなぐコミュニケーションの企画から、クラフト、世の中にどう広げるかまで、横断的にディレクション・制作しています。 漫画・映画・音楽・テレビ・ラジオがめちゃくちゃ好き。
一つの事業を作るなかで、デザインがはたす役割とは
イベントはタカヤ・オオタさんとkern inc.のご紹介からスタートいたしました。
LUUPや青山ブックセンターなどの事例ではそれぞれどのようなことを考えてお仕事をされていたかということを簡単にご紹介いただきました。
monopoを卒業したのち、事業会社を経て独立されたオオタさん。デザイン事務所を立ち上げてから、デザインの世界でよく使われがちな「ブランディング」という言葉について深く考えるようになったといいます。そんなとき、2019年から半分インハウスのデザイナーとして参加している「Mr. CHEESECAKE」のプロジェクトにてブランド全体を俯瞰してみる機会が。製造から注文、流通と消費といった一連の体験がブランドを作っていること、そのなかでデザインがどのように機能しているのかを考えるようになったそうです。ロゴやビジュアルをつくることがブランディングではなく、ブランド全体の解像度をあげて制作にあたることを大切にされているとのことでした。
やれることはやっちゃおうって
次にTomitaさんのご紹介では、B&Hに入社されるまでの経歴から始まり、そこからB&Hの会社と制作のプロセスをご紹介いただきました。Tomitaさんがアートディレクターとして担当した「Rinnai」のプロジェクトでは、製品に関わるオリジナルフォントの制作、プロダクトのデザイン、CMの絵コンテまで、一般的なアートディレクターのお仕事を超えた範囲まで担当されていたとか。「なぜそんなところまで?」という質問に対して「やれることはやっちゃおうって」というなんともシンプルなお答えをいただきました。役職にとらわれないマインドだからこそ、多角的なクリエイティブを生み出せるのなのだなと感じました。
60歳までデザイナーをやるための生存戦略
お二人の紹介の後に参加者さんから「ADという肩書きだと語れない自分の特徴についてキャッチコピーをつけるとしたらなんですか?」という質問があり、ADという役職についてや、そこからのキャリアについてのお話になりました。オオタさんのデザイナーはアートディレクターに、アートディレクターはクリエイティブディレクターにならないといけないという風潮があるが自分はデザイナーでいたい。60歳まで、生涯かけてデザインをやるための生存戦略として、今何をやるべきかを考えているとのことでした。
プロジェクトの5割はリサーチに
最初のテーマは、プロジェクトに対する時間配分。Tomitaさんはヒアリングや戦略が固まったあと、提案までの1ヶ月のうち5割はリサーチに時間を費やしているそう。ブランドのことを知るためネットで調べるだけでなく、実際に店舗を訪れたり書籍を読むことで理解を深めているとのことでした。すべてをインストールをしたあと一度時間をおくことで、ふとまとまることがある、という言葉が印象的でした。
自分の中に正解を作らないようにしている
自分の好みではないが、このプロジェクトとしてはこれが正解となったとき、制作物とどう向き合っていくか、このテーマについて、オオタさんは自分の中に正解を作らないようにしているそうです。お客さんとクライアントの思惑や感性の交差する場所がどこかを追求していけば自分の好き嫌いが入りこむ余地は生まれない。ただ、角や処理のディティールはとことんこだわり、クライアントに一任いただけるように交渉しているとのこと。責任を持つ場所の切り分け方を明確にすることが大事だと感じました。
今回はクライアントやプロジェクトとどう向き合うかといった話から、アートディレクターとしてのキャリアパスといった個人としての考え方までかなり幅広いお話を聞くことができた濃厚な2時間超のセッションでした。
オオタさん、トミタさん、ありがとうございました。
執筆:松村 広則(monopo Tokyo PR)
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