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monopoの新たな支社がパリに。プロデューサー友谷朝子が「monopo Paris」を立ち上げるまで。 - Vol.2 「パリ視察」

2023年秋頃、クリエイティブエージェンシーmonopoは、パリに支社「monopo Paris」をオープンさせる。ロンドン、ニューヨーク、そしてサイゴンに続く5つ目の都市に進出することになるけれど、すごいスピード感じゃない?そもそも、なんでパリ?

「パリでチャレンジしたい」と自ら立ち上がり、monopo Parisのファウンダーとなったmonopoプロデューサーの友谷朝子(ともたにあさこ)さん(以下、朝子)。monopo Londonのコーファウンダーであるメラニーさん、マテイスさん(両者、以下敬称略)とタッグを組み、現在ロンドンにて奮闘中。3人に定期的にインタビューしながら、この海外支社設立プロジェクトを追いかける。

(インタビュー・執筆:常松亜子)

Vol.1はこちら!


3人で初のパリ視察へ

8月下旬、あさこ、メラニー、マテイスの3人はパリへと視察に足を運んだ。「今日のパリのクリエイティブシーンで、どんなことが起きているかを知りたくて!」というのが主な目的だ。クリエイターたちはパリのどんな部分にワクワクしていて、逆にどんな部分にフラストレーションを抱いているのか? パリに足らないものがあるとしたら、それは何なのか? 

パリのクリエイター仲間とテラスで乾杯

「それに加えて、『パリにmonopoが来ることについてはどう感じる?』というのを聞いて回ったよ。みんなにどんな反応をされるか、というのをリサーチしに行ったんだ」と、フランス人デザイナー/ディレクターのメラニー。ストラテジストのマテイスも、「とにかく『みんなに教えてもらう姿勢』というのを心掛けて行ったんだ。僕たちは僕らなりの強いクリエイティブビジョンと考え方を持っているけど、それをパリに突然押し付けるつもりはなくて。僕たちがこれからパリで何をするのかを伝える、というよりは、まずはパリに住む人たちの話を聞きたかったんだよね」と話す。

monopo Parisに対するみんなの反応は……?

「もしかしたら当たり前なのかもしれないけど、この初視察には結構ドキドキしながら挑んだんだ」と言うのは朝子。「3人の非パリジャンがパリにやってきて、エージェンシーを始めようとしていることなんて受け入れられないんじゃないか……」という不安があったそう。

朝子:「もし、『あなた達は何もわかっていない』なんて言われたらどうしよう……とか! でも、いざ行ってみたらそんな心配は全然必要なかった。2日目の夜に「気軽に乾杯して話そう」というちょっとした交流の場を計画していたんだよね。とは言っても、私たち3人と、2日間で出会った人たちの中から3人くらいが集まればいいんじゃないかな、という程度の気持ちで6人のテーブルを予約したの。そしたら、あれよあれよと人が集まり、結局合計12人になった。パリの人たちが私たちの呼びかけに反応して、私たちと知り合うことに時間を割いてくれた。みんながmonopo Parisに興味を持ってくれていて、『私たちのことを歓迎してくれてる!』って感じることができた

日本の文化を配信するTEMPURA MAGAZINEのオフィスにて

メラニー:「声を掛けたら、みんな予想以上に反応が良くて! 私たちと繋がりたいという姿勢を見せてくれた。基本的には日中に1、2時間、コーヒーを飲みながら話をするような形を取ってみんなに会っていたんだけど、「ちなみに夜、もっとゆっくり飲みながら集まるので、もしよかったらぜひ来てください」と言って誘ったら、見事にみんなが来てくれた。

マテイス:「ロンドンで同じことをしたら、半分の人は来ないと思う。『ぜひまた別の機会に』なんて言って(笑)」

メラニー:「みんなよく来てくれたよね。」

朝子:「今回会ったのは、ファッション、映像、デザインとか、とにかくいろんな業界のクリエイターたち。フィルムディレクター、エージェンシーを立ち上げた人、マガジンを作ってる人などなど。フランス人はもちろん、パリに住むさまざまな人種の人たちと会った。以前からの知り合いも、初対面の人もいて、こういう風にいろんな人に話を聞くのはすごく楽しかったし、すごく参考になった」

マテイス:「会った人たちには、『最近のパリについて、どう感じる?』というシンプルな質問をしたよ。直近の感覚やみんなの気持ちについて聞きたいと思って。『今日のパリで、クリエイターでいるのってどんな感じ? 自由度は高い? それとも制限が多い? クリエイターとして活動していて楽しい? それともつまらない?』という内容が主だったかな」

メラニー:「『今のパリのシーンをどう見てる?』という質問から、深掘りしていくというか。みんなそれぞれ、結構違うことを言うの。だけど、根っこは大体同じ線上にある。そうやって、いろんな角度や意見を知れたのはすごくよかったな

monopoのインターンとして東京で一緒に働いていたメンバーも飛んできてくれました

今のパリは「ダイナミックな時期にあって、すごくエキサイティング」

マテイス:「みんなとの会話から学んだこととしては、パリは今、とにかくダイナミックな時期にあるということ。ここ数年で、ものすごく進化があった。パリの人々が、フランスという域を超えたところで起きていることに興味を持っているんだ。そこからは「もっと外の世界に広がっていきたい」というパリの野心も感じるしね。これからフレンチ・クリエイティビティーがヨーロッパ中に大きなインパクトを与えるはず。それというのは、パリの若い世代のクリエイター達が先導しているという部分も大きくて、上の世代もその世代に背中を押されている。若い彼ら彼女らは、自分たちの力でどんどん成長していけちゃうし、大きな予算とか大きなエージェンシーに頼るような働き方はしないからね。

とあるフィルムディレクターと話したんだけど、彼は元は3Dのビジュアル制作やミュージシャン向けの仕事をしていたんだ。今はフィルムディレクターとして大成していて。そんな風に彼独自のサクセス・ストーリーをパリで作り上げていて、さらに近年は若い世代たちにエンパワーされて、なおさら彼独自のビジョンを強めながら活躍しているんだ。彼のように、これまでのやり方に沿った働き方やキャリア形成にこだわる必要はないと考えるクリエイターが、もっとたくさんいると感じたで、そんな彼ら彼女らは全員、今のパリにものすごくエキサイトしているんだ。

クリエイター仲間たちと最後まで話が尽きません

アメリカの著名なスターなんかとも仕事をしている別のフィルムディレクターとも会ったんだけど、彼視点でのパリについての話を聞けたのもよかった。彼も同じく今のパリがとてもダイナミックだと話して、パリのコミュニティーが国際的な注目を集めていると教えてくれたんだ。『パリがトレンディだ』とかではなく、世界各国でパリのいい噂が流れているような感じ。「へぇ、面白いね! このクリエイティブ、パリからなんだ……」みたいな。僕らもそういうクリエイティブを支えるインターナショナルな存在として成長し続けたい。パリが拓けていっているし、そこに注目が集まっている。僕たちにとってすごくテンションの上がる話だった」

メラニー:「前回も挙がった話だけど、若い世代の人たちはどんどん英語を喋るようになってきているって。私もフランス出身だからわかるけど、フランス人てみんな本当に英語を喋らないの。英語を喋るのが苦手だし。だからそうやって若い世代が英語に親しんでいるというのは驚き。SNSの恩恵なのかな? なんにせよ、すごく良いことだと思う」

朝子:「私もそれに一番驚いたかもしれない。若い人たちが英語を使ってるだけでなく、英語を使う機会を求めているんだって。これは、私の知るフレンチ・アティチュードではない(笑)」

マテイス:「僕らがパリに行くっていうのと、それと同時にパリも外に目を向けているっていう。そのコンビネーションこそ、僕らが求めているもの。パリとの間にある扉は開いているように感じた。とても前向きな気持ちにさせてくれた視察だったよ!」

インディペンデントな存在のエージェンシーとして

たくさんの人の話を聞いていく中で、巨大な企業やクライアントが力を持ちすぎていることに、パリのクリエイター達がもどかしさを抱えているという側面もはっきりと見えてきたそう。「特定のエージェンシーやクライアントのパワーが強すぎて、せっかく才能あるフランスのクリエイターがたくさんいるのに、彼ら彼女らがいつもフルで力を発揮できる環境がたくさんあるわけじゃないみたい」と、マテイス。だからこそ、新たな働き方や、他社とはちょっと違ったやり方をする会社にみんなが興味津々だったという印象を受けたと話す。

朝子も、「パリのクリエイティブ業界には、長い間をかけて構築された仕組みのようなものがあって。大きなブランドやエージェンシーと、そこを中心としたネットワークがとても強固。それは、より小さなエージェンシーにとっては、その仕組みの中や市場に割り入っていくことが大変ということ」と語る。「そういう意味では、パリには日本に近しい部分もあるのかもしれない」と言うメラニーは、「monopoというのは、他の制作会社とも大きな広告代理店とも違う、ユニークな存在。東京でそうであるように、パリでもそんな存在になれると思っている。だから、monopo Parisならではの役目がある気がする」とのこと。

新しく出来たギャラリーにて、ベルリンで繋がった仲間と

「monopoがインディペンデントなエージェンシーであるというのは大きいと思う。強力な大企業がいて、大きなグループを持っている、という構造の中でインディペンデントでいるというのって、すごくエキサイティング。なぜなら、僕らはもう既にそういった仕組みのようなものを持っていて、やるべきことが決まってしまっているクライアントとは仕事をする必要がない。だからこそ、たくさんのことにチャレンジできる」と、マテイスも付け加える。
「そうやってmonopoはクリエイティブに制限をかけることなく、独自のビジョンを育てて、『これだ!』と思うものを信じて仕事をし続けてきているしね。これってすごくユニークなことだし、東京でも、ニューヨークでも、ロンドンでも全てのmonopoで言えること。だからmonopo Parisもきっとそうなるよ。」

続くVol.3では、monopo恒例の「チームフォト撮影について」をお届け予定。どうぞ、お楽しみに。


monopo Paris Instagram: https://www.instagram.com/monopo_paris/


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