【モノの図書館事例紹介】ヒルズボロ公共図書館
こんにちは。モノの図書館研究所の佐藤です。
今回はヒルズボロ公共図書館を紹介します。数あるモノの図書館の中でも精力的な活動を行っている図書館の1つです。
ヒルズボロ公共図書館 The Hillsboro Public Library
https://www.hillsboro-oregon.gov/our-city/departments/library
ヒルズボロ公共図書館とは
ヒルズボロ公共図書館(Hillsboro Public Library)は、アメリカ合衆国オレゴン州ヒルズボロ市が運営する図書館システムで、市内に2つの主要な支部、ブックモバイルサービスを展開しています。1982年に設立され、現在は市民の学習、娯楽、情報へのアクセスを支援する重要な役割を担っています。蔵書には書籍、電子書籍、DVD、雑誌、研究資料が含まれ、多様な年齢層や興味に対応するよう設計されています。特に「ライブラリー・オブ・シングス(Library of Things)」が注目されており、住民は工具、楽器、調理器具、ガーデニング用品など、非伝統的なアイテムを借りることができます。図書館では、読み聞かせやクラフト教室、技術ワークショップなどのプログラムが定期的に開催され、地域住民同士が交流する場を提供しています。また、現代的で持続可能な建築を採用しており、環境に配慮した運営も特徴です。地域コミュニティに根ざした運営方針で、市民からの寄付やボランティアの参加も活発に行われています。(chatGPTにより)
「すべての人のために」本以外のモノを揃える
Hillsboro Public Libraryの「Library of Things」は、地域住民の多様なニーズに応えるため、伝統的な書籍や電子資料の貸し出しに加え、日常生活で役立つモノを提供する取り組みとして2015年に開始されました。このプロジェクトの目的は、地域コミュニティでのリソース共有を促進し、物品購入の経済的負担を軽減すること。初期には、限られた数のアイテム(工具や調理器具)が貸し出されていましたが、住民からの好評と利用者の増加により、コレクションが拡大しています。*1
体験を試す
モノの図書館では、体験を試すことができる(ヒルズボロ公共図書館では、これをChecking out an experienceと呼んでいます)とラックス氏は述べています。*2 このコレクションにより、実際に購入する前にモノを試すことができ、結局欲しくない、または必要ないモノを購入する必要がなくなります。また、これらのアイテムによって、購入するまでもないモノや購入する余裕がない人に対しても、体験にアクセスすることが可能になると述べています。コロナ禍によって、このアクセスには更に大きな意味を持ったと述べています。
キッチン用品、STEM玩具、楽器など1,000を超えるアイテムを収蔵
ヒルズボロ公共図書館では、キッチン用品、子どもたちがプログラミングを学べるおもちゃや顕微鏡、3DプリンターなどSTEM教育につながるアイテム、ボードゲーム、GoPro、DVD、ヴァイオリンなど様々なアイテムを収蔵している。
以下のようなアイテムを収蔵している。
・家庭用ツール:ドリル、スクリュードライバー、レンチセットなど。
・キッチン用品:アイスクリームメーカー、フードプロセッサー、ブレンダー。
・アウトドア用品:テント、バックパック、望遠鏡。
・エンターテインメント:楽器(ギター、キーボード)、ボードゲーム、プロジェクター。
・健康・フィットネス:ヨガマット、フィットネスバンド。
・学習・趣味関連:ミシン、3Dペン、裁縫キット。 アイテムのリストは図書館の公式ウェブサイトで公開され、オンライン予約システムを通じて借りることが可能。
その中で、ヒルズボロ公共図書館では以下のような選考基準に則りコレクションを選定している。
1)体験学習を促すもの
2)創造性と制作をサポートし,利用者が自分でできるようにするもの
3)利用者が普段は触れられないリソースへのアクセスを提供するもの
4)新たなテクノロジーやアイデアについての認識を高めるもの
5)購入者に購入を決定する前に何かを試してみる機会を提供することで,より良い情報にもとづき判断する消費者を育成し,地元企業をサポートするもの
6)共通の興味を探り,協力することでコミュニティ内のつながりを築くもの
7)図書館で新しくて刺激的なものの偶然の発見を促進するのに役立つもの
You Tubeチャンネルを開設
この図書館の秀逸な点は、モノの図書館で貸し出すアイテムの使い方をYouTubeチャンネルを通じて公開している点も挙げられる。モノの図書館の多くは、道具の貸し出しは行うが、道具の使い方は借り主が自身で調べるという形式が多い。その中で使い方を動画で紹介していることは、利用者にとっても高い満足度につながっている要因と考えられる。
モノの図書館が、コミュニティを生み出し、地域住民とのつながりを強化している
モノの図書館があることで、図書館と住民のつながりが生まれ、借り手同士のつながりがうまれ、コミュニティが生まれるとラックス氏は述べています。使い方を一緒に学ぶことで、つながりが創出されているとのこと。モノの図書館がスキルの共有の場所にもなっている。*3
ヒルズボロ公共図書館は、サクラメント公共図書館やオークランド公共図書館、バークレー公共図書館などを訪れ、それらを参考に少しずつ拡大しているとのことである。次回以降、これらの事例も紹介していく。
*1
*3 What Are These Things Doing in the Library? How a Library of Things Can Engage and Delight a Community by Brendan Lax(Collection Development Librarian, Hillsboro Public Library)