Y2KからFrutiger Aeroへ くわしく考察してみる
ファッション用語として認識している人も多いかもしれないY2K。
でも実際はITや電化製品、(商業・公共)建築などを中心としたテクノロジー関連のスタイルとして90年代が進行する中で定着、大きな影響力をもっていったスタイルを指す言葉として定義されました。
・Y2Kファッションとは? くわしく考察してみる
ファッションに関してはこちらで書いてます。↑
2000年代に入るとY2Kとは別の、Frutiger Aeroと現在呼ばれるスタイルが観察されるようになります。
どちらも近未来感やITを軸にテクノロジー関連のビジュアルイメージを構築していますが、何がその違いを生んだのか、どうしてY2Kのままでトレンドが継続せず、Frutiger Aeroへと変容していったのか、主にその変遷、Y2KとFrutiger Aeroの異なる部分とその理由についてみていこうと思います。
Frutiger Aeroそのものの紹介は他でもちらほら既に見かけるので、後出しなこの記事ではより細かいところまでみていけたら、と。
Y2KとFrutiger Aeroの何が違うのか
実際の見た目に関しては区別がつくんだけども具体的にここがこう違う、というのが難しいな、と私自身思っていましたが、何が違いを生んでいるのか、自分なりにこれかな、と思うのが以下の動画をみて理解できました。
Y2K→近未来感×先進性・トレンド感(かっこよさ)
Frutiger Aero→近未来感×親しみやすさ
こちらの動画で触れられているヒューマニズム、というキーワードが決定的にY2Kと異なっている部分、一応Frutiger Aeroの紹介としていろんなところでもさらっと触れられてると思いますが、これが両者の違いの決定的なポイントだと思います。
どちらにもユートピア的な、理想主義的な側面はありましたが、Y2Kが机上の空論的な側面が強かったのに対し、Frutiger Aeroは実際の普及率のために大多数の人にとってわかりやすい、親しみやすくここちよいムードづくりが重視された感じがあります。
Frutiger Aeroの名前の由来であるフォントデザインも視認性を重視したものであるように、Frutiger Aeroにおいては未来的先進性よりも便利になった最新の社会、というイメージが重視されます。
Y2K←→Frutiger Aero
写真より3D←→3Dより写真(コラージュ・合成)
キャラクター的なベクターイラスト←→写真を元にしたベクターイラスト
硬質な人工的未来イメージ←→自然と共生する未来イメージ
宇宙船や他の惑星のビジュアル←→地球の未来的な姿を想像したビジュアル
vectorheart、metalheartなグラフィック←→skeumorphismなグラフィック
角丸より楕円、左右非対称←→楕円より角丸、左右対称
流線形、曲線・曲面多用←→ベベルされた多面体、直線・平面多用
Y2Kが3Dで作られたシルバーとアシッドカラーで彩られた先進的な世界観だとしたら、Frutiger Aeroはさまざまな人々を許容し、包括、共生するより社会的に温和な世界観といえます。
特にY2Kでは多用される宇宙船的なモチーフやサイバーパンク的なイメージはFrutiger Aeroではなくなっており、逆にskeumorphismと呼ばれる実物のものに似せたグラフィックデザインの意匠はY2Kではあまり見られません。
大胆さと先進性のY2K→アクセシビリティのFrutiger Aero
90年代は社会全体のITを中心としたテクノロジーに対する期待がとても大きかったこともあり、Y2Kはファッションや音楽、インテリアなどのポップカルチャーなどとも結びつき、さまざまなデザイン分野・広告宣伝業界を包括する一大概念となりました。
2000年代に入るとドットコムバブルがはじけ、IT関連産業に対する熱狂は沈静化していき、Y2Kもそれに従って影響力を徐々に失っていきました。
そこで現れたFrutiger AeroはそういったY2Kの反省点をふまえた特徴を持つに至ったのだと思います。
上記画像のような店舗デザインにおいて、特に両者のデザイン概念の変遷が観察できます。
Y2Kは流線形で曲面多用、質感はプラスティックにマット調クローム塗装。
色調は(アイシー)ブルーグレー~シルバー基調にオレンジ、グリーン、パープルなどのアシッドカラーを差し込む。照明も含め宇宙船のような無機質な演出。
Frutiger Aeroはジオメトリカルで曲面<平面、質感はガラスや鏡面反射する素材が多く、白基調にFour Colors(Funky Seasonsとも)や原色よりも自然に観察される色に近い三次色等を差し込む。
自然の写真やイラスト、柄などを取り入れ、リラックス感を演出。
→Y2Kは什器や店舗デザインそのものに強いデザイン性があり、少し暗い設定で間接照明の演出多め、使いやすさや効率よりもデザインやムード優先で、何においても転用があまり想定されていないものが多いように見受けられます。
それに対しFrutiger Aeroは基本的な空間構造や家具デザインはベーシックで箱型、その代わり付加させるタイプの装飾が多く、具象的なモチーフがよくそのまま登場(特に多いのが植物や熱帯魚、空などの自然のもの)、基本照明は明るく、室内を万遍なく照らし、さらに間接照明で店名や広告などを目立たせるなど、転用が簡単なように空間設計されていることが多いです。
平面に写真を張る、アクセントウォールをつくる、撤去が簡単な装飾で演出する、など印象を左右する要素を簡単に取り換えられる状態で効率的な店舗運用がなされている印象です。
90年代後半においても、もちろんそれ以前に比べればコンピュータやインターネットによる新時代を人々が実感できるムードの高まりがあったからこそのY2Kスタイルが生み出されたわけですが、ITにさほど興味のない一般層にまで実際に広がったのは奇しくもドットコムバブルがはじけたあと、2000年代が進行する中でのことでした。
最新トレンドとしての盛り上がりは90年代でしたが、2000年代において人々はインターネットほかデジタルコミュニケーションを活発化させ、馴染んでいき、今に至っています。
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Frutiger Aeroはそのような社会的背景のもと、最新テクノロジーを提示するのに向いた未来的なビジュアルだけY2Kから引き継ぎ、バブルがはじけたあとに見れば痛々しさも感じるY2Kの持っていた最先端アピール部分を取り除き、マイルドにして、ITに疎い一般層にもリーチするビジュアルを開発した結果といえます。
今から見ればどちらも古いデザインと思えるかもしれませんが、2000年代においては、Y2Kのもつ奇抜で特徴的なデザインは逆にかえってより前のトレンド感を如実に表す要素になり、より基本的なデザインとしては穏健なFrutiger Aeroのデザイン概念の方が当時洗練されて見えたのかな、と思います(無駄に曲面、流線形を多用しない等)。
Y2Kでは斬新さ、今まで人が見たことのないビジュアルを作ろうという意志を感じさせますがその分時代感やキッチュさ、技術の未熟さ(現時点から見れば)が強いのに対し、Frutiger Aeroはその点「地に足ついた」ビジュアルづくりが意図されているように見えます。
また、2000年代に入り、より明確に多くの人が使いやすいあり方が具体的になったことで、インターフェースなども生活に根差したデザインとしても洗練されたように思います。
90年代よりも進化したインターネットとモバイルデバイス、パーソナルコンピューターの力を発揮し、デザイン的にもグラデーションを多用したグラフィックや高解像度の写真の加工などが手軽になり、2000年代には身近な生活で触れるデザインにも取り入れられていきました。多くの人が触れるようななったデジタル機器はユーザーフレンドリーで設計されることがますます増え、Frutiger Aeroは単なる未来的なイメージ、というだけではなく、さまざまな人が便利に快適に過ごせるユートピア的な近未来像を提示しました。
Frutiger Aeroの衰退とFrutiger Aeroの現在
・Finding the Origins of Popular Frutiger Aero Images (ft. kylie)
2010年代に入ると、2000年代的な価値観を覆す社会のしらけムードと同調し、Frutiger Aeroもまたその親しみやすさのために用意された人工物でみせかけの見た目に対して、徐々にぱっとしないものと人々はみなしていきました。
代表的な例がスマートホン画面に見られたskeumorphism。初期こそskeumorphismのもつ、タッチパネル式で感覚的なスマートホンとの相性のよさがありましたが、スマートホンが普及し、特別操作に困ることもなくなれば、単にごてごてとした印象のFrutiger Aero的なデザインはそれこそスマートじゃない印象を与え、多くの企業がブランディングと合わせてUIデザインを見直し始めました。
2011年以降のフラットデザイン・ミニマリズム・メンフィスデザイン関連のリバイバルやより実用的で構築された(本物志向のプロな)デザイン、抽象的でアーティな感性を身近に落とし込んだ新潮流トレンドに飲まれ、2010年代半ば以降急速に見かける機会が減っていったように思います。
Frutiger Aeroが一種トレンドとして観察できるほどある程度具体的なイメージを有した理由が、2000年代特有の、Y2Kへのカウンター的側面と、デジタル・インターネット世界との融和と考えられるため、上記skeumorphismの例が顕著ですが、それらの必要性が薄まれば当然流行は過ぎ去っていきます。
Skeumorphism以外にもFrutiger Aeroで特徴としてあげられるものは基本的に現実世界の現象(光学的なカメラのレンズフレアを合成する等)を模しながらも、それを印象としてより強調して見せる、非常にハイファイ、ハイビジョンな印象を与え、わかりやすくするものが大半です。
それが今となっては「わざとらしさ」、垢抜けない表現に見えるようになった、ということだと思います(それだけカメラや画像加工の技術的進化があった)。
ただ一方で、社会・公共性の高い分野においては、2023年現在もまだ生き残っているように見えます。
それはY2Kが廃れたのに対して、やはりFrutiger Aeroの軸になっている親しみやすさ、というポイントがそれらの分野においては重要だからです。テクノロジー関連においては、フラットデザインとその傍流に変更した分野も多いですが、市役所のホームページや企業のCSRページ・パンフレット、教科書の表紙デザイン、病院や薬局などではまだ見ることができ、それに関して特に違和感をもつこともないのではないかと。
また、個人的には中国製品の広告、デザインにはまだこの世界観がだいぶ生き残っているように感じます。それには中国製品に対する信用が低い前提をなんとか払拭したいような思惑があるからかもしれません。
2000年代に入り急速な都市の発展がみられた中国や中東などを筆頭に今現在、そしてこれからさらに発展するであろう地域ではこの世界観がこの時代の経済・社会的進展と結びついて、Frutiger Aero的ビジュアルを想起させるのではないかな、と思います。
Frutiger Aeroはダサい?リバイバルする?
Y2Kは2010年代後半~末にかけてリバイバルし、今しばらくその影響力がどうなるかはさておき続くと思いますが、その後身にあたるFrutiger Aeroはどうでしょうか。
比較画像を探してみると、Y2Kは
ファッションや音楽、最新のデジタルデバイス、ゲームや映像、新進気鋭のスポット(建築・インテリア)関連などの若者にリーチする先端性をアピールした広告・ビジュアルが多い
それに対しFrutiger Aeroは
生活家電、車、ゲーム(一人でするものよりファミリー・友人と共に遊ぶゲームが多い)、PCで日常的に使うサービス、公共施設やショッピングモールなど日常に根差した、便利で快適な生活に欠かせないものを中心とした広告・ビジュアルが多い
斬新さを狙ったY2K時代の尖ったビジュアルは過去を振り返りみるとそれはそれでおもしろみを感じれるかもしれませんが、Frutiger Aeroはわかりやすさを狙った、逆にある意味大衆的に洗練(マイルドに)されたがゆえに、悪く言えば一般的に平板化されたスタイルともいえます。それため紹介する商品やサービスが時代的に古くなるとそれに伴いビジュアル的にも取り立てるところもない=凡庸でダサい、というふうに見えるかもしれません。
上記のようなFrutiger Aeroの中心的なビジュアルは、おそらくあまりハイセンス・おしゃれ感を感じる人はそこまで多くないと感じます。そもそも2000年代当時も含めてファッション性を強く推し進めたい意図で利用されていたわけではないと私は思うので、Y2Kのような時代を象徴するトレンドとして回帰するかというと私は若干首を縦に振れない感があります。
ただ、先述の通りFrutiger Aeroの根本である未来感×ヒューマニズムの演出の有用性がある主に公共系の分野においては今も継続しているようにまだしばらく使用されるスタイルではないかな、と思っています。
この動画でもさまざまなカテゴリーで見られるFrutiger Aeroスタイルを紹介していますが、若者を引き付けるファッション性が強いものは非常に少ないことがわかります。
そのため2000年代にみられたFrutiger Aeroの雰囲気がリバイバルするとしたら私が思うに、本当の意味で2000年代をパロディするときくらいではないかなぁ、と思っています。次の項目で話題にしますが、Frutiger Aeroそのものに強いデザインの志向があるというよりかは、全部をまろやかに包み込む性質ゆえに他の味の強いデザインスタイルと簡単に混ざるため、Frutiger Aeroをファッション的にリバイバルするとしたら純粋にFrutiger Aeroとしてのリバイバルというよりも他の2000年代スタイルとのミックス状態かなぁと思います。
上記のようなプロダクトはFrutiger Aeroではあるものの、表面上の装飾や柄まですべてFrutiger Aeroのスタイルに組み込まれているものとは言いにくいな、と感じます。ただ、Frutiger Aero自体に老若男女さまざまな人が近未来の快適で個々が充実した日常生活を送るイメージ、を内包しているので、こういったさまざまなテイストのスタイルを受容し、混ざり合っていること自体は確かに一つの特徴ではあります。
2000年代リバイバルをY2Kと称し、イメージを混ぜこぜにしている人がかなり多い現状ですが、Y2KではなくFrutiger Aeroでもない、2000年代スタイル全般(Frutiger Aeroも含まる)としては今後も継続、というよりも影響が増大すると私は思っています。
↓2000年代を代表する、2000年代をイメージしたときに一番思い浮かびやすいスタイルについてはこちらで考察?しています。
・Y2Kとよく誤解されるMcBlingとは?
ただしY2Kほどの広範な流行にはならないものの、なにかしら「目新しさ」を求め人目を惹くことを重視する一部の界隈ではFrutiger Aeroの親しみやすさ演出から導き出された自然のモチーフ(植物や海、気候)×未来感という限定的かつややこじつけ気味かもしれませんがネット上でFrutiger Aero的ファッションアイディアの提案なんかも観測できます(Pinterstなどで出てくる)。
トレンドと技術の伝播
Y2KとFrutiger Aeroの区分けが難しいという点を考える上で、トレンドや技術の伝播にはそれなりの時間がかかる、というところも見逃せないところです。
インターネット的世界観はY2Kのビジュアルイメージを構成しますが、上記でも触れたようにY2Kが効力をもった時代に実際にデジタルな世界に触れられていた人間はそこまで多くはなく、2000年代になってはじめて関りを持った人間が多いように思います。
例えば、ローポリ・素朴なクオリティの3DCGはY2K的な要素として考えられますが、それを90年代末的とみるか2000年代的とみるかは接してきた人々の年齢や社会的機会によるところが大きかったりもします。
トレンドも技術もマスに広範に広がるには時間が必要です。
はじめは高額であったり、知識が必要だったりするところを手ごろな値段でかつユーザーフレンドリーにアップデートされていく…その中で多くの人の目に触れ、それが一種のある時期を印象付けるビジュアルイメージを醸成していきます。
Y2Kが2000年代という意味で誤解される部分としてはこのような伝播のギャップによるのかもしれません。
上記のローポリの例のように、このようなズレ、Y2K(90年代末)とFrutiger Aero(2000年代)どちらも共通している未来志向の要素などから、Frutiger Aeroのリバイバルだ!と思っても実際にはY2Kの範疇に入れられることなども想定されます。
Frutiger Aeroはある種Y2Kでやりたかったことの洗練化、マス化、ジェネリック化、とも捉えられるかもしれない点でいってもY2Kと同じ流れでトレンドリバイバルを語ることは難しいかな、と思います。
ただし上記の2000年代入ってからの参考画像がコミュニケーション主体のビジュアルイメージを構築しているように、スタイルの中に斬新さよりも親しみやすさという軸が加わっているのであればそれはFrutiger Aero的といえるかもしれません。
Frutiger Aero関連スタイル、未来系スタイルの系譜
Y2Kと比較し、なぜかFrutiger Aeroには派生ジャンルという形でさまざまな2000年代のスタイルがよく紹介されています。その中でも特によくみかけるものだけ取り上げます。
さまざまな人々が自身にパーソナライズされた製品によって日常生活を鮮やかに彩る、というようなムード感の演出としてよく見られた。四色分けが多く、日本ではそれを四季に対応させた色で表現した(Funky Seasons)
・Frutiger Metro / Design Student's Orgasm
Frutiger Aeroのベクターデザインというとこれのイメージ。モチーフはペイントスパッタリングかほぼ音楽系といえ、オーディオコンポのスピーカーの意匠化なのか謎の同心円のモチーフが多用される。このスタイル自身は未来感というよりも音楽感が強く、これもまたさまざまな人が音楽を個々自由に楽しむ、といったイメージでFrutiger Aeroの快適で楽しい日常生活、の演出に寄与する。当時のベクター系ソフトの機能にデザイン学生が浮かれて作ったようなビジュアル、なのかもしれない(Design Student's Orgasm)
そのものに未来感はあまりないが(ベクターのコンピュータグラフィックス感、くらい)、Frutiger Aeroに自然モチーフによる親しみやすさと装飾性をもたらすスタイルで、よく機器や内装の表面的なデザイン性として観察される。2000年代に人気の70sリバイバルの要素もある
2000年代後半から2010年代前半にかけて、Y2Kの斬新さを避けた直線的なデザインへ反動を起こした2000年代前半からさらに推移して一見Y2Kと似たような流線形や曲線を多用、二次元的なキャラクターの登場、インパクトのあるデザインへの揺り動きがみられる。ただしその曲線は有機的で植物や動物のグロテスクさが少しだけ感じられる。現状ぴったしあてはまるスタイル名がないので暫定で参照元より使用。Superflat Popと重なることも多い。
2010年代になると上記のようなポップ感やカラフル感がなくなり、純粋に動植物の有機的なフォルム×未来感(新素材、テック感)が強まります。
Four ColorsとFrutiger Metroはヒューマニズム的な側面を押し出す強いデザイン性として、VectorbloomとFrozen Yogurt Futurism(仮)は植物を中心に自然を感じさせて親しみやすさと装飾性を付加するデザインとしてよくFrutiger Aeroと一緒に観察できます。
Frutiger Metroについては他に良い名称が発明されていないので暫定的に使用していますが、Frutiger Aeroの傘下というよりは独立したグラフィックスタイルという認識です。※CARIのほうでもFrutiger Metroという名称はあまり適切ではないとされていますが現状まだいい名前が決まっていないそう。
Y2Kが関連するスタイルを含ませていないのであればFrutiger Aeroこそ包括するスタイル、という感じはしていません。Frutiger Aeroのうち未来感×親しみやすさの親しみやすさだけを強調するスタイルが多く、それそのものに未来感が含まっているとは思わないからです。
他のものは以下で紹介されています。
・Frutiger Aero / Aesthetics Wiki
未来系スタイルの系譜とリバイバル
2010年代は80年代リバイバルが底流としてあり、さらに上の層により先端のトレンドとして90年代リバイバルがあり、徐々に前後しつつも80年代から90年代へとムード感がシフトしていきました。この図のCassette Futurism→Hexatronや日本でいうところのバブル期(80年代末~90年代初め)のムードを皮肉に再興したVaporwaveムーブメントなど…
流行は20年サイクルとも言われますが、それは一部のトレンドの先端を行きたい人々だけを見た場合であって、一般的に浸透するまでをみると30年サイクルかな、と私は思っています。
Y2Kは90年代後半から強く観察されたデザインムーブメントなので2010年代末にトレンドに敏感な層においてリバイバルするのもサイクル通りといえます。
今は情報が錯綜しやすいので、Y2Kという言葉もある程度知られるところになり、Y2Kはもう流行過ぎた、という人もいるようですが、2020年代は2010年代と同じように90年代のムードが底流としてある上に2000年代的なものが上に薄く乗っかるような形でリバイバル、変遷していくと思っています。
CARI(Consumer Aesthetics Research Institute)ほかネット上の研究者たちの力によって以前であれば直近過ぎて振り替えられなかったトレンド変遷も観察されるようになった関係でネクストY2K的に消費されることを期待されているFrutiger Aeroほか2000年代リバイバルですが、私は少なくとも2020年代中に浸透しきることはないかな、と思っています。
2000年代的なわかりやすいMcBling感性や折り畳み携帯電話、デジカメがトレンド回帰、なども言われていますが、ちょうど2010年代前半の90年代リバイバルが表面的なグランジ~ストリートリバイバルに終始したように今話題にされている2000年代リバイバル(Y2Kと間違ってラベリングされてすらいる)も2000年代のアイコニックな事物をパロディ、コスプレ感覚で楽しんでるような感じかな、と。
Frutiger Aeroは2000年代のテック系デザインの主流となったスタイルでしたが、2000年代後半から2010年代にかけてはどのようなスタイルがファッショナブルで先端性を感じさせるものとして受容されていたのかについても今後いろいろ調べていく中で記事にしていけたらなぁと考えています。
半年以上前に書き始めそのまま放置し、やっといったんとりあえず書き終えられました…
最後の分布年表はもっと付け加えて詳しくして別記事に分けて投稿しなおすかもしれません。
ヘッダ画像:それぞれの時代を代表するようなプロダクトデザイン
CARI | Consumer Aesthetics Research Instituteより