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造りたい酒|福島・会津

「修業先から蔵に戻ってすぐに父が急逝してしまいまして……長年の赤字続きを目の当たりにし、廃業も考えました」
そう言って、彼はふっと息をついた。

そんな時、母と息子が奮闘する、この会津の小さな蔵がテレビで紹介された。
それを見た酒販店が、応援するからうまい酒を造れと連絡をくれたのだ。
「何度も試行錯誤して、これだと思った酒を送ったところ、売ってみましょうと」
それが大ブレイクし、入手困難な酒として知られるようになった。

どんなお酒を目指していますか、との問いに、彼は少し考えて答えた。
「例えば、彼女の両親に結婚の許しを請う時に持っていく酒。この酒を持ってくるやつなら大丈夫だ、と思われるような酒。その後も正月や、結婚記念日や子供が生まれた時、そんな人生の節目に寄り添う酒」
色節の酒ですね、との私の言葉に、
「色節……そうですね。色節の酒でありたいです」
彼はきっぱりと言って、深く頷いた。

「色節」(いろふし)・・・晴れがましい行事。

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