樹嶋穣多郎
作戦で重症を負ったマリオンが受けた手術によって、事態は変転して行く。SF
カオス56人の候補 今回の都知事選は、一週間がたっても未だに騒動が尾を引いているので、少し思う所を書きます。 まず、56人という最多の候補者がいたこと、ポスター掲示板の騒動、N党のポスタージャック。 今までの都知事選で異様だったと思います。あり得ないことばかり続いている、という状況でした。 政見放送でも、だしぬけに脱いだりした人もいましたね。しかもその人が政見放送の動画再生で一番だった、という。オチまでついて。 なんなんでしょうね。首都の首長を決める大事な政治局面なんですが
ストーリー 江戸に住む自称『無頼の徒』眠狂四郎は伊賀者の集団に襲われる。これを退治した狂四郎に、今度は千佐という女性が訊ねてくる。千佐は「自分の命を助けてほしい」と頼み、狂四郎は快諾する。千佐の命を狙っているのは、憲法の達人である陳孫、という男だが、その陳孫によれば、千佐は加賀宰相の患者であるという事実を伝える。狂四郎は、銭屋五兵衛と加賀宰相前田斉泰の間での政治的暗闘、そして暹羅国の青い仏像の中にある「密貿易許可状」を巡る争いに巻き込まれる。 監督:田中徳三 キャスト眠狂四
本編あとがき 今回は趣向を変えて疑似SFを書いてみました。 もう少し、というかかなり手入れが必要だと思いますが、この時点での私の実力です。 テーマ、といえるテーマはないのですが、上げるとすれば「AIの作用副作用」という感じでしょうか。 実際、人間の脳に電極を加えて制御する方法で、てんかんを治療する、という話を聞いたことがあったので、元ネタはそれです。後は、本編の中にあった事故の衝撃で脳にダメージを受けた人間が性格が変わったのと、この二つですね。 未来にはこういうことが起き
「では、気を付けて」 「私」はそういい、カオリはマリオンを抱きしめると、 「今度は、家でお話ししましょう」 とだけいって、離れた。 ジャンボジェット機が空を割らんばかりに飛び立っていく。カオリはそれを見送ると、空港を後にしようとした。「私」もそれに続いた時、パットからの電話が鳴った。 「ベイカー・アンセムが、自宅で拳銃自殺をしたそうだ。遺書も残っている。内容はまだわからんが、おいおい明らかになるだろう。それと、ヤコブ・グラハムとアイラ・マイアの処分が決まった。ヤコブは無
よかったのに」 動画サイトに上げていることを念頭に置いているのか、パットの声はどこか残念がっているように聞こえる。 パットによれば、あれから未だに動画再生回数は止まることなく上昇し続け、コメント欄も数分に一度は新規に書かれているらしい。そのほとんどが軍や国に対する怨嗟であったり、批判であったりして、最早国も無視できない状況になっている。中にはテロを擁護する意見まで出始めていたり、あるいは映っていたヤコブ・グラハムをの殺害を予告するものまで出ている次第である、という。 「ま
事件の裁判を傍聴するためである。 フィリップ氏は、黄色の囚人服を身に着けていたが、それが正規の軍服と思わせるほど堂に入ったもので、背筋も、脇の警備官が貧相に見えるほど張っている。 フィリップ氏の罪名は、国家騒乱罪及び軍属病院の不法占拠の罪である。検察官の尋問に、フィリップ氏は、 「間違いありません」 と、簡潔に答えた。続けて検察官が、動機を尋ねた。 フィリップ氏は、塑像のように鎮座している判事を睥睨しながら決してそらさず、 「AIに傾いていく国や軍の体制に一石を投じる
「私だってそうよ。母と日本に居た時は、母がしてくれてたからね、でも、こちらに来てからはずっと一人だったから、自然と自炊するよ」 「私も一人暮らし、してみようかしら」 「お勧めするわ」 「それで、これからどうするの」 「まあ、互助会からの年金もあるし、暫くはゆっくりするわ。……、大佐は、どうされているのかしら」 「父は、自宅で謹慎しています。恐らく処分が遠からず出るでしょうから、それまでは」 「……、大変ね」 「どのような処分になろうとも覚悟しています。それだけのことを、父はや
ベイカーの、初めての父親らしい表情を見ることができた。それは、無力な自分への悔しさだったのか、あまりに弱弱しいものであった。 手術室に直行した「私」はすぐに術着に着替え、当直の医師たちも準備を整えていた。マリオン・Kは手術台に乗せられている。 「これから、マリオン・Kの緊急手術を行います」 術野をメスで広げ、コッヘル鉗子で術野を確保した。右鎖骨下静脈を貫通している。右鎖骨下静脈は、右心房に直結している上大静脈の側で、これ以上傷をつけてしまえば、輸血が追い付かなくなって失
「いや、あの男は、治安警察官の男だ」 「治安警察官だと」 カシムの声色が極端に上がった。意外だったのだろう。テロを取り締まる側の人間が、テロを起こしていたのだから、驚きは当然、というべきであろう。 「何故、治安警察の男がそのような馬鹿なマネをしたんだ」 「さあ。分からない。それはおいおい裁判で明らかになるだろう」 「まあ、それよりも俺がバイオAIの人格だったと聞かされた時は驚いたよ。まあ、他の人間たちとはちょっと違う気がしていたのは薄々と分かっていたが、まさかAIで作られた
縄を、鉈で断ち切るようにしていった。 「そろそろいいですか、御両人」 「君は?」 「パット・モリといいます。ヤコブ博士、あなたが仰ったことは全て記録していますが、よろしいですね」 「記録をするのは自由だが、この国のメディアはそのような記事を出すことはない。残念だがね」 「ああ、其れにはお気遣いなく。これね、マイクとスパイカメラを仕込んでいるんですよ。さらに」 と、ヤコブのPCからウェブサイトにつなぎ、動画投稿サイトにアクセスすると、PCの画面に、この部屋が映っていた。 「
人工物で代替ができる。例えば、人工関節や人工心臓などがそうだ。無論、まだ代替ができない『部品』はある。だが、科学技術がさらに進めば、いずれ人体のすべての組織が人工物に置き換えることも可能になるだろう」 「その一環で、AIを脳に仕込んだわけですか」 「そうだ。マリオンの場合は君たちのような人工物のチップではなく、バイオAIを使う事でさらに技術を飛躍させ、これをすべての国民に仕込めば、生産性はさらに上がる。すべては君が私と一緒になって作った論文が始まりなのだよ」 ヤコブは、まる
非常階段を出た刹那、銃口が向けられた。 「誰だ、お前ら」 パットはこびへつらうような笑みを浮かべて、 「いや、実はちょっと風邪をひいてしまって。……」 嘘をつくな、と撃鉄が上がった時、 ―― 待て。 という声がかかった。聞き覚えのある、しゃがれた老人の声だった。 「あなたでしたか、テロの、いや、反政府組織の首謀者は」 フィリップ・モリス元陸軍中佐、とつぶやいた。 「そうだよ。カシムの息子」 「なぜ、このような事を」 「それは、前に言ったはずだよ。それより、なぜここに
「だったら、三人で部屋を出た方がいい。女医さんは、外に出られたらすぐにどこでもいい、連絡を取ってほしい」 「わかった」 我々三人は、ひとまず下を目指した。とにかく足音を立てないように非常階段をめざした。その間にだれも出会わなかったことに不審をぬぐえなかったが、非常階段に到着してからは一直線に一階まで下りた。 「ちょっと待ってろ」 パットが非常ドアを慎重にあけて様子を見るや、すぐにドアを閉めた。 「駄目だ、入り口が占拠されている。恐らく、テロ集団だろう。見たところじゃ、到着
れほどの大きな転換となる治療ができれば、劇的に彼女の症状は改善するかもしれない、そう思った大佐は、一縷の望みを託したのよ、AIにね」 パットは電子煙草を取り出して、大きく吸い込んだ。何ともやりきれないような、名状しがたい表情で浮かべていた。 「まさに藁をもすがる思いだったってわけか。……、なんともやりきれませんなぁ」 電子煙草の煙が天井にぶつかる。 「彼女が何度か手術を受けたというのは、AIチップの更新の為ってわけか」 「ええ、そしてもう一人、同じこと手術を受けた人がもう
た」 「それが、反政府組織の掃討作戦で重傷を負ったマリオン・K少尉だったわけか」」 マリオンが重傷者として運ばれたあの時、止血をしながら損傷した部位を手術しているさなかに、それまで手出しをしなかったヤコブ・グラハムが、 ―― これを、彼女の脳につけてくれ。 といって、或るものを出してきた、という。 それは、シャーレの中にあった、バイオAIセルだった。アイラ女医は、はじめそれを断ったのだという。だが、ヤコブ・グラハムは 「私と君はすでに共犯なんだよ」 とだけいい、促し
あった。そして軍人は、育てるのに時間がかかるのに、失うのは一瞬である。 この事態を重くみた当時の中央体制は、すぐさま出来うる限りの人的コストの削減と軍事力の維持という、二つの困難な課題を軍に突き付けたのである。 それが、「私」の父であるカシム・バーンが構想を練っていた「軍の無人化」つまり、兵器のAI化である。 だが、それは父が遺したノートやメモによって明らかになっているように、相当の困難さを伴ったものであり、技術的限界もあって、カシム・バーンが軍の研究者であった頃には実