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映画『母性』

秋が深まり、師走の気配が近づく昨日
カーキのブルゾンに袖を通して繁華街を歩く。
目的は一つ。

CMを見た時から気になっていた映画
『母性』をみる為だ。

忙しいオーケストラの音楽と共に
印象的なシーンが次々巡る
CMだけで充分なインパクト。

原作を読んでいない為、CMの印象では
さぞ情念渦巻く女の愛憎劇が見れるのだろうと
わくわくして挑んだ。

結果、想像とは異なりました。

母と娘、それぞれの視点から描かれた物語を
しっとり、そしてじっとりと覗いていきます。
なぜ女は子供を産み、育てるのか。
母性とはなにか。

考えさせられる物語でした。

子供を産めば、自然と湧いてくると
漠然と考えられていそうな『母性』。
私自身もそうでした。

ただ、そうではない女もいる。と
どこか満たされない顔をしたルミ子が問う。

戸田恵梨香さん演じるルミ子に
ずっと密かに薫る狂気が素敵でした。
そしてその狂気を狂気と自覚しないまま
溢れさせるシーンも。
彼女にとって、それは確かに愛であったと
思えてなりません。

そしてルミ子の娘・清佳の若く猛々しい正義。
愛を求めながらも、必死で真っ直ぐに伸びようとする姿は
どこか痛々しく、応援したくもなりました。

本作では母と娘が二世代にわたって描かれます。
ルミ子の母と、娘のルミ子。
母のルミ子と、娘の清佳。

全員が違う『母の像』を描いていて
ぼんやりと思い描いている母性という感情に
奥行きを感じることができました。

そして忘れてはならないのが
高畑淳子さんの演じるルミ子の義母。

ルミ子に対して高圧的な嫌な義母ですが
愛娘への愛は人一倍深い。
もう一つの母の愛の形だと感じました。
このルミ子の義母が生々しいだけに、
どこか浮ついた印象のある物語に現実味を感じられたような気がします。個人的には大好きです。

またルミ子の旦那の物語も世相を絡めており
時代背景を説明くさくなく表しているのが印象的でした。

見終わった後は、不思議な余韻が残ります。
喜びとも、感動とも、絶望ともちがう。

残されたわずかな疑問と、多角化された『母性』。

是非、この感覚を沢山の方に味わってほしいとおもう作品でした。


#映画感想文
#映画母性


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