ルノー・ドーフィン
いわゆる「大衆車」と「高級車」は、使う側の地域のその時々の時世によって決まるものではないかと思う。
BMC時代の「旧ミニ」だって、日本では結構高級だった記憶が私にはある。
ルノーというと、フランスで大衆車を多数生み出してきたメーカーで、ルノー4CVは日野でも1963年まで生産され、日本でもVWタイプ1、モーリス・マイナーと並んで、昔の写真ではよく見かけるクルマである。ルノー4CVのタクシーの写真もある。
ルノー4CVの後継だったのがルノー・ドーフィン、ルノー・ドルフィンと呼ぶ人もいる。1956年から1968年生産との事。リアエンジンは引き継がれたが、3ボックスセダンだった。
日本では、知っている人はいても、そこまで多く見かけたクルマではなかったようだ。
しかし、フランスからアメリカに輸出された他、スペイン、イタリア、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリア等で生産されたという。
アジア、アフリカの旧フランス植民地(モロッコ、アルジェリア、ベトナム等)でもよく見られ、ベトナムでは1990年代にも戦火を逃れたものがタクシーとして存在していたようである。
このクルマもまた、VWタイプ1の影に隠れがちだが、世界中で見かける事のできたクルマだったのだ。
大衆車には高性能バージョンが存在する事が多いが、ルノー・ドーフィンには「ゴルディーニ」がある。F-1やル・マン24時間耐久レースに出場していたチューニングメーカーのゴルディーニが手がけたものである。
この辺り、F-1マシンも手掛けていたジョン・クーパーがチューニングした「ミニ・クーパー」とも通じるものがある。
余談ながらこの「ミニ・クーパー」は人気が高く、それゆえ旧ミニを全て「ミニ・クーパー」と呼ぶ人が多数いるほどであるが、ルノー・ドーフィンの後継ルノー8(こちらにも「ゴルディーニ」仕様がある)を全て「ルノー8ゴルディーニ」と呼ぶ人も結構存在する。
ミニ・クーパーのモンテカルロラリー優勝は有名で、タミヤがプラモデルにしている程だが、ルノー・ドーフィン・ゴルディーニもそれ以前にモンテカルロラリーで優勝しているのだ。
また、関係ない事だが、ルノー・ドーフィンは、パナールディナZ、サーブ92、オースチンヒーレースプライトマーク1等と並び、一時期話題になった絶滅種の魚であるサカバンバスピスに似ている印象もある。