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Stammering Therapy from the Inside: New Perspectives on Working with Young People and Adults (内側からの吃音治療: 吃音のある若者や大人と接する際の新しい視点)を読んでみよう!

こんにちは。
ものくろです。

本記事では、Carolyn, C., Rachel, E., & Sam, S.(Eds) (2013). Stammering Therapy from the Inside New Perspectives on Working with Young People and Adults. J&R Press.を紹介していきます。

Stammering Therapy from the Inside

Stammering Therapy from the Inside(STI)は、Stammering Pride and Prejudice(SPP)と同様に、残念ながら2022年現在ではまだ日本語に翻訳されていません。しかしながら、本書を日本で紹介することで誰かの役に立てるかもしれないと信じて本記事に取り組んでみようと思います。

吃音の世界情勢に触れておきますと、米国、豪州では直接法(話し方の訓練を行う)が主流である一方で、欧州では間接法(話し方の訓練はせず、心理療法を行う)が主流であるように感じています(詳しいことは分かりませんが、肌感覚でそう感じています。)。日本でも間接法が主流なのですが(なんでだろう?「あるがまま」を重要視する精神性?)、本書も英国で出版されているだけあり、間接法が中心的に紹介されています。その意味で、日本との相性は良いように思います。また、日本で「間接法」と言えば、ある程度選択肢は絞られてしまうのですが、本書では「間接法」としての新たな選択肢を提示してくれています(2013年出版の本ですので、「最新」の治療法とまでは呼べませんが比較的新しい治療法であると思います)。

また、以前SPPを紹介させていただいたときは触れなかったのですが、社会モデルは吃音治療に反対している訳ではありません。SPPに登場した吃音当事者の方々は、社会モデルにおける吃音の主張をしていましたが、実はCity Litというロンドンで受けられる成人向け教育機関で広義の吃音治療を受けたことが大きく変わったキッカケになったと話しておりました。
ここが日本と大きく異なる点だと思うのですが、現状日本では吃音を診ることができる専門家の数が著しく少ないはご周知の通りです(もちろん、一部の限られた先生方が一生懸命頑張っていることは重々承知の上です。そのせいで、デキる先生だけに過剰な負担が行ってしまっている側面もあると思いますが)。その結果、吃音当事者一人あたりにかけられるリソースにも限りがあり、かつ対応できる吃音当事者の数にも限度が出てきてしまいます(特に成人吃音は、幼児吃音よりも酷い印象です)。
だからという訳ではないかもしれませんが、専門家に相談に行ってみたところセルフヘルプグループを進められただけで診察が終了したという方もそこそこにおられると思います。しかし、セルフヘルプグループにはセルフヘルプグループにしかできないことがあり、吃音治療もセルフヘルプグループに求めるのはお門違いなのではないかと思います。
話が逸れてしまいましたが、何を言いたいのかと言いますと、安易に「吃音受容」という言葉が飛び交っていますが、「吃音受容」とはそうそう簡単にできることではなく、そして1人で出来ることでもないと思うのです。少なくとも、City Litでは吃音当事者が専門家による手厚いサポートを受けることで、少しずつ吃音を受け入れられるようになったのであり、それを簡単に個人に求めるのは間違えなのではないかということです。

以前紹介させていただいたSPPについては、Kindle版が出版されている(機械翻訳をかけて読むこともできたため、比較的記事を書きやすかったです)、281ページというページ数はそこそこありつつもエッセイとして読みやすい分量だったこともあり、読了してからnoteでの記事を書くことができていました。
一方で、本書STIは、ペーパーバック版のみ出版されています(自炊すれば電子書籍化することができ、色々と便利になるのですが自炊が手間です)。SPPと違い専門的な内容であり、459ページというなかなかの分厚さのため、未だに読了できていません。そのため、記事を書きながら本読みを進めていくという形になります。
そこで実験的になりますが、読者のみなさんがキニナル章だけをかいつまんで紹介してみたいと思います(リクエストについては、リプライでもDMでもコメントでも構いません)。

本書の内容は、以下の通りです。

  1. Self-advocacy for people who stammer(吃音のある人のためのセルフ・アドボカシー)
    St John Harris (セント・ジョン・ハリス)

  2. 1:1 therapy revisited(1対1治療の再訪)
    Jan Logan, Sam Simpson, Dan Durling and Ed Balls (ジャン・ローガン、ダン・ダーリン、エド・ボールズ)

  3. New stories of stammering: A narrative approach(吃音の新たな物語:ナラティブ・アプローチ)
    Jan Logan (ジャン・ローガン)

  4. Interiorized (covert) stammering - The therapy journey(内面化した(隠れ)吃音ー吃音治療の旅路)
    Carolyn Cheasman and Rachel Everard (キャロリン・チースマン、レイチェル・エヴァード)

  5. Stammering therapy: An integrated approach(吃音治療:統合的アプローチ)
    Rachel Everard (レイチェル・エヴァード)

  6. The teens challenge: Stammering therapy, learning and adventure(10代の挑戦:吃音治療、学び、そして冒険)
    Claire McNeil (クレア・マクニール)

  7. A mindful approach to stammering(吃音へのマインドフルアプローチ)
    Carolyn Cheasman (キャロリン・チースマン)

  8. Embrace your demons and follow your heart: An Acceptance and Commitment Therapy approach to work with people who stammer(自分の悪魔を受け入れ、自分の心に従う:吃音のある人へのアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT))
    Carolyn Cheasman and Rachel Everard (キャロリン・チースマン、レイチェル・エヴァード)

  9. Therapy within a CBT framework: A reflective conversation(CBTフレームワーク内での吃音治療:振り返りの会話)
    Jane Fry (ジェーン・フライ)

  10. Stammering, imagework and self-esteem(吃音、イメージワーク、そして自尊心)
    Debs Plummer (デブス・プラマー)

  11. Feelings and stammering - Finding a way forward(感情と吃音 - 前進する方法を見つけること)
    Peter Cartwright (ピーター・カートライト)

  12. Revealing resources: Using Neuro-Linguistic Programming with people who stammer(リソースを明らかにする:吃音のある人への神経言語プログラミング(NLP)の使用)
    Debbie Mason (デビー・メイソン)

どの章も非常に気になりますが、ゆっくりと紹介できたらいいなと思います。

ちなみに、著者の1人のSam SimpsonはIntroductionでLois Keithの『Mustn't Grumble: An Anthology of Writing by Disabled Women(不平を言ってはいけない。障害のある女性による著作アンソロジー)』、『What Happened to You?: Writing by Disabled Women(何が起こったのか?障害のある女性による執筆)』という作品を紹介しています。残念ながら日本語には翻訳されていないみたいですが、Samはこの本を読んでSTになろうと決心したらしいです。読んでみたいですね。

What happened to you?

今回はここまでとなります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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それではまた~👋
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