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短編小説『サイコパスポジティブさくら』

まえがき

「サイコパスポジティブさくら」という物語は、一見すると明るく、前向きな人物が周囲の人々に良い影響を与えているように見えるのに、実はその内面に隠された複雑で冷徹な意図が絡み合うというテーマを描いています。

さくらは、誰からも好かれる人物であり、ポジティブなエネルギーを放ちながら周囲の人々を笑顔にしています。しかし、その裏には、感情を操作し、周囲を巧みにコントロールする冷徹なサイコパス的な側面が隠れています。彼女は、自分の目的のために他人を動かすことに快感を覚え、次第にその力を増していきます。

この物語を通じて、ポジティブなイメージを持ちながらも他人を支配することの危険性、そして人間関係の裏に潜む心理の力を探求しています。感情や思惑を巧妙に操るさくらの姿を見守りながら、私たちがどのように他人を理解し、関わっていくべきかを考えるきっかけにしていただけたら幸いです。

この物語が、あなたにとって少しでも興味深いものとなることを願っております。




さくらはいつも笑顔だった。誰もが彼女のことを「元気でポジティブな女の子」と思っていた。彼女の周りにはいつも明るい雰囲気が漂い、どんなに忙しい日でも、彼女は周囲に元気を分け与えながら、その場を盛り上げていた。

だが、さくらの笑顔の裏には、誰も知らない深い闇が隠れていた。それは、彼女がサイコパスだからだ。


さくらが初めて「サイコパス」と呼ばれたのは、高校のクラスメートとの会話の中だった。ある日、友達がふと口にした言葉が耳に残った。

「さくら、なんかちょっと怖くない?」

その言葉に反応したさくらは、にっこりと笑顔を作りながら答えた。「怖いって、どういうこと?」

友達は少し戸惑いながら続けた。「なんか、すごく冷静で、感情が見えない感じがするんだ。あなたって、ちょっと普通の人と違うんじゃない?」

さくらはその言葉を聞いて、心の中でクスクスと笑った。彼女は感情を持たないわけではなかったが、それを他人に見せるのは非常に面倒だと思っていた。誰もが彼女の笑顔を見て、楽しい、元気な性格だと思い込んでいた。それを利用して、彼女は人々を巧みに操ることができた


彼女のポジティブさは、時に周囲の人々を完全に支配する力を持っていた。人々が落ち込んでいるとき、さくらは自然と彼らのそばに現れ、「大丈夫だよ!あなたならできる!」と言って励ます。それがどうしてか、誰もがさくらの言葉に心を動かされるのだった。

だが、その裏側には、彼女が相手の心を読み、弱点を見抜いていたという事実があった。さくらが誰かに励ましの言葉をかけるとき、心の中では相手の「弱い部分」を探り、それを利用する術を考えている。彼女は人々の感情を操るゲームを楽しんでいた。


ある日、さくらのクラスメート、翔太が悩んでいるのを見つけた。翔太はいつもは元気で、さくらのこともよく褒めてくれていたが、その日は目を伏せて机に突っ伏していた。

「どうしたの、翔太?」さくらはにっこり笑って声をかける。

翔太は顔を上げ、少し驚いた表情を浮かべながらも、「実は最近、家のことで悩んでるんだ…」と話し始めた。

さくらはその話を静かに聞きながら、心の中で計算を始める。翔太が言うには、家計が厳しく、家庭内での喧嘩も絶えなかった。その事が、彼に強いプレッシャーを与えていたのだ。

さくらはしばらく考え、そして微笑んだ。「翔太、大丈夫だよ。きっとすぐに解決するよ。今は辛いかもしれないけど、君の強さを信じてる。」

翔太はさくらの言葉に少し安堵し、深く頷いた。しかし、さくらは内心でほくそ笑んでいた。翔太の悩みを聞くことで、彼の不安を完全に掌握し、彼がこれから何をしたいのかを予測できるようになったからだ。


さくらが持つポジティブなエネルギーは、周囲の人々を引き寄せ、彼女の影響力を強める道具となっていた。彼女は常に周りの人々にとって必要不可欠な存在であることを意識し、誰もが彼女を求め、頼るようになった。だが、さくらが本当に求めているのは、他人を支配する力を手に入れることだった。

ある日、さくらはその力を試すことに決めた。最も強い影響力を持つ人物を試すチャンスが訪れたからだ。それは、クラスの人気者である優香だった。優香は、さくらと比べてもっと素直で感情豊かな人物だった。だが、さくらはその素直さを逆手に取ることができると感じていた。


その日、さくらは優香を誘ってランチを一緒に食べることになった。笑顔で優香に話しかけるさくらに、優香は自然と笑顔を返した。

「優香、最近ちょっと元気ないよね。何かあったの?」

優香は少し驚いた顔をしてから、ため息をつき、少し話し始めた。「実は、最近ちょっと恋愛がうまくいかなくて…。彼との関係がちょっと冷めてきちゃって…」

さくらはその言葉を聞いて、微笑んだ。「それってすごく大変だよね。でも、君なら大丈夫だよ。彼には何か問題があるんじゃないかな?君のことを理解できていないだけだと思う。」

優香は少し迷いながらも、さくらの言葉を聞いて心が軽くなるような気がした。しかし、さくらの心の中では、すでに優香の悩みを操る方法を考えていた。


さくらは、ポジティブな言葉と笑顔を武器に、周囲の人々を次々と支配していった。しかし、その背後にあったのは、人の心を見抜き、操る冷徹な戦略だった。彼女にとって、世界はまるで自分が自由に操れる舞台のようだった。

そして、サイコパスポジティブさくらは、今日もまた誰かの心を引き寄せ、笑顔で次のターゲットを待っているのであった。


−完−


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