#27 トニー・ベネット「エヴァンス先生教えてください」
#トニー・ベネット はえらいなと思うのである。
十分お金も名誉も手にしたはずなのに、 #ビル・エヴァンス との共演を希望し、新しい何かを得ようとしているのだから。
エヴァンスはジャズ界ではめっちゃスターだが、売り上げや世間的な人気の点では、ベネットとは比べ物にならないだろう。二桁違うのではないか。
製作者側も、お金のにおいを嗅ぎつけてくるだろう。派手にコマーシャルを打って、ヒット曲を入れて、なんかシンセも無許可でかぶせちゃって、かかった制作費の何十倍ものお金を得ようとしてくるだろう。
しかし、ベネットはそんなことはしなかった。エヴァンスの巣であるファンタジーの方に自ら乗り込んでいったし、曲もエヴァンス寄りのものばかり。もちろん「『思い出のサンフランシスコ』やりませんか」とか、言わない。表ジャケットもすごく真剣だが、裏ジャケットもさらに真剣なベネットの姿が映っている。
歌を聞いても、いつものベネットの能天気さはなく、「エヴァンス先生、教えて下さい」「これでいいですか、先生」といった、謙虚で真剣な歌唱。主従関係が明確で(もちろん、エヴァンスが上、ベネットが下)、そういった姿勢をーーーある意味スター歌手にとっては、イメージダウンにもつながりかねないーーーとれたことに、全くもって驚いてしまう。
#フランク・シナトラ はこんな事は絶対しないだろう。
それくらい、ベネットはビル・エヴァンスと共演したかったのだ。
この共演はうまくゆき、続編も作られた。そっちも名演だが、やっぱり最初の共演の方が好きだ。
ちなみに、このアルバムは、僕のMP3プレイヤー(死語に近いかな)に必ず入っている一枚である。
続編
二つを組み合わせた完全版