9歳のボクが考えた不思議な話【おらぁ天下のとんち者】
1話目「タオル」
あるところに、本当に怠け者の長者さんがいた。
みんなは前から、この長者さんを働き者にしたいと思っていた。
そこで、とんちの彦九さん。
長者さんの所に行って、「召使にしてくれ」と頼み込んだ。
長者さんは「いいだろう」と、彦九さんを召使にした。
それから風呂に入るまでは、順調にいった。
ところが、長者さんが風呂から上がる時に、「タオル持ってこい」と言った。
すると、彦九さんは何を思ったか、紙に「た」という字を書いて、それを折った。
そして、それを長者さんの所に持って行った。
「どうぞ。 タオルを持ってまいりました」
「ありがと・・・ってこれはタオルじゃないぞ!」
「はい! 仰せの通り、『た、折る』を持ってまいりました」
これには長者さんもビックラこいて「うむむむむ」と言った。
「なるへそ。 た、という文字を折って『た、折る』タオルか・・・」
「あの・・・」
「なんだ?!」
「一つお願いがあるんですけど」
「よい。 叶えてやろう」
「これからは怠け者を卒業して、働き者になってください」
「分かった。 これからは怠け者を卒業する」
その日を境に、長者さんは町一番の働き者になったとさ。
あっぱれ!
彦九ー。
2話目「マスカット」
彦九さんの評判は、とうとう殿様の耳にまでとどいた。
「ほほう。
そんなにとんちがきくならちょっくら試してみよう」
そんなこんなで彦九さんは、殿様のお屋敷にやって来た。
「よく来てくれたな」
「あいあい」
「ところで彦九、マスカットを持ってきてはくれんか」
「はぁ、マスカットとは何でしょうな」
この時は、マスカットという物自体がないから、首をかしげる彦九さん。
「それを考えるのがお前の仕事じゃろうが!
どあほ!!」
そう言われてはしょうがないと、彦九さんは「明日までに持ってきます」と言って家に帰った。
「マスカット、マスカット、マスカット?」
考えていると、「いらっしゃーい、新鮮で美味しいピチピチの鱒だよー」という声がした。
「そうだ、それだ!」
彦九さん、なにを思ったかその鱒を買って、それを真っ二つに切った。
それを殿様の所に持って行き、「マスカットです」と言ったからたまらない。
「なに?!
これがマスカットか?!
おのれ!!
わしをからかいおって!
首が危ないぞー!」
「まぁ、落ち着いて。
わたしは鱒をカットしたんだから、これは正真正銘の鱒カットですよ」
殿様は「うむむむむ。こいつぁ本物のとんち者だ」と言って、さっきの怒り顔はどこへやら、すっかりご機嫌になって、彦九さんに小判を持たせて家に帰したとさ。
「おらぁ、天下のとんち者!」
町には、鼻高々に歩く彦九さんの姿があった。