9歳のボクが考えた不思議な話【ヌケヒコの放浪旅】
1話目「エンジンかけて」
ヌケヒコたちが車をぶっ放していると、信号が赤になった。
ヌケヒコがそのまま前の車に突っ込みそうになったから、助手席のアセヒコが慌てて足を伸ばしてブレーキを踏んだ。
ゴロゴロゴロゴロキーーー
ヌケヒコの車はギリッギリぶつからなかった。
「ヌケヒコ何やってんの!?
信号見てた?」
「ああ、ごめん。 前だけ見てた」
「もう、死ぬかと思ったよ」
そんなこんなで信号が青になった。
が、車は動かぬ。
横のヌケヒコを見てみると、今度は信号を見たまま動かない。
「ヌケヒコ、車をだしてくれ」
「へ? ああ、はいはい。」
ヌケヒコは何を思ったか、鍵を抜く。
「ちょっちょちょ、なんで鍵を抜くんだ? 早くエンジンをかけるんだ!」
「ブルルルルル」
ヌケヒコはなぜか、エンジンの音をマネするだけだった。
「あ、こりゃぁダメだ」
アセヒコは呆れ果てて、途方に暮れた。
2話目「逃げろ!」
ヌケヒコたちが森を歩いていると、クマに遭遇してしまった。
「クマだー! 逃げろ!」
「どこに?」
「クマは前から来てるんだぞ!!」
「じゃあ、前に逃げよう」
「ちがう! 後ろだよ」
「分かった。
でも、いつ逃げるんだ?
それに、誰が逃げるの?
誰から逃げるんだ?」
「ヌケヒコ。 あんたはナーニ言っていんの?
ヌケヒコが今、クマから逃げるの!」
「ああ、そうか。 ほんじゃ、さっそく逃げよう!」
ヌケヒコはやっと自分が危ない状況にいることに気づいたらしく、破竹の勢いで逃げ出した。
だが、さすがはヌケヒコ。
クマは自分に背中を見せた者に襲いかかるということを忘れて、ヌケヒコはクマに背中を向けて猛ダッシュ。
すると、クマはもちろん襲ってくる。
「わーー、クマが追いかけてくるー」
一人クマに追いかけられてるヌケヒコを横目に、アセヒコはこう言った。
「ヌケヒコ。クマに背中を向けると追いかけられるということを忘れたのか?」
「も、も、もちろん忘れてるよー!
アーメン ソーメン 味噌ラーメン
お助けーー」
焦ったアセヒコは、自分はクマに追いかけられていないのに、なぜかヌケヒコを追いかける。
その時、クマがヌケヒコに飛びかかった。
「あぶない!」とアセヒコが思った瞬間、
ヌケヒコがジャンプして近くの木に掴まろうとしたら、襟が枝に引っかかって宙ぶらりんになってしまった。
が、逆にそれでヌケヒコは助かった。
アセヒコはヌケヒコを助けようと、猛スピードで走っていった。
ダダダダダ
すると、焦っていたアセヒコの靴がスポーンと抜けて飛んでいってしまった。
その靴がなんと! クマの肛門に命中!
クマは目を白黒させて、「ウオー」鳴きながらすごい勢いで走り去ってしまった。
「フー、なんとか助かった!」
「ヌケヒコ~。 なんで木に引っかかっちゃったんだよ~」
アセヒコはヌケヒコを地面に下ろそうとしたが、どちらかと言うと焦って落とした。
「いたたたた。 ああ、今日はツキ(運)がない・・・」
「でも、今日はキレイなツキ(月)だぜ!」
アセヒコは、うまいことを言ったつもりのようだ。
ホーホホーホー
3話目「ヌケ神の一言」
「ああ、あのヌケヒコに呪いをかけるのはやめよう。
だって、ヌケヒコはこの頃わしよりマヌケになっとるんじゃから・・・」
マヌケ山からはこんな声が響いてきた。