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減速する素晴らしき世界 Slowdown ほとんど読んだのと同じまとめ記事②


本書は、将来も技術変革、
経済成長は永遠に続いていく
という前提=「呪い」
を、

加速の時代だった20世紀が、人類史上例外的異常事態であり、やって来つつあるスローダウンの時代がむしろ人類にとっては状態である
と言う仮説によって、解呪していくための、「ふりかえり」の本である。

第4章データ新しいものがどんどん減っていく

情報技術などのイノベーション(中国の文字・ヨーロッパの印刷技術・アメリカのインターネット)の伝播は、その折々の時代に、富が蓄積され、戦争が計画実行され、債務が増加する地理的中心から起こってきた。
しかし、テクノロジーの発展は減速していく。Wikipediaの編集者の数は2007年に5万1000人でピークを迎えた。テレビはフラットになり、電話はテレビ携帯電話になっても、最初にその技術が登場した時ほどの衝撃はない。私たちの子供はもう、加速の先にある新しい未来を楽しみにしてはいない。
第五章 気候-産業活動・戦争・炭素・カオス
炭素による大気汚染は、一般に信じられているように、人口の増加によって引き起こされるのではなかった。
1920~30年、世界の人口は増え続けたが、世界の大気汚染水準にはさしたる影響を与えなかった。1945年ベビーブームの始まった年、産業活動と化石燃料の使用による炭素汚染は最も減少した。
人口が増えると汚染が増えるのではなく、ひとにぎりの人間がどんな選択をするかによって汚染が増えるかどうかが決まる。
地球の温暖化と大気中の炭素の量は直線的な関係にある。いつもそうであるかはまだわかっていない。
1955年から1976年までの21年間に、それまでの人類の歴史の中で記録された排出量とと推定したものの合計と同じ量のガスが、生み出された。(167P)
ここ何世紀蟹人為的に大気中に排出されている炭素のほとんどすべてが、アメリカ、ヨーロッパ、日本の活動から生み出されている。そうした自動車は、ほとんど豊かな国の人たちによって造られ、その人たちは作るだけでなく、自動車の大多数をうんてんしてもいた。
今の排出量だと2030年までには地球の気温上昇を摂氏1.5度未満に止められる限界を超えるだろう。

第6章 気温-破滅へ向かう例外

地球の気温が目に見えて上昇しているのはここ5世代。(1901年~)
1850年から2020年の間に。世界は1.1度温かくなっており、変則的な火山噴火を除けばその上昇分はすべて私たちが引き起こしたものだ。(200P)
予測によると、2100年までに地球の平均海面は1~2メートル上昇するだろう。氷冠の破壊が避けられない場合は、10メートル上昇する可能性もある。

第7章 人口動態 人口に急ブレーキがかかる

(世界の人口は)今世紀中ごろに8~90億で頭打ちになり、その後減少に転じるだろう ダリル・ブッカー、ジョン・イビットソン(2019)国連の予測は間違いという声の高まり
格差、貧困、絶望、無知が広がると出生数は増加する。1980年代出生数がスローダウンし始めたアフリカに、IMFによる構造調整政策が導入され、少女の教育機会が阻害された。スローダウンは止まり、人口増加が突出して上昇。これは例外的なモノであるというエビデンスが積みあがっている(が国連の人口動態試算はこの時のデータがもとになっている)
イングランドでは1807年、社会主義者で避妊運動家のアニタ・サンドとチャールズ・ブラッドリーの裁判が行われ、これをきっかけにコンドームが認知され、出生率が下がった。それ以降出生率が高水準に戻ることはなかった。
中国、インドでも、国連の公式見解をはるかに下回るペースで出生率の低下が起こっている。
1970年、5歳未満の子供の数が全人口の四分の一をしめていた日本の女性が手に入れたものは以下の四つである。①自分の意志で避妊と中絶を選択する自由。②男性と同様な教育機会 ③男性が女性の尊厳を以前より尊重する
④生まれた子供の成人までの生存率がほぼ100%ちかくに
現在人口の4分の一が子供であるインドの女性は、これらのすべてをい麻手にしている。

第8章 出生数過去最大のスローダウ


合計特殊出生率とは、女性が妊娠可能な時期の終わりまで生きて、その年次の年齢別出生率に従って、子供を産む場合に、女性が生むであろう数を表す。世界全体の合計特殊出生率は1964年年以来下がっている。
2000年以降世界の出生率は下がり、2015年スローダウンは加速。著者が入下データ(出典265p)では、合計特殊出生率は2013年には国連予測の、2.47割り込んでいた。合計特殊出生率が限りなく2に近づくと、人類の増加ははじめて止まる。
イギリスの詩人フィリップ・ラーキン「素晴らしい年」によると、「性が解放された」のは1963年だという。
1982年から2011年に生まれたY世代は、概して親の代より行儀がよく、あまり飲まず、ドラックもやらず暴動をお起こすこともめったにない。戦争には大多数がいかないという。
日本の50代男性のうち結婚していない人は、1970年は60人に一人、2015年には男性4人に一人、女性7人に一人。2016年35歳未満の日本男性の42%日本女性の44%が「性交渉の経験がない」と認めた。(294P)
フランスでは、1963年をピークに、出生数が減少。ここ数年は1.96で推移。さらに割り込むことが見込まれている。
出生率の減少は世界のほぼすべての地域で起きている。



第9章 経済水準が安定する

資本主義は遷移状態である。生産の様式ではない。資本主義が生き残るには需要拡大し続け絶えず変化する必要がある。資本主義は変化であり、混乱状態であって一つの時代ではない。
ここ何十年で人間の在り方は根本から変化した。産業用電力の主要な供給源さえ、何度も大きく変化している。
GDPの定義 特定の場所で、特定の機関に生産された最終財と、提供されたサービスの付加価値の合計。
アメリカの一人当たりGDPの相対的増加が最も大きかったのは1965年の5.5%増。アメリカのGDPの増加が2%を最後に越えたのは2000年。増加率は2.19%だった。かつてないほど高度なテクノロジーが使用可能になる中、人類は消費と生産を減らすことを学びつつある。
人類が存在していたすべての機関を通じて、人間の大多数は安定した共同体で生活しており、人類はそうして生き延びてきた。今は一過性の例外的な機関である。

第10章 スローダウンの時代の地政学

4000年前、インダス文明が起こったパキスタン北部に大きな、社会階層のない年が次々に建設された。その一つがハラッパ―だ。浴計画された広い公道があり、公共や私有の井戸があり、側溝。浴場が創られ、共用の貯水槽もあった。
議会制民主主義の機嫌は、最近では現在のシリア。イラクイランにまたがるこのインダス文明と同時期、インドではヴェーダ時代などまでさかのぼるといわれている。
オーストラリアの初期の民主柚木体制は、アポ理事にの大地想像の神話にまでさかのぼり、世代を超えて受け継がれてきた。
中国北部では100世代にわたって、同じ暮らしをしたと考えられる。
全ての人が平等であるという考え方が、最初から当たり前のことだったのだ。366P

第11章 大加速化が終わった後の暮らし

私たちが安定に達するとは
①世界の人口の増加が止まる
②人口が安定し、それぞれに現代化が進む
③一人当たりのエネルギー使用用の減少
④生産するエネルギーが減少する
☆この活動によってWell-Beingが高まることはない。人口規模によって持続可能性とは何か、どのような暮らしが可能なのかを考えることが次の課題になる。
ILOの統計によると、最貧国では労働者4人のうち3人が今も不安定な雇用状態である。豊かな国でも、「極度の貧困下で暮らす労働者の数は、1億1400万人を上回る水準から下がらず、2018年には全雇用者の40%が影響を受けると予測される」405P
貧困層の暮らしを楽にするためには、再分配と社会のイノベーションが必要だ。例えば、上位1%の富裕層に1パーセントの富裕税をかける。ここで浮かせた2年分の2兆5000億ドルを財源にアメリカのすべての家庭から税金を1400ドル分控除する。この控除があると病気になった人が病院に行ける機会が増える。スローダウンは多くを変えることができるし、かえなければならない。

生きている地球指数(LPI)

LPIは種の絶滅による生物多様性の消失を集計し、試算した指数である。1970年からはじまり、その年を0としている。LPIは地球全体で、1970年から2014年までの間に60%消失した。動物個体群の規模が平均すると1970年のレベルの半分以下に減少したのである。急速な絶滅は続いている。現在のペースが少しでも加速したら、数十年以内に地球上のほぼすべての生物が絶滅する。
大減速をけん引したのは、女性であり、この先原則の最大の原動力になるのも女性だろう。
2019年、豊かな世界の中で特に格差の大きい国は極右の男性たちの支配下にあった。ドナルド・トランプ、ウラジミール・プーチン、トルコのレジェ・タイブ・エイドリアン、イギリスのボリス・ジョンソンだ。
これに対し平等化が進む国では、権力を手にする女性が増えていた。
アメリカのビュー研究所によると2016年における女性の国家指導者は対2005年比で約二倍の27人。国連加盟国中約14%の国。
2019年に就任した現職デンマーク首相メッテ・フレデリクセン氏、2017年37歳で世界最年少の首相に選ばれ2023年に辞任した、ジャシンダ・アーダーン氏。2019-2023年首相として内閣を組織したフィンランドのサンナ・マリン氏、2022年3月に就任24年、辞意を表明したノバーク・カタリン、ハンガリー大統領。☆現職の女性政治リーダーをざっと見たところ、アメリカの後ろ盾があるなど事情がありそうな人が多かった。長期政権を持つには、まだサッチャーのような、「名誉男性化」が必要なのかもしれない。でも少なくとも大統領や首相は誕生している。日本もまた小さな規模で続いている。
海外投資家は、<ジャパニフィケーション>を恐れている。
まだ定義は確立していないが、ざっくりと「長期にわたる低インフレ、低金利、金融政策の行き詰まり」を総称する言葉である。
日経2019年5.24日の記事「憂うべき日本化」とは」によると、日本経済の長期停滞は、グローバル化の遅れ、不採算企業への政策的支援、手厚い就業者保護など、ある意味経済の非効率性を放置した結果でもある。
しかしこの、非効率性が、ロックダウンなしでコロナを生き延び、
さしたる強制力なしに、
社会を安定させる一つの要素になっているともいえる。
日本はスローダウンの先頭に立っている。GDPは伸びず、消費は冷え込み、若い世代はますます戦争に意欲をなくすだろう。
しかし文化や知性はこれからも進化し続けるだろう。この先何十年かはこれまで以上に変化し続けていくはずだ。
現在も使用されているROKY指数、都市システムの集積鳥さんの度合いを測る指標、を提案した地域学研究者川嶋辰彦の娘は、ナマズの研究をしていた男性と婚約した。その後も彼女は、人間の行動と認知の研究をしようとしていた。二人の子供は41年ぶりに生まれた皇位継承権のある男子となり、これまで後続が通っていた学習院ではなく、お茶の水付属小学校に通い始めた。
今私たちは分断するものより、一つにするものの方が多いこと。協調は戦争よりも良い結果を乱すことを学びつつある。武器を生み出す無意味さを知り、無意味な仕事をすることの有害さを理解しつつある。
ナマズが好きならナマズを研究すればいい。私たちが必要としていないものを売り込もうとする人はもういらない。
世界は、より狩猟時代に近づいているのだ。

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