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あなたや私の素朴な言葉が、やがて世界を変えてゆく。

表題の写真、鎌倉の
稲村ヶ崎海岸に行ったのは
今年の8月20日のことだった。

空は青く、海は雄大で、
黒い砂浜に、真っ白な波濤が
まるで北斎の描く絵のように
砕けていた。

サーフィンをする男女のパーティや
海辺で遊ぶ家族連れで砂浜は賑わい、

何よりその場所の美しさに
驚嘆した。


稲村ヶ崎海岸



さすが「稲村ジェーン」の舞台。
アジカンが、曲にしちゃうはずだ。


福島第一原発で、
アルプス処理水の海洋投棄がはじまったのは、
それから4日後、
2023年8月24日のことだった。


そのニュースは
鈍い痛みを持って私の身体に広がり、
なかなか消えなかった。

アルプス処理水については
今年1月にフクイチでその安全性の
レクチャーを受けた。


フクイチ構内から、唯一持ち出せるローソンのレシート
いつも食べない豪勢なチョコレートと、
なぜかハッピーターンを買ってしまう。

それに反対する意見もたくさん聞いた。

どちらの意見も一長一短。
そもそも議論のベースが違う。
周り中が理系研究者の中の
唯一の文系として
生きてきた経験からすると、
どっちが安全というテーマで
いくら話し合いを重ねても、
落とし所を見つけるのは難しいだろう。

たぶん大事なのはもっと
情緒的で、哲学的なこと。

「人間の営み」にとって
それがなんなのか、
という観点ではないか。

人間の営み、というと
ほとんどの人が経済活動を
思い起こすだろう。
しかし実際、
今私たちが生きているような
経済システムが動きはじめたのは
たかだかこの
100年くらいのことでしかない。



それまでの長い間、
私たちは海で魚を取り、
畑で作物を耕し、
(長きにわたる縄文の時代を思うと
農耕すら最近のことだろうが)

地球の隅っこで慎ましく
生きてきたはずだ。

その頃の私たちにとって自然は
生命の恵みというだけでなく
生存を脅かす、脅威でもあった。

連綿と続いた神仏に対する信仰や、
災いを避けようと
編み出された呪術的な
風習を見るたびに、
自然や生命に対する古代の人々の
畏敬の念を
感じずにはいられない。


神は生きたいという
人間の欲望の形をしている


原発の始まりが、
地球を滅ぼし
人類を破滅に導くものだったとは思わない。
信じがたいことだが
あれは確かに、
みんなのより良い未来のために
造られたのだ。


伝承館資料より


そもそも十分な
エネルギーが確保できなければ
私たちは国として独立した状態さえ、
保つことはできないだろう。

原発は、必然によって作られ、
今そこに存在する。
誰かに頼めば、
なくなるわうなものではない。
それはリアルな現実だ。

私たちは、そのリアルな現実を
生きていかなければならない。


暮らし続けるために
絶え間なく生み出される汚染水を
今後も海洋投棄し続けるか。

廃炉を、それに伴う廃棄物の
をどこでどのように負担していくか。

リアルな現実を見るのは
誰でも疲れる。目を背けたくなる。

敢えてそこをやるためには
例えば「愛」のような、ふんわりした、
ロマンが必要だ。

私たちが守りたいもの、
大切なもの、
それによって支えられているもの、
豊かな地球の実りや美と言った
資産につながらなければ、
やってられない。


みんなの海の話が聞きたい。

鈍い痛みを感じながら
そう思った。

というわけで9月20日
コアメンバーの1人として
関わっている「未来世代法」
の対話会として

「海を想う〜汚染水(アルプス処理水)
が流された世界で

という小さな会を
開催した。

過労死をなくすために
テレビでもラジオでも新聞でも、
団体代表としても個人としても
誰よりも、見えない敵に
こぶしを振り上げてきた私が
はじめて主催する、

是非を語らない「対話会」

そこで私は、
未来世代法の言い出しっぺの
Kiraさんの、
多大なるサポートを得て、



参加してくださったみなさんにとっての
「海」の記憶を聞き、
そこから立ち上がる思いと言葉に
耳を澄ませる
体験をした。

思った通りだった。



一人一人の暮らしから生まれる語りは
非常にパワフルで、
どんな専門家の言説より
心に響く。

こういう基準だから安全だ。
ではなく、
私たちはこの地球で
海とどう生きていきたいのか。

生活の中に海がどんなふうにあって
その海が心の中で、どんなに優しく
波音を響かせているか。

センス オブ ワンダー
を読んで涙が出てくるように、
私たちの中には海があり、
そこで私たちは、
すべての生命に繋がっている。

一人一人の力は
とても小さい。

でも、この素朴でパワフルな、
さもない私たちの語りが
まわり道でも、
やがて世界を変えていくと
私は信じている。

新しい時代は、
専門家のものでも、
才能ある一握りのスターのものでもない。

あなたや私のような、
さもない素人のものなのだ。


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