さよならメイトリクス①
おしもがつらい。
人生で一番口にしたセリフだと思う。
とにかく生理痛がひどい。初潮を迎えてから痛みのなかった月は片手にも満たない。「それお昼ご飯?」と聞かれるほどの薬を毎月1週間飲み続ける私という名の生理の歴史。
成長したらラクになるからと言われて早く大人になりたいと願ったが、世間的にエエ年と言われてもまだ痛みはおさまらず、脂汗を流しながら「いつ大人になんねんチキショー」と下腹部にボヤき続けていた。
ある日。オシモから血が出た。後ろから出た。たくさん。
え?お客様、出るとこ間違えてません?
お客様はその後もエントランスを間違え続け、さらに客層を厚くしていった。もはや生理ではなくふつうに痔の人だ。そういえばこの前担当したおじいちゃんが40年モノのりっぱなヘモ(痔のこと)をお持ちでしたっけ…彼の出血だってこんなに無かった…
仕事を切り上げたあと婦人科へ駆け込んだが、そこのお医者(初老男性)は内診することなく鎮痛剤を処方して「またなんかあったら来て」と冷たく言い放ったので、カルテの文字がよりいっそう汚くなる呪いをかけて医院を出た。
来月確実になんかあるんだなあ。生理だもの。みつを。
3軒目の婦人科でようやく話を良く聞いてくれる女医さんに邂逅。親身に話を聞いてくれるだけで心が癒されるが癒されて欲しいのは身体の方なので積極的に検査や内診を受けたが出血の原因は分からないままだった。
お客様の正体を知らないまま、私はフランス旅行へ出てしまう。長年の憧れの地を歩くことに精神の全てを掛けたためなのか、重なるはずだった生理は完全に後ろ倒しになっていた。
わたしは喜びに浮かれていたのだ。
帰国後、とんでもないことになるとも知らずに。
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