入試
■ 「受験」と「受検」
細かいことですが、本稿ではよく「受検」という表現が出てきます。一般的には「受験」という文字を見慣れているのではないかと思います。
「高校受験」というくくりでは、そのとおり「受験」でいいと思います。というのは、入学者選抜の方法が「検査」だけではないからです。
例えば、神奈川県内の公立高校入学者選抜については「学習の記録(評定)」(いわゆる「内申点」)・「学力検査」・「面接」・「特色検査」(一部の高校のみ)という「選考基準」があります。
平たく言ってしまえば、入学者選抜全体については「受験」なのですが、その中には「内申点」という、いわゆる「試験本番」にはどうしようもないものが大きなウエイトで含まれています。
「面接」も「検査」の一種だと考えると(実際に現在は「特色検査」の一つに位置付けられています)「本番」に受けるものは「検査」ばかりですので、ここでは「受検」という表現を使っています。
「内申点」(クリエイティブスクールの場合は「内申点」ではなく「観点別評価」を使いますがこれも同様です)まで含める場合は「受験」ということになります。
これは、あくまでも筆者の「こだわり」ですので、あまり深く考えていただかなくて構いませんが、神奈川県教育委員会のサイトなどでも「受検」という表記はよく見ます。
もちろん、脳内で「受験」と読み替えていただいても、恐らく語弊が生じることはほとんどない、と思います。
■ 第一志望の変化
息子は、かなりの「迷い」がありながらも、12月はじめの高等特別支援学校の入学者選抜を受検することにしました。
既述のとおり、一般学級にいる生徒にもインクルーシブ教育実践推進校を検討している子が少なくない、という情報もあって「インクルーシブ高一本ではリスクが高い」という考えもあったのは事実です。
しかし、これに合格してしまったら、もう、高等特別支援学校に入ることが決まってしまいます。
高等特別支援学校が「第一志望」の場合には、もちろん何の問題もないのですが、この時点での息子本人の「第一志望」は、インクルーシブ教育実践推進校だったのではないか、と思っています。
息子本人は、高等特別支援学校に行きたくない、という訳ではなかったと思っています。
実際に、何度も説明会や見学会、体験授業などにも参加しています。全くそこに行く気がないのなら、そのうち「もういいや」と言い出していただろうと思うのです。
ですが「どちらかと言えば」となると、高等特別支援学校ではないだろうな、と感じていました。
なので、筆者自身としては内心「不合格」だったほうが諦めも付く、という気持ちがあったのも確かです。
本人による高等特別支援学校の受検の感触は「まあまあかな」だったので、合格する(してしまう)ような予感がありました。
志願状況を見ても、定員を少しだけ超えている程度だったので、不合格のほうが少ないことになります。
これは「都市伝説」的に語られていることですので、真偽のほどはわかりませんが、高等特別支援学校等を含む「特別支援学校」の入試においては、試験結果が「でき過ぎだと不合格になる」というものがあります。
限られた資源である「特別支援教育」なので、定員を大きく上回った状況では、一定以上の成績になってしまうと「あなたには『特別な支援』は必要ないでしょ」と切り捨てられてしまう、というものです。
まあ、その年の志願状況からすれば、流石にそんなことにはならないような気がしましたし、そんなに飛び抜けた成績でも、逆に悪い成績でもないだろう(一般的な「社会常識」的な知識は人並み以上にありますし)と思いました。
息子本人が、あまりはっきりと「自分の思い」を口にするタイプではないため、本当に最後の「最終確認」を兼ねて、気になっていたクリエイティブスクールの「学校説明会」に行ってみよう、と申し込みました。
5校あるうちの、通学可能な場所にあるのは4校。その中で、たまたま日程が合う上に、比較的近く(とは言ってもバスや電車を乗り継いで1時間前後かかりますが)にある高校の説明会が、たまたまこのタイミングだったこともあって行ってみることにしたのです。
実際に受検するならここだろうな、と思っていた高校でもありました。
クリエイティブスクールに関しては、枠は多くないものの、ほぼ例年「二次募集」がありました。
その時点では「二次募集」があることを前提にした「候補」の一つではありましたが、それまで筆者自身が「書類上」での情報としてしかリサーチしておらず、実際の学校の様子などはわかりませんでした。
ただ「二次募集」で受ける可能性があるに過ぎない、とはいえ、一度も実際に見ないで、説明も受けずに志願するのはどうなんだろう、という懸念も持っていました。
全部で3回開催される「学校説明会」としては「最終回」になるのですが、ちょうど、高等特別支援学校の「適性検査・面接」の後で、合格発表の直前の週末というタイミングでした。
本当に、「最後のチャンス」だったと思います。
すると思いもかけず、説明会に参加した息子の心に、強く響く何かがあったようです。
当時はまだ、コロナ禍を受けて、いくつかの教室に分散して、かつ「リモート」で「説明の配信」を視聴するという、大人でも不慣れな形式でした。
しかも、結構な長時間だったにもかかわらず、その説明を聞きながら、配られた資料の該当するページを自分で探して、食い入るように聞き入っていたのです。
息子のそんな姿は、これまで見たことがありませんでした。自分が中学卒業後に本当にやりたかったのは、こういうことなんだ、と思ったようです。
息子の中で、明らかに「第一志望」が変わった瞬間でした。
本当にギリギリでしたが、高等特別支援学校の志願を取下することにしました。
かなり急なことでしたが、何とか休暇を取って、中学校で「志願取下」の確認書を受け取り、その足で高等特別支援学校へと急ぎました。
それが合格発表日の前日、午後のことでした。
何度も同じようなことを書きますが、特別支援学校、インクルーシブ教育実践推進校、クリエイティブスクール、そして他の高校、どれが「上」とか「下」ということではありません。
それぞれ性質も環境も異なる学校ですし、そもそもこのようなケースでは、一般的な「学力検査」を課す訳ではないですから「偏差値」という概念すら、もはや意味を持たないと思います。
あくまでも「本人に一番合った学校とは」という観点で考えるべきで、それは「健常者」の学校選びでも(偏差値だけではなく、校風、環境、通学距離、そして「制服」まで)同じだと思います。
■ 二人揃って
一方「内申点」を巡って中学校と悶着があった長女ですが、結果的に公立校は「ランク」を少し下げ、通学するにも1時間半ほどと遠距離になりますが、街の雰囲気も含めて気に入ったと、受検校を決めました。
結果的に、市内では「内申点」や学力と釣り合う学校がなかったため、市外の高校になりました。
それでも、念のために「滑り止め」として私立高校も「併願」することにしました。
神奈川県内の私立高等学校の場合、いわゆる内申点などに対する「打診基準」などと呼ばれる、通称「確約」制度(公立がダメだったらうちにおいで的なもの)があります。
「内申点」をベースに、特定の科目にウエイト付け(例えば英・数は2倍、など)したり、英検や漢検などによる「加点」もあったりする学校も少なからず存在します。
とある私立高校が、なんとかギリギリ(たまたま娘が取っていた「英検準2級」を加えてどうにか)で「打診基準」をクリアしているようでしたので、申込だけはしておきました。
この場合でもテスト(試験)を受けるか、レポートで済ませるか、の選択ができるらしいのですが、意外と受験時期にレポートを書く、というのは面倒なので、練習がてらに(ほぼ落ちることはないと思われる)「試験」を受けることにしました。
この高校では、この「試験」で一定の(合格者の上位○%などの)成績を取ると、返還不要の奨学生制度があるようでした。
成績によって「授業料+大半の学納金相当」「授業料相当」「授業料の半額相当」とランク付けがあるようでしたが、結果的に「授業料相当」が支給されるという枠(授業料以外の学納金はかかりますが少なくとも「高校無償化」とほぼ同じ効果にはなります)で合格して一安心です。
息子も、そんな様子を見つつ、二人とも同じ日程で県立高校を受検することになりました。
実際には、高校ごとに学力検査、特色検査(自己表現、面接などを含む)のそれぞれの有無があるため、微妙にずれたり重なったりします。
父母で分担して付き添おうかと思ったのですが、息子は「自分で行く」と言って、一人で行きました。
考えてみたら、合格すれば毎日自力で登校するわけで、一人で行けないなら現実的な選択肢にはならない、と思います。
娘は、若干の「方向音痴」ですので(それに加えて結構な「遠距離」でもあるため)入試くらいは、と、学力検査と面接は筆者が、特色検査は妻(も多少「方向音痴」ですが)がついて行きました。
なお、この年度から「インクルーシブ教育実践推進校」も、定員割れした場合は「二次募集」の対象になっていました。
そのため、考えられるパターンは増えていた気がしています。
一般の公立高校で二次募集となる学校はかなり限定的ですが、この年度に関しては、インクルーシブ高もクリエイティブスクールも、実際にほとんどの学校で二次募集がありました。
ただ、特別支援学級の担任が志願変更後の「倍率」が出るまで「全滅」の危険性を危惧していたように、色々な「選択肢」について予め調べておいたほうがいいことは間違いありません。
入学者選抜制度もそうですし、カリキュラムにも違いがありますし、年度ごとに違ったり、時々は大きく変更されることもあります。
また、個々の学校ごとの「特徴」や学費、卒業後の進路の状況など、幅広く確認しておくことが望ましいでしょう。
我が家では「双子」で、かつ性別も違い(神奈川県も私立では「男子校」「女子高」が少なくありません)、更に「障害の有無」と「特別支援学校」に在籍していたことなどが絡み合って、全く違う形の「高校受験」に同時に対応することになってしまいました。
でも基本は「本人が本当に行きたいと思った学校」を選ぶ、ということに違いはないと、改めて思っています。
迷ったら、この「基本」に立ち返るべきだ(合格できることが大前提ではありますが)、と思います。