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2024年8‐9月号:世界の小規模農家から小規模農業の可能性を探してみた

いつの間にか10月になっていました。
今回は8・9月合併号とします。

まだ日本では翻訳されていないが古典的な微生物の名著から2024年2月に発売されたばかりの新著も紹介していますので世界の農業に興味のある方は是非お勧めします。


第十九回:ソイルフードウェブ(土壌食物網)の原理原則

「Teaming with Microbes」Jeff Lowenfels (著), Wayne Lewis (著)」からソイルフードウェブを意識した畑・土づくりの原則を紹介します。

今回の記事で土壌微生物について何か発見があれば幸いです。

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1、2種類の土壌微生物について

原則について紹介する前にこの本で言及している2種類の土壌微生物について簡単に紹介します。

1、菌類(fungi)
菌類(fungi)は、カビやキノコなどを含む生物のグループで、植物や動物とは異なる独自の特徴を持っています。菌類は真核生物であり、細胞壁を持ち、主に有機物を分解して栄養を得る腐生生物です。一部の菌類は共生関係を形成し、植物の根と共に生活することによって植物の成長を助ける役割を果たします。このような関係は「菌根」と呼ばれ、特に内生菌根菌(endomycorrhizal fungi)と外生菌根菌(ectomycorrhizal fungi)の2種類に分類されます。菌類は土壌の健康を維持し、植物の栄養吸収を助ける重要な存在です。

2、細菌(バクテリア)
細菌(バクテリア)は、単細胞の微生物で、地球上のほぼすべての環境に存在し、人間を含む多くの生物に影響を与える存在です。細菌はプロカリオートと呼ばれる分類に属し、核膜で囲まれた核を持たないのが特徴です。これらの微生物は、形状や代謝活動、生活環境によって多種多様な種類が存在します。

細菌は、土壌、生水、動植物の体内など、さまざまな場所で見つかります。

特に土壌中の細菌は、植物の成長や土壌の健康に大きな影響を与えます。例えば、窒素固定細菌は、大気中の窒素を植物が利用できる形に変える役割を果たします。また、分解細菌は有機物を分解し、土壌に栄養素を供給します。

細菌の中には病原菌もあり、人間や動物に感染症を引き起こすことがあります。しかし、多くの細菌は有益であり、腸内フローラとして消化を助けたり、免疫システムを強化したりします。また、細菌は食品の発酵や医薬品の製造にも利用されており、私たちの生活において重要な役割を果たしています。

細菌はその増殖速度の速さと適応力の高さから、科学研究においても重要なモデル生物として利用されています。これにより、遺伝子工学やバイオテクノロジーの分野で多くの進展がもたらされました。

2、菌類と細菌類の主な違い

  1. 細胞構造: 菌類は真核生物で細胞核を持ち、細菌は原核生物で細胞核を持たない。

  2. 栄養摂取方法: 菌類は主に有機物を分解して栄養を得る腐生生物であり、細菌は多様な方法で栄養を得ます。

  3. 生態的役割: 菌類は主に有機物の分解と植物との共生による栄養供給に貢献し、細菌は窒素固定や有機物の分解、消化の助けなど多様な役割を持ちます。

これらの違いにより、菌類と細菌類はそれぞれの生態系において独自の重要な役割を果たしています。

3、ソイルフードウェブを発展させる原則(ルール)

それでは本の中で紹介されていた原則を見ていきましょう。

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