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⑨長崎の雨に想いを馳せてモンキー125と行く
▼前回までのあらすじ
熊本港にフェリーが姿を現した。乗り場での手続きを済ませると、いよいよモンキーに跨り、船へと足を運ぶ時が来た。係員に案内されながら、搭乗口へと向かった。
「お待たせしました。こちらが入り口でございます」
係員の言葉に従い、フェリーの船内へと入っていく。バイクを係留場所に収めると、船内を少し散策することにした。
予想以上の乗客でにぎわっているではないか。観光目的の人も確かにいるが、地元の人々の姿も多数見受けられた。このフェリー路線は、熊本と島原を結ぶ日常の足でもあるのだろう。
八幡浜から乗ったフェリー以来、久しぶりの船上となる。一人で船に乗れば、旅する自分に酔うひと時ももてる。こうした時間が、私には何よりも心地良かった。
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しばらくして、いよいよ離岸の時が訪れた。甲板に出ると、対岸の島原の町並みが視界に少しずつ入り始める。顔に当たる爽やかな潮風、遥か彼方を舞うカモメの姿。熊本を出てから1時間がたっただろうか、私はそのまま甲板のベンチに座り、ぼんやり遠くの海を眺めていた。
そうしているうちに島影が次第に大きくなり、やがて目的の島原港に無事たどり着いたのだった。下船の合図が鳴ると、バイク置き場へと向かった。今回で3度目のフェリー移動となったが、この旅の一コマは私に十分に満足を与えてくれた。
「そうだ、写真でも残しておこう」
一旦下船し、港やフェリーの風景をスマホカメラに収めた。手早くシャッターを切ると、今夜の宿泊先のホテルに向かうことにする。
市内に向かう途中で、冷たい雨脚が私を見舞った。ホテルまであと20キロほどの地点で、急きょ路肩に寄せてレインスーツへと着替える作業を行った。時間を多少ロスしてしまったが、何とか無事に目的のホテルには到着することができたのだった。
ホテルの従業員に案内されて、軒下の駐車場にバイクを停めることができた。荷物を降ろしながら、レインスーツを脱いではたき、雨水を払いながら思った。
「やはり雨の中を走るのはきつかったな。明日も一日中この雨が降り続くようだし」
ホテルに入ると、まずは荷物を客室に運び込んだ。窓の外を見やれば、そこには長崎の町並みが目に入ってくる。しかし小雨に加え、夕方に差し掛かる時間帯でもあったことから、街の情景はうまく視界に収まらなかったのである。
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翌日が雨降りとあれば、長崎での時間は限られてしまうだろう。今日のうちに目的の場所を期せずして回り尽くせば良いが、過度に歩きすぎれば体力も消耗してしまう。それでいて上手く回れなければ、この長崎見物がつまらぬ思い出になってしまうのではないか。私は一抹の不安を感じざるを得なかった。
長崎という街が雨に見舞われていたとしても、その街の持つ魅力そのものは変わらない。大切なのは、私自身がそれをどう捉えるかの心の有り様なのだった。しかし旅に少し疲れ気味だった私は、この雨をポジティブに感じ取ることができずにいた。
窓から視線を外し、ベッドに横たわる。目を瞑って少し休憩するつもりだった。
ふと熊本を出発する前、チェーンの伸びが気になっていたことを思い出した。低速時のギアチェンジ操作が難しくなってきていたので、帰宅したら直ちに手を打たねばならないと感じていた。
また、フェリー乗り場でヘルメットの中に入れていたインナーキャップを置き忘れてきてしまった事実も頭をよぎった。些細なミスが、長期旅で疲労が蓄積されると起こりがちなのだ。これからは気を付けねばならない。
「財布や携帯、Goproなどを落とせば取り返しがつかない。この旅を最後まで無事に終えられるよう、気を引き締めていかないとな」
そして急に、体力が続かなくなってきたのを感じた。雨の中を走ったことで、かなりの疲労が蓄積されていたのだ。
「いや、疲れたとか言ってられんわ!とことん楽しむっきゃないさ。この旅もあと数日しかないし。残された時間、満喫したいしな!」
そう自分に言い聞かせ、わざと声に出して体を大げさにゆすって起き上がった。観光がてら夕食も外で取ることにしよう。旅の醍醐味とは、地元の味を堪能することだと私は考えていた。熊本で出会えた美味しい郷土料理のように、長崎でも何か旨い魚介の料理が食べられればと期待していたのだ。
ホテルを出ると、小雨の中の長崎の街に触れた。いささか古い建築が立ち並び、路地裏から人々の賑わいの声が聞こえてくる。雨に濡れたアスファルトに、街灯の明かりが映し出されていた。歩を進めるごとに、長崎の魅力が私の五感に訴えかけてくるのがわかったのである。
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見つけた海鮮料理店で生ビールとともに新鮮な魚介料理を注文した。活きの良い魚介と、懐かしい家庭の味付けの味噌汁に、私は舌鼓を打った。地元民にも人気の庶民的な店だけあり、極上の出汁の味わいだったのだ。
「おお!めっちゃ旨い!やっぱり来てよかったなあ」
ホテルを出る前の少し鬱屈とした気分は、もはや微塵にもなかった。満腹になった自分の腹に感謝しつつ、その丸みをなでさすった。
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熱いほうじ茶を啜り干し、店を出た。さあ、長崎の街を歩いてみよう。観光地を効率的に回るため、まずはグーグルマップで下調べをした。時間に余裕を持って回れそうな場所を選び、ルートを決めた。眼鏡橋、路面電車、出島、そして中華街などを含めた短めのコースだ。
店を出ても相変わらず雨はしとしと降っていた。ふと「長崎は今日も雨だった」という古い歌が頭の中をよぎる。世代ではないが知っている歌詞、まさに今日の長崎ではないか!私はクックッと笑ってしまった。
パーカーのフードをかぶって雨の街路を歩き始めた。時間があまりないが、長崎の歴史や文化を存分に味わいたかった。そうすれば、この長い旅の一つの区切りを肯定的に打ち止めることができるだろう。
防水ケースに収めたスマホカメラで録画を始めると、その視界に映し出されたのは雨に煙る長崎の街並みだった。
まずは眼鏡橋へと足を向けた。橋の上に立つと、急な坂道と路面電車、木造の建物が一体となった独特の情景が目に飛び込んでくる。そういえばここ長崎では、教会の尖塔が街の景観を特徴付けているのだったか。
「なるほど、なかなか風情があるなあ」
東京の街並みとはまた違う、この古さと新しさが入り混じる光景に、私は心を奪われてしまった。路面電車は観光スポットとしては人力車よりも洗練されてはいたが、それでもまた一つの体験として楽しむことができた。
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次に向かった先は出島だった。この場所に足を踏み入れた私は、長崎の歴史の重みに感銘を受けた。
長崎は開港の地であり、かつてこの街を通じて欧米文化が持ち込まれたのだ。出島はそうした歴史的な意義を物語る重要な場所なのだった。
スマホカメラを手にしつつ、私はこの島内をあちこち歩き回り、記録を残していった。小雨を浴びながらの散策は、かえって心地良い疲労感を生み出してくれた。路地を抜けるごとに、またこうした発見があり、次から次へと新しい景色が現れては私の心を掴んでいったのだ。
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時折、カメラのレンズに雨粒がつくので、それを拭き取る作業を繰り返した。しかし、その些細な手間すらも、長崎観光の充実を彩る一部として感じられた。
長崎の街歩きは予想以上に面白く、あっという間に時間が過ぎ去っていった。気づけば日は暮れて、街の風景も次第に闇に包まれていった。路面電車の行き交う音に混じり、夜の帳が下りて来たのがわかったのである。
歩きすぎて足も痛くなってきたが、私にとっては充実した一日であったと心の底から思えた。まさにこの長崎行きに、一つの区切りを打つことができたように感じられたのだ。
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<筆者 自己紹介>
私は現在40代後半に差し掛かり、子供たちも徐々に自立し、自分の時間を満喫できるようになりました。免許を取得したのは30代後半でしたが、仕事と家庭のバランスで中々バイクに乗る機会がありませんでした。しかし、最近になってようやく自分の時間を楽しむ余裕ができました。大型バイクは維持にお金がかかりますが、手軽に乗れて維持費も抑えられるバイクを模索していました。そこで私が出会ったのがモンキー125です。このブログでは、私のモンキー125にまつわるエピソード、ツーリングの思い出、カスタムの詳細など、私自身が体験したことを共有していきます。
それに加え、私のYouTubeチャンネルでもいくつかの動画を公開していますので、ぜひ一度ご覧いただければと思います。🏍️✨
モンキー125の走行シーンと独特のサウンド、そしてツーリング体験を、まるで現地にいるかのようにお楽しみいただけます!ぜひご覧ください👇
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