見出し画像

日本製鉄とソフトバンクの対米投資を日本人は応援すべきなのかしら?

日本製鐵のUS スティールへの出資子会社化に対して、バイデン政権が否定的な決定を下し、それに対して日鐵は訴訟を提起するという報道がある。日本人は、「日本は友好国なのに?反日感情があるのか」といぶかしがり、日鐵に応援したくなる雰囲気ではないだろうか?トランプも同様な意見を表明しており、次期政権における関税政策も含め、アメリカとはこれからうまくいかなくなるのではないか、日鐵の対米出資がスムーズに進むように石破政権は何か交渉をしているのだろうか、対米弱腰はけしからん、などという空気があるように思う。
一方孫正義さんの巨額の北米投資については、トランプも喜んで共同プレスコンフェレンスで日本大好き、石破さんもいつでも会うよ、という親日的な反応で、孫さんはよくやった、石破政権を側面援助してえらいもんだ、との国内感情が多い気がする。
これで良いのだろうか?筆者は何かモヤモヤした割り切れなさを感じるのである。
日本製鐵の買収金額は2兆円ということだ。またソフトバンクの投資規模は15兆円に及ぶという。
これだけの日本企業の金が出ていくということだ。
一方で熊本へのTSMCの進出に伴う投資額は第一次が1兆円以上、第二次が2兆円で、熊本を中心とした地域おける雇用創出は1万人におよび、地域の雇用環境や所得水準を大きく改善するそうだ。
地域で歓迎の声しかないのに比べて、一部では台湾企業といえ大陸の影響をいずれは受ける可能性のある中国系企業に製造技術・技能も含む日本の高度な半導体技術が流出しないか危惧する声もある。鴻海によるシャープ取得は過酷だったし、鴻海の場合は郭台銘の総統選出馬や北京政府との明らかな関係が危険視されるべきで、それからの連想もあるだろう。
しかし、安定した高給の仕事に乏しい九州地方に、1万人もの雇用が生まれるのである。
鉄は国家なりとして伊藤博文が国家建設の主柱として官営で設立し、かつては経団連会長を輩出した日本製鐵である。それが国内の高炉を次々と廃炉に追い込み誇り高い日鐵マンを長年にわたりリストラし、さらにはトヨタなど国内の自動車業界に猛々しく鋼板の値上げを強要して金を作った。その金を2兆円もアメリカの雇用を作るため持ち出すのか?アメリカの現政権、次期政権も歓迎していないのだ。
日本人はこのおかしな日鐵の動きに対し、変じゃないか?と感じた方がいいのではないだろうか。
ソフトバンクの15兆円。政権や外務省はトランプの覚えがめでたくなり、今後のお付き合いがやりやすくなると喜んでいるかもしれない。しかし15兆円でラピダスなど国内半導体産業にソフトバンクが投資してくれれば経済の厳しい北海道の雇用に資するのではないか。ラピダスへの政府支援は8000億円とソフトバンクの対米投資に比べ微々たるものだ。ラピダスにはトヨタ、デンソーなどとならんでソフトバンクも拠出金を負担するが、出資8企業の合計拠出額はたった700億円。ソフトバンクにそれほど資金調達力があるなら、日米の投資バランスをひっくり返すべきではなかろうか?
国内の経済格差が拡大しているという。中間所得層が伸び悩んでいる。ここを支えるのが製鉄にせよ半導体にせよ、ものづくりの現場における仕事であり、日本製鐵やソフトバンクはまず国内の日本人の幸せの増大にしかるべき義務を果たしてから、海外を考えて欲しいと願う。
こんなことを政府も財界もマスコミも、さらには一般民衆も良しとしていては、日本に明日はない。

いいなと思ったら応援しよう!