記憶の層

あなたの歩いた灼熱の砂漠は
夏の盛りのアスファルト
荒野の岩肌は晩秋の夕暮れ、寂寥感

あなたは広い大地で道に迷って途方に暮れる
私は田舎のローカル列車で、
反対方向に乗ってしまって、えらく焦ったことがある

あなたほどではないけれど
私も日常を旅している

だからあなたの足跡を
何となく、
皮フで感じることができる

あなたの骨に染み入る原風景は
私の感覚を通じて保存され
やがて私の記憶となる

日常で沸き上がる
ささいな私の感情は
あなたの胸へと吸い込まれ
角砂糖のように溶けてなくなる

薄い、オブラートのようなそれは
重なり合い、層をなし、
それぞれの内側に取り込まれる

こうして大きな肉体は
今日もすくすくと育ち続ける

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?