空気を読む日本人 周りが見えないモンゴル人
人間関係のトラブルを避けるためには、相手のことを理解しておくことが大切。例えば、赤ちゃんや犬に対して「今夜ご飯を作っておいて」と頼んだとしてもそれは無理なことであり、できなくても仕方ないと思えることでしょう。外国人と接する時もその考えは大事になってきます。国が違えば文化や常識は異なります。海外に渡航したがある方は「なんでそんなこともできないの?」「なんでそんなことをするの?」と不可解に思った経験があると思います。
外国の人から見た日本人のイメージといえば、「勤勉」「丁寧」「正直者」「礼儀正しい」「責任感がある」「空気を読む(自分の考えを表に出さない)」などが挙げられるでしょう。自分はそんなことないと思う方であっても、外国の人からすれば相対的にそう感じられることがあると聞きます。
さて、僕はモンゴルに7年在住している日本人です。数多くのモンゴル人と出会ってきて、彼らの言動に対して不思議に思うことや不満に感じることがたくさんありました。
モンゴル人のイメージは「適当」「大雑把」「明るい性格」「平気で嘘をつく」「自分の利益しか考えていない」って感じでしょうか。
僕からしたらおかしく思えることも、彼らからしたらそれは”普通”のことであり、逆に僕の考えが彼らにとってはおかしなことだと思われてしまうことが少なくありません。
今回はモンゴル人と関わる上で知っておくべき彼らの性格や文化についてご紹介します。もちろんこれは全てのモンゴル人に当てはまるわけではないですが、その特性を知っておくことは大切だと思います。
遅刻は当たり前
「今向かっているよ」→そもそもまだ家から出ていない
まず一番多く経験するのは、待ち合わせに遅れてくること。「今どこにいるの?」と聞くと「今向かっている」と答えられるも、実際はまだ家から出ていないということが多々あります。それと似たような感じで「近くまで来ている」や「あと10分で着く」は平気で1時間以上かかることがざらにあります。
家から出ていないのはぶん殴りものですが、モンゴルの首都ウランバートルは毎日恐ろしく渋滞するため、1km進むのに1時間かかることは珍しくありません。なので時間通りに来ることなんてまずないと思っていた方がいいでしょう。それに伴い、複数人で集まる時も「みんな遅れてくるでしょ、時間通りに行っても仕方ない」とみんなが思って、それぞれが当たり前のようにゆっくり来るので、いずれにせよ結果として全員が時間通りに集まることは皆無です。
日本の5分前集合する習慣や時間通りに出発・到着する公共交通機関は本当素晴らしいですね。
約束はあって無いようなもの
「明日食事に行こう」→次の日その人は別の予定を入れている
時間と同様に約束事も基本的には鵜呑みにしない方がいいでしょう。とあるモンゴル人から「明日の夜、空いている?ご飯食べに行こうよ」と誘われました。明確な集合場所や時間は言われなかったけど、約束したから他の予定は入れませんでした。次の日になり、いつでも動けるようにと外出を控えて家で待機していました。すると、待てど暮らせど連絡は来ない。18時を過ぎてさすがに痺れを切らして電話をしてみると、「そうだったっけ?ごめん、地方に出ちゃったからまた今度にしよう」と。せっかく他の予定を断り待っていたのに、この時間はいったい何だったんだと後悔したことが多くあります。
色々誘われたり、口約束したりしても自然消滅することがたくさん。日本の社交辞令的な言葉ではなく、ただ単に忘れているだけとしか思えません。
入念に確認をするか、ないものだと思っていた方がいいでしょう。ちなみに、逆に僕がそのような約束をすっぽかして怒られたことはないので深く気にしなくてよさそうです。
時間や約束を守ってくれないことで全く予定が立てられないため、日本人からしたらもどかしく感じてしまうことでしょう。僕もそのように感じていましたが、今となっては慣れました。日本人の方と何か予定を立てる時にモンゴルでの都合のせいでうまく調整ができなかった場合は、あの人たちが悪いと開き直るしかありません。
浅はかな考え
基本的に見切り発車
政治や教育、街中を見れば一目瞭然。「それって手をつける前に想定できる問題では?」と感じてしまう部分がいくつもあります。今の自身の立場的に深く言及できませんが、呆れて笑ってしまうようなことがたくさんあります。先のことを予測して行動するということは非常に苦手なようです。
逆に考えて、失敗を恐れずに果敢に行動していると捉えれば彼らの熱量は相当なものです。日本人は完璧を求め、失敗を限りなく減らそうと準備を入念に行う傾向がありますが、モンゴル人は未完成でも一部ができていれば世に出してしまいます。建設中の建物であっても、完成している部分だけでも運営を始めて、その傍で工事を継続している光景は日常です。
その他、何か問題ごとが起きても基本的には臭いものには蓋をする傾向にあります。見て見ぬふりというより、本気で見えていない(気にしていない)のかもしれません。
貸りたものを返さない
「娘の誕生日でお金が必要。来週返すから貸してくれ」→返ってくることはありません
家族の誰かが病気になったり、誕生日を迎えたりありとあらゆる理由をつけてお金をせびられます。
そしていざお金を渡すも「来週返すよ」→「返ってこない」→「1ヶ月に絶対返す」→「結局返ってこない」→「連絡取れなくなる」or 「諦めるしかない」ほぼこのようなパターンです。
モンゴル人に限ったことではないですが、お金を貸す時はあげるものだと割り切った方がいいですね。
僕はいくら仲が良くて、相手が困っていそうでも貸すことはやめました。
もらって当たり前
お前のものはみんなのもの、俺のものもみんなのもの
誰かの家に訪れた際、親しい仲の場合はもちろんのこと初対面の相手であっても席に着くや否やテーブルに置かれているお菓子を勝手に食べる光景を目にします。また、僕はスポーツチームに所属していて合宿や遠征では複数人と同部屋になるのですが、自分で持って来た飲食物は許可なく取られます。
これだけ聞くとなんてマナーの悪い人たちなんだと思うかもしれませんが、逆に彼らは自分のものを勝手に飲み食いされても怒ることはほぼありません。おそらくそう言ったものは共有する認識にあるのでしょう。
ここ最近で一番驚いたことは、柔道の大会でハンガリーに行った時の出来事です。現地に住むモンゴル人のお宅に招かれ、選手数名と訪れました。僕を含め他の選手もその方とは初対面でした。家に入り1時間くらいした時に家主に急用が入り、「外に出なければならないから好きなものを自由に食べて、ゆっくりしていてね」と言って出て行きました。すると選手たちは冷蔵庫から食材を漁って調理し、ジュースやビールを開けて飲み、ベッドでゴロゴロとくつろぎ始めました。好きにしていいよと言っていたけど、本当に好き勝手にしているなとびっくりしました。さすがにやりすぎでは…と思いましたが、その家主は帰って来た際「ゆっくり過ごせた?それならよかった」という感じでした。そもそも初対面の相手を家に残して出ていくということ自体が日本ではあまり考えられないことかと思いますし、カルチャーショックを受けましたね。
人の家のものを勝手に使うのはモンゴル人にとって行儀が悪いことではなく、また逆の立場になったとしても気にすることではないことが伺えます。ここで深掘りはしませんが、遊牧民の文化が関係してると僕は感じています。なので、自分の家にモンゴル人が来た時はこのようなことが起こることは事前に想定しておいた方がよさそうです。
まぁ、某国民的アニメに出てくるジャ○アンよりはまだマシですかね。
返報性の法則は通用しない
モンゴルはいわゆる発展途上国の立場にあり、日本をはじめとして様々な国から多くの支援を受けてきています。もちろん、その場では感謝の意を示しますが、それ以降に何かお返しをするということはほぼありません。では自分たちで自立していこうという意識も低く、もらうだけもらってその場限り、そしてまた支援を受けるというような循環にあると感じています。
微力ながらも日本とモンゴルの橋渡しをしている僕からしたら、日本の方々に申し訳ない思いが強くなるばかりです。かといって、モンゴルの方々の意識を変えるわけにもいきません。
最初は良いことをしたと思えたとても、ボランティアや支援というのは、よっぽど見返りを一切求めないお世話好きの人かお金や時間に有り余っている人でなければ継続することが厳しいことを実感してきました。現実は綺麗事だけでは済まされません。経験者にしかわからないことでしょう。
圧倒的テイカー
それと同様に僕の専門である怪我の相談や施術に関しても「知人なんだからタダでみてくれよ」というのは少なくありません。ましてやこれは日本でもよくあることだと思います。医療人が見返りを求めるのは卑しいことだと思われがちですが、対価は必要だと感じています。それらを習得するまでにたくさんのお金を費やしてきているし、何か差別化をするなら別ですが無償でやってしまったらしっかりと対価をくださる人はどう感じるでしょうか?
実際、モンゴルに来て最初の数年は何でも受け入れるようにして、人脈と信頼をを手に入れることはできました。しかし、今となってはマイナスに感じることばかり。この報酬問題については、長くなるのでまた別の記事に詳しく書こうと思います。
いずれにせよやってよかったと思わせてくれるなら、今後もまた色々と協力したくなりますが、そのようなことはこの国ではあまり感じられないというのが現状です。
心理学で「ギバー(他者を中心に捉え相手が何を求めているかを注意深く考えるタイプの人)」「テイカー(自分がより有益になるように持っていき、相手が望んでいることよりも自分の利益を優先していくタイプ)」「マッチャー(与えられなければ与えないし、何かをしてもらったら恩を返すというタイプ)」とありますが、多くのモンゴル人は圧倒的にテイカーですね。
夏になったら全てが白紙に
祭りや遊び重視
モンゴルは非常に厳しく長い冬が特徴的であり、短い夏はとても貴重な時間です。6月から8月末までは各教育機関が夏休みとなり、それに従い多くの人が地方や海外に出かけ、その期間はウランバートル市内の渋滞が発生しなくなります。すると、冬の間に課題とされていたことに対する対策が休止となり、いざ夏が明けて次の冬になると同じような課題に人々が声を上げます。毎年これの繰り返し。この夏の間にできることがたくさんあったのでは?と思いますが、みなさん夏を謳歌するのに精一杯です。
また、モンゴルはお祝い行事が年に何回もあり、その度に職場のみんなが集まり飲食やダンス等で賑わいます。日本では単に祝日になるだけのようなものですが、みんなでワイワイするのが好きなのでしょう。どことは言えませんが、就業時間内にも関わらずお酒を酌み交わし、また業務に戻る、ひどい場合はその日の仕事は終了させそのまま職場で飲み明かすなんてことも珍しくありません。やらなければならないことがあるのに、それを後回しにして今を楽しむ文化が少なからずもあるようです。もちろん、それは良くないと考えているモンゴル人もいらっしゃいます。
感情を表に出す
すぐ喧嘩してすぐ仲直りする
モンゴル人は基本的に思ったことは素直に口に出します。いや、逆に彼らからしたら日本人は自分の意見を出さなすぎだと言われます。たしかに、特に僕はそれが苦手です。争いごとが苦手なので、よほどおかしいと思った時は発言しますが、周りやトップの意見に合わせることもしばしば。
モンゴル人のさすがだなと思うのは、いわゆる組織の偉い人に対して下部の人間が物怖じせずに自身の意見を述べることです。ヒートアップして取っ組み合いになることもありますが、数日後には仲直りしてしまいます。殴り合いのような喧嘩とまではいかないものの、しっかりと発言できるモンゴルの人々には学ぶところがありますね。
内向的な僕ですが、日本にいた頃よりは感情や自身の意見を出せるようになった気はします。
最後に
モンゴル人の性格や文化を少し知ることができたでしょうか?
日本国内はもちろんのこと、家族ごとでも常識というのは異なると思います。特に海外に出て、現地の気に入らないことがあったとしても、それを我々が強制して変えさせることは不可能に近いでしょう。だって、身内の人や親しい友人でさえ難しいのだから。
しかし、他人を変えられなくても自身の考え方を変えることは可能です。
誰が最初に言った言葉かは定かではありませんが、島田紳助さんのお話がまさに僕の思っていたことなのでご紹介します。
雨が降り「ジメジメして嫌だな」と感じる人もいれば、「シトシトと降る雨音が心地よいな」と感じる人もいます。同じ出来事であっても、その人それぞれの捉え方によっていかようにもなります。
ほとんどのモンゴル人は人間1回目なんですよ、きっと。だから怒ったってしょうがないです。実際そんなことがあるとかないと関係なく、そう考えると心がすーっと軽くなります。
この記事ではモンゴル人のマイナス面を多く書いてしまいましたが、総じて「”今”を生きている」という感性は良いところだと思っています。逆に仕事や人間関係でストレスをたくさん抱えて、”今”を楽しめていない日本人のことはあまり好ましく思いません。どちらが良い悪いではなくそれぞれに良い面も悪い面もあります。
それでもやっぱりモンゴル在住経験のある方であればわかると思いますが、この国では本当に嫌な思いを数多く経験します。その場では、かなり苦痛に感じ避けたいことかもしれませんし、無理に考えを変えろと言う気はありません。ですが、きっとそこでの出来事は他の国に行ったり、日本に戻った時には良い経験、面白い経験に変わっているかもしれません。
数年前にとある大学の教授がモンゴルに来てアテンドをしていた際、その方は「モンゴル人のマナーが酷い」「ウェイターの態度が悪い」「なんでそんなこともできないんだ」など事あるごとに悪口ばかり言っていました。
外国という異国の地に来たのであれば、日本の常識が通じるわけなんてないんですよ。そんなことに不満を感じていちいち腹を立たせるよりも、その違う部分を楽しんでみませんか?
僕はこれからも様々なヒトと出会い、たくさんの文化に触れてみたいと感じています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
p.s.ちなみに、ここまで話しておいてなんですがモンゴルに長期間滞在することはおすすめしません。9割以上の人が嫌になって離れているので…(笑)。長くても1ヶ月くらいがいいんじゃないですかね。
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