下落にビビるな!押し目は買いだ!

 今週の日本株は週末に引き続き下落基調で始まった。昨年から、相場見通しで米国経済のリセッション・リスクは杞憂と繰り返し指摘してきたが、予想通り市場関係者の意識もソフトランディングシナリオに変化してきている。

 現在の世界的な高インフレの背景は、コロナ対応による積極的な財政政策がベースにあるため、ディマンドプル・インフレの傾向が強いことから、インフレヘッジの株式市場が堅調になるのは当然の反応。
 しかし、メディアや多くの市場関係者が低金利・低インフレ環境が長かったことで、インフレ経済への理解力が乏しいため、政策金利の大幅引き上げが景気後退を招くと思い込み、弱気相場を意識する結果となったのである。
 米国では、市場金利が政策金利の大幅引き上げにより大きく上昇したが、不動産市場は堅調を維持し、雇用環境も景気後退とは程遠い状況となっている。だから、直近に発表のあった消費者信頼感指数も高い水準を維持しているのである。経済の本質を理解できないと、この強気相場の背景も理解できなくなるのである。
 特に日本は、デフレ経済が20年以上も続いたことで、デフレ思考が染みついている。インフレが逆に景気にとってネガティブな影響を及ぼすと思っている者も多い。
 インフレヘッジ資産となる株式がインフレ環境下では、堅調な動きとなるということも意識出来ないので、上昇するとすぐに売り目線となり、下落すると慌てて売るという悪循環が身についているようだ。
 6月末、今月の7日・10日は、公的年金のリバランスやETFの配当に伴う売りといったテクニカル要因を気にしている投資家は多いが、気にするだけ無駄である。仮に短期的に需給悪化をもたらす可能性があっても、その手の売りは、ファンダメンタルズに伴う売りでは、そもそもない。
 よって、ファンダメンタルズを伴わない機械的な売りによる下落は、バリュエーションの低下をもたらすだけの買いイベントで終わるため、投資家にとっては、気にするようなイベントではないのである。
 この手のくだらないイベントを気にするのは、投機家であり、投資家ではない。投資と投機の違いを本質から理解できないから、売り場と買い場の区別も出来なくなるのである。

 
 現在の世界的な株高は、ファンダメンタルズに対する見方が修正されている点をよく理解しないといけない。
 米国に対しては、政策金利の大幅な引き上げがリセッションをもたらすと勘違いしていた市場関係者が多かったが、半年経っても景気後退を意識させるような内容が示されないため、見方を修正する流れとなっている。
 名目金利と実質金利の乖離を意識できずに、名目金利の上昇が景気悪化をもたらすと認識したことが、そもそもの間違いなのである。
 現在は世界的な高インフレ環境となっている。つまり、名目と実質の乖離が大きくなっている。実体経済に大きな影響を及ぼすのは、当然ながら実質の方である。米国は、政策金利を大幅に引き上げているが、インフレは鈍化しているとはいえ、依然高止まりしている。
 だから、名目金利が大幅に引き上げられても、実質金利は過去の景気後退をもたらすような引き締めレベルには全く達していない。加えて、中立金利も積極財政による需要増加により上昇しているとすれば、過去に景気後退をもたらした水準よりも高い金利水準にならないと、景気後退を引き起こすレベルにもならないのである。
 FRBのタカ派姿勢の維持が景気悪化をもたらすと認識していた市場関係者の予想の方が現実を正しく理解できていなかったのだ。だから、ハードランディング懸念が後退し、ソフトランディングへの期待が高まっているだろう。
 来年の業績予想に対するリビジョン・インデックスは、日米ともにプラス圏に浮上してきていることを踏まえても、市場の見方が大きく修正されてきていることが分かるはずだ。だから、世界同時株高となっているのである。

 低金利・低インフレ環境下のバリュエーションの平均値から逸脱すると割高感があると判断するような市場関係者は多いが、環境が大きく変わるパラダイムシフトを意識すれば、過去の平均で現状を判断することの問題点は分かるはずだ。
 この環境の変化を意識できないから、このレベルで売り思考となるのである。最も重要なパラダイムシフトを意識できないので、過去平均と比べて割高だと判断してしまうのである。結局、本質を捉えるだけの政治・経済・マーケットリテラシーが乏しい人ほど、売り目線になってしまうのだ。
 年金のリバランスやETFの配当に伴う売りなど懸念するべきイベントでも何でもないことはわかるだろう。騒いでいるのは、目先の需給にしか思考が使えない投機思考の者だけである。
 米国のリセッション・リスクが後退するなかで、インフレ率が鈍化してきていることから、政策金利の引き上げ局面も最終局面となりつつある。政策金利があと1回か2回引き上げられたとしても、現状の過剰流動性相場だと長期金利の上昇は限定的だろう。
 直近の米国市場は、金利上昇とグロース株上昇が併存する動きとなっている。この反応は、市場がリスク・オン状態に変わりつつあるということだろう。
 よって、米国市場ではグロース株がバリュー株をアウトパフォームしている流れから、東京市場でも半導体関連株などのグロース株が堅調な動きとなりそうだ。
 半導体関連株は、指数寄与度も高いことから、再び日経平均も6月に付けた高値を目指す動きとなりそうだ。特に日本株の買いの背景は、経済のファンダメンタルズ改善を評価した買いがベースにあるため、内需関連株への期待感も加わり、TOPIXが先に高値を更新する動きとなるだろう。
 世界同時株高をもたらしているのは、インフレ環境であり、そのインフレ環境は政治と経済の一体化に伴う需要増加に起因している。この流れは、簡単には変わらない。強気相場は、まだまだ続くのである!

【過去から現在を読み解く】

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