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ハードルの向こうの風景は | エッセイ
2025年がもうすぐそこまで近づいて、あれだけ大変だったパンデミックもすっかり歴史の教科書の1ページへと遠のきつつあります。
ロックダウンで私たちが参っていたとき、会社や行政は初めてのことに対応するのにさぞ尽力したことでしょう。なにせ前例のないことをするのは、ハードルが高いのですから。あの頃毎日アップデート会見を開いていた政治家は、ある日こう言いました。
「前例のないことをしようとするとき、二種類の人間がいる。一つは、理由を並べてできないと言う人間。もう一つは、理由を並べてそれらをクリアすればできると言う人間」
誰しも後者でありたいと願うものです。が、いざ初めてのことをやろうとするとき、根拠のない不安はどこからともなく湧きおこってきます。
自分では力不足なのではないか?
足を引っ張ってしまうのではないか?
物理的な距離の問題は?
一人だけレベルが違っていたらどうする?
主観的な心配はもっともな顔をして、挑戦しない方へと手を引いていきます。
パンデミックほどの大事ではありませんが、私も最近そんな経験をしました。
文芸サークル「青音色」
「青音色」は、海人さん・渡邉有さん・吉穂みらいさんが創立した文芸サークルです。お三方は(たぶん)note 繋がりで、フォロワさんも多く、吉穂みらいさんに至っては、PASSAGE という神田神保町の共同書店で多くの著書が販売されています。
いつまでも読んでいたくなるような、時に泣いてしまいたくなるような、美しい物語を描く方々で、「文章力は読書量に比例する」というようなことを考えさせられますが、これにはまた別の機会に触れることとします。
自分の小説をウェブに載せることもなく、ひとり黙々と公募生活を送っていた私にとって、彼女たちは空の上の住人です。そんな三人が個人での創作という枠を超えて青音色を結成し、ミーティングを重ねて文学フリマ東京39に挑む過程を Bluesky や note で読むにつけ、「楽しそう!」「私も参加してみたい!」と思うようになったのは、ごく自然なことでした。同時に、不安に足を引っ張られて、「興味のある方は気軽に質問を」という緩い誘いにさえ、なかなか踏み込むことができずにいました。
comfort zone という言葉があります。
グーグルで訳すと「コンフォートゾーン」と出てきて歯痒いですが、要は、無理せず自分が心地よくいられる範囲、という意味です。ぬるま湯と訳すのが一番近いですが、言葉に棘はありません。You need to get out of your comfort zone. のように使います。
自分が comfort zone から出て挑戦するべきだと解っているとき、人はどうやってその不安を乗り越えるのでしょう?
勇気のある人なら、自分を鼓舞して挑戦できるのかもしれません。
論理的な人なら、挑むべき理由を述べて自分を説得できるでしょう。
用心深い人は、決断をできずにまた見送ってしまうかもしれません。
何事も自分で考えて決断する、という人生のルールの中で生きている私たちですが、ふとした時、そのルールの外から想像もしていなかった未来がやってくることがあります。私にとってそれは、Bluesky での海人さんのコメントでした。
「書いているうちにうまくなるという気持ちで自分もやっているから、参加してみませんか」
というようなことを言って、いとも軽やかに私の背中を押してくれたのです。思い返してみれば、note を始めようか悩んでいたときも、読む専門の人も多いからと、ハードルを下げてくれたのは海人さんでした。
かくして私は comfort zone を出て、想像していなかった未来に一歩を踏み入れました。勇気があったわけでも、論理的に進めたからでもありません。ハードルのあちらに広がる風景を想像させてくれる人たちに、ふとした縁で出会ったおかげです。
きっとこれからも迷うことは多々あるでしょう。新しいことに臆してしまう自分は、そう簡単には変わらないかもしれません。でも言い訳をせず、全力を尽くして、卑屈にならずに挑戦していこうと、今は心が明るく沸きたっています。そしてまたこの先に、想像すらしていない未来は待っていてくれるのかもしれません。
了
臆さず参加してみます↓
#想像していなかった未来
勝手に宣伝していいのかわかりませんが…↓
#文学フリマ東京
#青音色
ここまで読んでくださってありがとうございます♪