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昔は歌を覚えざりけり
百人一首と聞いて、お気に入りの一首が浮かぶ人は、かなり詳しい人のように思います。僕自身は中学校の時に初めて出会って、毎年校内でカルタ大会があって親しんだくらいの記憶ですが。
一番初めに覚えたのは「あふことの たえてしなくば なかなかに ひとをもみをも うらみざらまし」でした。下の句の「ざらまし」の音が印象深く、マイナーな句を覚えた方が有利だという発想もあって、覚えたものです。
いまではほとんど思い出せないけれど、当時は50首くらいは覚えていたはず。同じクラスに百人一首がとても強い女子がいて、本来3人対3人で戦う試合に、2人で参戦し88枚獲得したという驚きの記憶が強く残っています。僕自身は強くも弱くもない、ふつうでした。
上の子は小学校3年生ですが、担任の先生が百人一首が好きなのだそうで、クラスで百人一首に取り組んでいます。古文の科目があるわけでもないから、言葉が難しかろうと思うのだけれど、孫パワーを発揮したのか、ばあばが百人一首辞典なるものを買ってくれました。
辞典とはいうものの、少女マンガのタッチで描かれており読みやすそう。歌の意味、句を詠んだ人物像などがマンガで解説されているのです。
教室で、定期的に試合が行われていたするらしく、一喜一憂している姿もあって。ある日、ずっと勝てなかった子に勝つことができたとかで、とても喜んでいたことがありました。
並べているうちに下の句から上の句を思い出し、読み出したら上の句から下の句につなげ、札を取る。シンプルだけれど、記憶していないと探すこともままならない。悔しがったり喜んだり、楽しんでいる様子はうらやましささえ感じてしまうものです。
正月明け、妻の実家に子だけが泊まりに行きました。ばあばたちは熱烈歓迎だから、ふだん我が家ではできないことをのびのびとやっていて、子どもらしくもあります。
そんな中で、じいじと百人一首をしたという写真が来ました。じいじは、百人一首を詠み人含めてすべて暗記しているので、かなりの強者。
しかし、子が勝っていました。どこまで対等か分かりませんが(笑)
その写真を見て、僕はとても感激しました。と同時に、僕の幼い頃にはそういう機会が全くなかったなぁと思い出しもしました。どちらの祖父も働き者で、日中は仕事に出ていて、直接遊んだ覚えがありません。
百人一首もそうだけれど、僕自身が将棋も囲碁もできなかったし、野球もサッカーもしない子どもで、どう扱うかも分からなかったんだろうなぁ、と思いだしてしまいました。
兄弟もいたので、実現は難しかったかも知れませんが、祖父と何をして遊べたのかなぁと思うと、涙が出そうになってしまいました。
世代を超えて遊べる趣味、こんなふうに身につけられて、そして実際に遊べることは子どもにとってはふつうなのですが、大人になって懐かしさも湧かないのが、少し残念です。
ばあばも奮起して「わたしも覚えなくちゃ」と言わしめた孫パワー、さすがです。
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