桜が無い世界
風がひとひらの花びらを運んできた。私は、髪に付いた桃色のそれを指でそっと摘む。
これが、桜の花びらなのか。
2050年に生まれた私は、桜を知らない。
なんでも、2040年ごろに桜が枯れてしまう木の病気が流行ったのだという。
ソメイヨシノだけではなく、山桜も、寒緋桜も、河津桜も、“桜”とつく木は全て枯れてしまう奇病であったそうだ。
日本人にとって桜は、風物詩を超えて、象徴のような存在でもあった。
今では誰も使わなくなった、100円の価値を表す硬貨と呼ばれた銀色の金属片にも桜が彫ってあったのだとか。
花びらは、3Dプリンタで作った模造品だが、大量に降り注ぐ様は、美しいと言う状況なのかも知れない。
指先にいた花びらが、はじけた。
痛っ。
目を覚ますと、私の指を甘噛みしていたサクラと目が合った。
ニャー。
そう、夢か。変な夢だったなぁ。
ぽつりと独り言を放って、満開の桜を眺めた。
二度目ですが、yuca.さんの企画に乗っかりました。SFに耐えられず、夢オチでした。満開の桜がだいぶ懐かしい気持ちがします。
この企画もあと少しで終了だそうで。書き出しと終わり方が決まっているので、奇抜な設定もまた楽しそうです。
みなさん作品も読みにいかねば。
ありがとうございました。
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