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花より団子の真実
毎週月曜日には、旅の記録を書いています。
中国の広州と言えば、「食の都」として名高い都市です。そして、広州には辛い味の料理の本場として有名な四川というエリアがあります。日本では、麻婆豆腐がもっともポピュラーな四川料理ではないでしょうか。
そんな四川に、兄弟と間違われる友人(出典・帰るまで旅)と旅行に行った時のことを。
食の都、なんて書いたけれども旅の1番の目的は、世界遺産でした。四川には、九寨溝や黄龍、楽山大仏、峨眉山と言った数々の世界遺産があります。
「世界遺産」というテレビ番組で、九寨溝のあまりにも美しい光景を見て、これは肉眼で見たい!と思った矢先、四川で地震がありました。おそるおそる旅行会社に訪ねると、現地への道が崩れてしまって今年は無理です、とのこと。気を取り直して、次の年に友人を誘って旅に出ました。
成都へ飛んで、近郊の峨眉山や楽山大仏を見学したのですが、とんでもない山道だったのと、もともと乗り物酔いがひどいのとで、個人的には大変でした。
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シートベルトがない車だからということで、事前にシートベルトが配られて自分で椅子にくくりつけるという、ほんとに安全なのか不安な手配がなされ、そこまでして世界遺産を見る必要あるのかと、心が折れそうになりました。
その後、飛行機で九寨溝空港へ。富士山の8合目あたりの標高で、寒い場所でした。僕は空港を降りたあたりで頭が痛くなってきていて、ぼんやりしていました。きっと高山病だったのだと思います。
高山病を防ぐには、徐々に標高をあげるというのがセオリーですが、飛行機でドンと3千メートルくらい上がってしまったのです。いくらなんでも飛行機の1時間は"徐々に"ではありませんでした。
翌朝、意外にもスッキリして、同じツアーの方々と、バスに乗って九寨溝へ出発しました。
九寨溝は、ほんとうに美しかった!
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石灰質の土壌が水底で青く光り、透明な水がその青を深く広げていました。乏しい語彙では伝えきれないほどに、これは誰が何と言おうと「世界遺産」だと思いました。自然が作る美しさ、儚さは、守るべき遺産であり、癒やされる景色でした。
次の日の黄龍もまた絶景でした。
幅100メートルくらいの鍾乳洞で、天井がないというイメージです。イタリアのフィレンツェは、屋根のない美術館と称されますが、まさに屋根のない鍾乳洞(あんまり美しくない笑)。長い年月をかけて出来上がった奇景は、とても素晴らしかったです。
花より団子なんて、ウソだ!
こんなにも世界遺産(花)は最高じゃないか。
そんなふうに思える景色で、来てよかったと心から感じました。
旅の終盤は、成都に戻りました。
中国と言えば熊猫、つまりパンダを観に行きました。その名もパンダ基地。パンダしかいない動物園でした。赤ちゃんパンダの施設、パンダ幼稚園、そして大人パンダの森。
友人ともにかわいいものが好きな二人で、パンダに癒やされていました(笑)。驚いたことに、パンダは世界共通語のようでした。アジア人も欧米人も「パンダ、パンダ」と呼んでいたのです。
帰国前日の晩御飯は、陳麻婆豆腐でのディナー。花椒(フアジャン)が効いて、まさに痺れる辛さでした。美味しかった。また食べたいなぁ。
ほんと、終わりよければすべてよし。
ツアーでご一緒した方から「え?お二人はご兄弟ではないんですか?」と、またしても言われてしまいました(笑)
お土産を買って重くなった荷物を抱えて帰国。
僕:ただいまー。
母:おかえり。あれ、・・やせた?
旅行から帰ってきて、まして食の都に行ったのに、痩せるはず・・(体重計を見て)「ほんとだ」
3キロも、痩せていました。
しかも、
なんと、友人も痩せていたのです。メールが来ました(笑)
精神的な双子みたいだから、超常現象が起こってしまった・・わけではありません。
食の都で、実は僕たちは"飢えていた"のです。
食事は円卓を囲んで同じツアーの方と食べるのですが、雰囲気はいいのです。でも、食べ物が口に合わない。
辛いのは予想通りなのですが、辛くなさそうなのは味がなくて、唯一の望みである白いご飯は、木樽に盛られていました。
その樽は、海賊的で豪快なのですが、いかんせん清潔感がなく、不安になってしまったのです。泊まりはホテルなのだから、朝ごはんは何とかなりそうなものですが、なぜか洋食がありませんでした。
朝は散歩と称してお店を探し、月餅を見つけて朝ごはん代わりに食べたり、黄龍では観光もそこそこに、ファストフード店に入ってみたり。
最後の最後に、四川らしい、いや食の都としての面目躍如というお店に行けました。すべてがツアーに組み込まれていたので、そんな作戦だったのかも知れません。
ともあれ、景色の良さは筆舌に尽くし難く、自然の変化でかんたんに失われてしまうような世界を、ぜひとも見てほしいと思います。
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お土産は、迷いに迷って食べ物をやめて、パンダのボールペンをたくさん買って帰りました。食の都に行ったのに。
「花より団子」は、団子が美味しいという前提のもとに成り立っているのです。当たり前のようでいて、それまで意識してこなかった諺の真実。異国の地で痛感することになるとは。お腹を壊したくはないけれど、ペコペコに空かせたくもないのです。
秋になると、山の紅葉と湖の青が芸術的な景色になる九寨溝、ちょうど今頃はそんな季節でしょうか。
タイトルフォトは、infocus📷さんの作品です。どこかで見たことある感じだなぁとおもっていたら、まさしく九寨溝の鏡海という場所でした。同じ感じの写真も!いつも拙い原稿からイメージを起こしていただいて、読み手へ訴える作品には唸ってしまいます。noteならではのつながりに、感謝です。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。
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