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たった1枚、あればいい #書もつ
芸術の秋ですね。
さまざまな美術館や博物館は、収蔵品を少しづつ展示したり、他の館から作品を借りたりして、展覧会を開催しています。しかし、常設展示という形で、いつでも会える作品もあるのです。
常設展示は、その館の代名詞ともなる作品が選ばれていることがほとんどです。・・というか、常設展示してあるが故に、印象に残るものなのかも知れません。
近年は、広い建物の美術館というよりも、コンパクトな美術館が増えてきているからか、あまり常設展示を見かけなくなったのも感じています。
そういう意味では、徳島県にある「大原国際美術館」は、広大な敷地に、おびただしい数の世界的絵画(陶版画)が展示されています。しかも、ほとんどが常設。レプリカとはいえ、世界最大にして最高のコレクションが、いつ行っても観られるというのはかなり貴重な存在です。
企画展と呼ばれるような、有名な画家の展覧会をきっかけにして美術館に行くとか、家のそばにあるから行ってみるというような美術館もあるかも知れません。
美術館に行きたくなる、そんな本を読みました。
毎週木曜日には、読んだ本のことを書いています。
常設展示室
原田マハ
記憶に残る1枚の絵、偶然出会った1枚の絵、そして、これからの人生を支えてくれるであろう1枚の絵・・短編ながらも、ひとつひとつの物語には、絵のもつ強さや、絵が与えてくれる力を感じました。
短編集の主人公は、全員が女性。この作家の描く女性像は、きっと作家自身であり、作家が目指していた女性、そして何よりも、彼女自身が応援したい女性を描いているのだと感じるのです。
実際に、主人公に共感する読み手も多いだろうし、同じような境遇で、頭を抱えている人は多かれ少なかれいるはず。そのくらい、身近な設定でもあり、全くの空想という手の届かない世界でもない、そんなふうに思いながら読み進めていました。
僕は、この作品集を読んでいて、いつももどかしい気持ちになりました。さらりと文中に現れる絵画の名を目にしても、全く想像ができない自分が、とてももどかしく感じるのです。
ネットで調べれば、答えが出るのですが、そこで答えを出すための時間のために物語を中断するのももったいなくて、結局、答えを知らないままに物語を読み終えていました。
僕が好きなのは「デルフトの眺望」が登場する物語。
光の魔術師と呼ばれた、日本人に一番人気とも言われている、フェルメールの作品です。彼は、遠近法を巧みに使い、小さな画面の中に、ほんの一瞬を閉じ込めたような作品が特徴的です。
物語には、その画家の有名な「少女」の絵が登場して、なるほどその絵が主人公の人生に関わっているのだと解釈していましたが、終盤にこの絵「デルフトの眺望」が登場してきて、物語が一気に広がったように感じました。
美術館で出会う作品、それは行列を並んでやっとの思いで見かけるものもあれば、ふとした時に訪れた常設展示室で出会えることもあるのかも知れません。それは、もしかすると人生も同じなのかも知れないと思うのです。
いつもそばにいて支えてくれていた、自分の中にある、そんな力はどこから来るのでしょうか。
僕にとっての1枚って何だろう。
最後の短編を読み終えて、ぐっと余韻を味わったあと、ページをめくった時の、解説の始まりの文に、うっと息を飲みました。文庫本の楽しみでもある解説は、上白石萌音さんでした。
額縁で切り取られた風景のサムネイル・・infocusさん、ありがとうございます!小説で読むアート作品、まだ読んでいないものもあるなぁ。
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