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そだてる、そばにいる #創作大賞感想

なんだこの人は、このあとどうなる、これからどうする・・緊張しながら読み進めていく。書かれていることは、僕には何もかも未経験だった。しかし、”そんなもんか”では済まされない、本当のことが書かれているのではないかとさえ思った。

読み手は果たして、どんな人になればいいのか、主人公に合わせるのか、主人公とは反対の人か・・読み始めてしまうと、終わりまで読まずにはいられない、スピード感と読み終えるべき目標のある作品だった。

山羊的木村さんの「ハイライト」を読んだ。

果たして読み終えてみると、自分が息をしていなかったような、ちょっと酸素の足りないような、心拍数がやや増えているような、そんな高揚感があった。夜中なのに。

コーチのように人を育てる仕事をする人は、とても尊いと思う。学生の頃、塾講師のバイトをしたことがあった。自分自身、塾に行ったことはなかったから、どんなふうにしたらいいのか、あまりよく分かっていなかった。

働いてみると、そこには教職課程を取っている学生たちばかりいて、先生になる練習をしているような節もあって、普通の学生として素人講師ぶりを隠そうとしなかった僕は、だんだん輪の外に行かざるを得なかった。

大学のサークルで後輩ができた時も、大抵僕よりも楽器がうまかったりするので、育てる意識はほとんどなくて。周囲に迷惑をかけない程度に、後輩をいなすような言動が中心になっていた。同期たちからは「もつは優しい」なんて皮肉っぽいことを言われたのを思い出した。

コーチと実の親子は、もちろん関係性を比べるべくもないけれど、なんとなく育てる目線のようなものは共通しているのではないかと思う。目的は違うけれど、手段は似ているような、うまく言えないけれど、この作品にはそういう対比があった。

テニスを知らないけれど、テニスをしている娘がいる。そんな真面目な父親がいた。

子どもを理解する親は、きっとほとんどいないし、じっさい子どものことが全て理解できている親がいるとしたら、この作品に出てきたような仕組みなんじゃないかと疑ってしまう。怖いことだけれど、能力が備わっている人なら無自覚にできてしまうことなのかも知れない。

物語の始まりから、こんな結末が用意されているなんて予想だにしない。たった数分の読書体験でも、何かじっとしていられない気持ちになってしまう。

主人公の思いを知った上で、そして会場で出会った男性の言葉を受けて、さて読み手の僕はどうしたらいいのだろう。子どもに何を選んだらいいのだろう。

こんな作品を、日曜日の夜中に読むんじゃなかった。
ほら、日付が変わってしまった。



#創作大賞感想 #山羊的木村さん

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