施行 #毎週ショートショートnote
当初の予定から遅れて、年内最終日に”決闘”が実施されることになった。
関係部署に文書が発出されたのは、予算委員会が終わった9月下旬。文書を受領した部署は、速やかに準備を進めた。必要物品を調達し、不足人材を業務委託により揃えた。
原因不明の事象により、実施会場の整備工事の完了が当初より遅れてしまったことは痛恨の極みであった。事務局部署の幹部は、実施日の延期を決め、対外的には工事の遅れによるものとして、工事部門の責任を強調した。
委託契約を締結した企業は、過去の実施状況などのデータを集積し、効果的な実施方法について、他社の追随を許さない圧倒的な信頼性と実現力を兼ね備えていた。決闘にふさわしく、格闘技のリングが設置された。
初めての実施にあたって職員たちは緊張していた。広報が奏功して会場には多くの市民が押し寄せた。選挙にあたって公約に掲げ2期目の当選を果たした市長が、その感慨を押し隠し、手元の原稿を確認しながら、厳かに宣言した。
「初めての年越しそば決定戦、いま勝負のゴングが鳴らされます!」
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