ぶどう農家から、ひとこと
毎週月曜日は、旅の記録を書いています。
先週、家族で温泉旅行に行った記事を書いていたら、そういえば山梨への旅は何度もあったなと思い出しました。
ひとつは、18切符を握りしめて向かった、ひとりぶどう狩り。もうひとつは、社会人2年目くらいに父と行った、富士山一周ドライブの旅。どちらも、僕の旅らしいエピソードがあるので、小出しにします(笑)
ぶどう狩りって、ふつう1人じゃやらないよね?と思わなかった僕は、いよいよ有効期限が切れてしまう18切符を握りしめて、自宅の最寄駅で旅先を物色していました。
時期は9月半ば、「ぶどう狩り」のチラシが目に飛び込んできました。山梨なら日帰りもできるし、ぶどうが美味しいはず。人生で「ぶどう狩り」したことなかったし、いいね、いいね。
と自分を鼓舞しながら、チラシを見るといくつかの農家さんの写真とともに、料金やプランが。農家さんによって、作られている品種の数が違ったり、狩り可能時間が違っていました。はじめての僕は、時間無制限の、10品目以上栽培している、なかなかお得なぶどう農園さんを見つけました。
さっそく電話してみると、明るい農家さんが対応してくれました。駅で見たことと日にちを伝えると、こう聞かれたのです。
「何名様ですか?」
ためらいもせず、「わたしだけです。ひとり」と答えると、電話の奥でハッとしたような吐息が漏れていました。あれ、なんか悪いこと言ったかな。
「えっ・・わかりました」
当日、平日だったので仕事を休んで、仕事のときよりも早く家を出ました。何といっても目的地は山梨ですし、18切符は普通電車しか乗れません。時間がかかると踏んでいました。
しかし、思ったよりも時間がかからずに、勝沼ぶどう郷駅に到着しました。天候も良く、絶好のぶどう狩り日和。駅に着いたら迎えに行くから、連絡してね、と言っていたのを思い出して、電話をして到着を報告。
「えっ・・わかりました」
あれ?また何か悪いこと言ったかな・・どうしたんだろう、でも迎えには来てくれるみたいなので、待っていました。しばらくして、軽トラがやってきて日焼けしたおじさんが登場。
「おはようございますー。今日はありがとうございます・。・・早いですね。」
時刻は朝の9時。確かに、当日の朝に出発したとしても、早めの到着だったかも知れません。でも、着いてしまったのだし、時間無制限だし、何なら朝ごはんを減らして参戦していました。
「だいたい、午後からくるお客さんが多いですよ。でもね、朝の早い時間帯にこの辺は冷えるから、その温度で食べるぶどうのほうが美味しいんです。洗うと水っぽくなっちゃうから、洗わなくて大丈夫。」
なんだかすみません・・朝早くから、たった一人で来てしまって・・。
ぶどう農園さんは、持ち込みもOKな場所だったので、休日には家族連れがピクニックに来るのだとか。ぶどうも食べながら、お弁当も・・それは楽しそう。
「ひと房食べてから、次の房を食べてくださいね。」
さらりと決まりを告げると、おじさんは作業のためにどこかに行ってしまいました。広大なぶどう畑の中で、ハサミを持ちながらぶどうを探しました。複数の種類を食べたかったので、たくさんのぶどうから、美味しそうだけれど、大きくないものを。
味の軽い品種から、濃い品種に行くのが食べやすいとの情報を得ていたので、そんなつもりで選んだ房を収穫。一口食べてみると、ほんとうにぶどうの甘さが広がって、とても美味しかった。確かに、少し冷たくて、渋みが抑えられていました。
おいしい、おいしい。と食べていたら、あっという間に無くなって、さらにひと房・・。時間無制限なので、慌てなくてもいいのですが、ひとりなので時間を取られることも取ることもなく、黙々とぶどうを食べ続けました。
お腹一杯になったので、お土産を買おうと思って、さっきのおじさんを探して、声をかけました。おじさんは、嬉しそうに「美味しかったですか?何を食べましたか?」と聞いてくれたので、美味しかったことを伝え、その時に食べた3種類の品目を答えました。
「えっ・・そんなに」
どうやら、ひとりで3品目って多いようなのです。確かに、スーパーで売られている巨峰などの房を、3房食べるのって多いかも知れません。でも、味も変わるし、なにより好きだし、ひとりで集中していたし・・2時間もかからずに食べていました。
「お客さんは、ほんとうにぶどうがお好きなんですね」
それはこっちのセリフでしょう、と思いつつも、そんなことを言っていただけると思わず、とても嬉しくなりました。人生初のぶどう狩りは、お腹一杯になって、楽しい思い出となりました。
そのあと、駅の隣の近代化産業遺産のトンネルに入ったり、近所のワイナリーを見たり、甲府まで出てほうとうを食べてから、太宰治も来たという銭湯に立ち寄ってから帰りました。午後のほうが長いのに、この数行でまとめてしまってすみません。
いまでも心残りなのは、そのぶどう農家さんの名前が思い出せないこと。あいおい、あすなろ、あかつき、・・たしか「あ」から始まる4文字だったと思うのですが・・。
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