焚火 #毎週ショートショートnote
「「「カンパーーイ!!」」」
こんなに綺麗な星空の下で、飲めるなんて最高だ。
「飯は炊いたけど、レトルトでキャンプ飯ってのも悪くないよな」
焚火の上にセットしてある鍋から、銀色の袋を注意深く引き上げる。袋の表面からも湯気が出ている。
「お前がカレー食いたいって言うから、俺の特製オムライスが披露できなかったじゃんか」
「拗ねるな。お前は、こっちの牛丼の具でもかけとけ」
高校で仲の良かった3人が久しぶりに揃ったキャンプ。時間が惜しいから、料理は簡単に。炊き立てのご飯の上に、熱々のレトルトをかける。
大学を卒業して3年、院に行った俺も、社会人として働き始めた。ようやく2人に追いついたような気がして、会社の面白い先輩や、ムカつく上司の話をしてしまう。
「やめろお前、そういうの人相が悪くなるぞ」
「せっかくの顔が台無しじゃんか」
顔ってなんだよ、酔っ払いが。キャンプで仕事の愚痴なんてカッコ悪いよな。
「困ってんだったら相談に乗るぞ。その代わり、俺のテントな」
「はあ、何言ってんだよ。今夜は俺が一緒に・・」
え?・・は?・・火に照らされたふたつの顔は思いがけず真剣だった。
俺は耐えきれず、冷めたカレーに視線を落とした。
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