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ケーキが無いなら、パンを食べればいい
モン(モンブラン)の季節は秋、というのは今更ながら書くことでもありません。もはや不動の地位を得ているモンの存在に、季節など関係なくなっているような気さえします。
本来は、栗を材料にしているから秋に合わせて作っていたはずだけれど、巷には、チョコや抹茶、さつまいも、かぼちゃ、いちご、レモンまでモンになってしまうわけで。恐るべき包容力と人気。
ここ数年で、栗の香料が改良されたのか、モン風味のお菓子が美味しく、手に入りやすい値段になっている印象があります。4、5年前が、そのピークだった気がして、どんなお菓子にも、モン風味が持て囃されていました。
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なかでもモン風味の豆乳が、僕はとても好きでした。飲んだ瞬間に、これはモンだ!と感動した記憶があります。マロンクリームの香りはもとより、ホイップのもつクリーミーさと、焼き菓子の台にある香ばしさが再現されていました。豆乳本来の、豆っぽい香りが香ばしさに似ていると感じたわけです。モン風味の豆乳はその後、販売されていないので寂しい限りです。
日々の買い物の中で、モンを発見したら試してみる、というスタンスなので、あえてネットで検索したり(したらとんでもない量の結果にすり減りそうだから)しません。
ある日、会社帰りにスーパーに立ち寄ると、パン売り場のワゴンに神々しい光が。
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栗あんとホイップを挟んでモン風味にしたコッペパンでした。…これを見つけた瞬間、なんで今までずっと出てこなかったのかと問い質したくなりました。もちろん、フジパンが悪いのではありません。コッペパンをいくつも出しているメーカーはほかにもありました。
いちごジャム&バターやピーナッツクリームの伝統的な組み合わせから、あんバター(正確には、あんマーガリン)も定番商品になって、今ではたまごやツナのフィリングまであるというのに、なぜモンはなかったのでしょう…!
フジパンのパッケージは、これまでの印象から黒糖コッペパンや、ブドウパンの味が思い出されてしまい、モンコッペなんて大丈夫なのだろうかと、やや心配になりましたが、実際に食べてみるとその不安は全く的外れでした。
よくみると、パッケージ全体に茶色みがかった印刷がされており、そのせいでパンの色が黒糖コッペを彷彿とさせる印象になっていたのでした。
洋風栗あんと表現されていたマロンクリームは、黄色い昔ながらのアレで、ホイップ風のクリームも油っぽくなくて、とても良いバランスでした。コッペパンにありがちな、パンと中身のバランスの物足りなさも薄く、個人的には満足でした。
幼い頃、コッペパンの端に具がないのがイヤで、先に両端を食べてしまう食べ方をしていましたが、大人になってひと口が大きくなったのか、具の余韻とともに食べ終わるのも、コッペパンとの別れを意識するようで意味があるかと思えるようになりました。
また別の日、子どもたちとおやつを買い出しに行った近所のドラッグストアで、驚くべきパンを発見してしまったのです。コッペパンのことが好きで(心の中で)悪態を吐いていた、あのメーカーがついに定番商品にモンアレンジを加えてきたのです。
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モンの要素の一つである台の焼き菓子部分に、パイを組み合わせるのって、無敵じゃないですか(そもそも敵などいない)。デニッシュのバターの香りと、薄い生地が何層も重なっている豊かな食感に高級感が出ると思っているのですが、このパンは元々そういう素質がありました。
アイシング(表面に描かれている砂糖の線)がパッケージにくっついて残ってしまうのが悔しいとか、ほかのパンとは違って、うまく千切れなくてイライラしたりしたとか、そんな記憶もありました。しかし、久しぶりの再会に歓喜し、喜び勇んで購入し、頬張りました。
あぁ、このマロンクリームは、想像通りの甘さと適度なザラ感のある、安定感のあるいつものヤツ。アイシングの甘さと、デニッシュ生地の塩味が、懐かしさすら感じるものでした。
定番のパンのアレンジは、新しいファンを増やすきっかけになり、モン好きにとっては身近にモンが食べられるチャンス。値段も手頃で、持ち運びやすく、また買いたいと思っても、棚から消えてしまいました…。
個人的にずっと嬉しいのは、モンアレンジのパイオニアパン、「マロンマロン」です。いつからか、少しだけサイズダウンしてしまいましたが、毎シーズン棚にいるので安心します。
新しいモン、見つけるたびに、まとめ買いしたい衝動に駆られるものの、美味しくなかったら勿体無いなと思い直してしまいます。たいてい美味しいので、次にお店に行ってもなくなっていて残念なことに…。
モンのパン、意外とありそう。
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