タイガーがいた
今年の干支は、”寅”ですね。
干支は寅、動物は虎。虎といえば、森の茂みに住み、獰猛で凶暴なイメージがあります。大きな大きな猫が睨みを効かせているような、そんな光景が思い浮かびます。
学生の頃、旅が好きな英会話教室の先生が気になることを言っていました。
「ちょっと面白い場所なら、タイガーテンプルがオススメ、いい写真が撮れるぞ」
いい写真・・先生が携帯の画面を見せてくれました・・虎に囲まれて笑顔で写っている男性の写真。あんなに獰猛な虎が、人を襲わずに横たわっているなんて。
虎の寺・・寺の境内に、虎が鎖で飼われている光景を想像しました。その実、虎の孤児院という別名があり、親虎が密猟などで死んでしまった子虎を保護して育てているという、ちょっと心温まるサイドストーリーもあることがわかりました。
それから数年後、友人の初めての海外旅行をアテンドすることとなり、目的地はカンボジアに決定。調べてみるとバンコク経由での路線が見つかりました。バンコクにも泊まることにして、タイガーテンプルへのツアーを探しました。
無事、ツアーが見つかり当日の朝にガイドさんと出会って、車で出発。やっと着いたところは、イメージしていた寺とは違いました。僕がイメージしていたのは、どうやら中国的な寺で、目の前の簡素な動物園のような塀に拍子抜けした覚えがあります。
しかし、中に入ってみると”虎寺”の本領が発揮されていて、そこここに、大きな猫・・いや虎が寝そべっていました。傍には、ショッキングピンクのシャツを着た寺の職員(僧?)が世話をしていました。想像通りだったのは、立派な鎖に繋がれていたことくらい。
こんな感じの写真が撮れました。こんな感じて、基本的に日陰に寝そべっている虎の近くに寄って触ったり、写真を撮ってもらったりできました。立って歩いている虎がいなかったのもあって、大きな猫が寝ている印象でした。右の虎には鎖がついていますが、左の虎は何もついていないですね・・。
乗っているように見えますが、横に座って背中を撫でています。後ろに見える虎は、お腹見せちゃってますね・・大きな猫でしたね・・やっぱり。常に言われたのは、「頭を撫でるな」ということでした。それは、神聖な動物としての扱いらしく、ついつい頭を撫でそうになると、ピンクさんが制止してくるのでした。
友人と一緒に、子虎を撫でる。頭を撫でようとして、制止されている瞬間でした。友人は猫好きだったので、その感動もひとしおだったことと思います。どの虎も、急に動き出すとか、敵意を見せることなく、のんびりと過ごしていました。時折、すごい鳴き声がするときは、虎同士で戯れている時だったので、怖いくらいに危険な感じがしない、という不思議な状況でした。
後に聞いた話では、この寺では保護された虎たちに肉を与えないのだそうです。生肉のような血の匂いのするものから遠ざけること、そして徹底して人間が管理することで、肉は食べない、人間には逆らえないという”教育”をするのだそうです。
英会話教室の先生が見せてくれた写真は、なんと追加料金が必要なオプションエリアでの撮影でした・・確かに、10匹以上の虎に囲まれて真ん中に座るのは、準備が入りますね(虎のセッティング)。気持ちの問題は、数分過ごせば「ここの虎は、猫みたいだ」と安心してしまうからか、囲まれていても怖くないなと思ってしまいました。
なかなか刺激的な場所でしたが、今は見学などを行っているかよく分かりません。というのも、数年前に、密猟業者などに虎の毛皮を売りさばいたとされる報道があり、かなり糾弾されていた記憶があります。訪れた当時も、寄付をもらって活動している、と聞いたのでお財布事情はなかなか厳しかったのでしょう。
お正月に家族で集まり、かるたをしました。「ライオンや虎も猫のなかま」のという読み札で、ふとあの日のタイガーテンプルでの光景が蘇りました。
今年も、僕の旅の記録に、どうかお付き合いください。