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夜と抱っこ紐

ある夜のこと。

ついに泣いてしまった。
子と一緒に寝室を出る。
泣き声で上の子たちが寝られないから。

寝てくれ。

少しだけ、ゼリー状の離乳食を食べさせた。
それで寝る、ときもある。

寝てくれ。

薄暗くした部屋、抱っこで歩き回る。
いつもの子守唄を歌い続ける。

寝てくれ。

床から抱っこ紐を拾い上げ、体に巻く。
外に出られる!と子がはしゃぐ。
抱っこ紐で包まれ、バックルをかける。

子が伸ばした手の先には、玄関がある。
靴を履き、ドアを開ける。

22:45

泣くのは収まったけれど、寝ない。

歩く。
つま先でぴょんぴょん跳ねるように。

歩く。
膝を深く曲げ、ゆらゆら左右に揺れるように。

歩く。
子守唄を歌いながら。

暗い道。
帰り道らしき人たちとすれ違う。

寝ない。

家の前の道を行ったり来たり。

もしかして、寒いのかな?
足をさすり、身体を腕でぎゅっと包む。

あくびが出た。
僕だった。

寝静まった家に静かに帰る。
手近なブランケットで包む。

ちょっと安心したような表情に…なっ…た?

寝てくれ。

歩く。
ぴょんぴょん、ゆらゆら、ゆーりかごーのうーたをー

瞼がとろんと、とろけるように落ちていく。

寝てくれ。

歌っていた子守唄をゆっくりにしていく。

寝てくれ。

23:10

すーすーと寝息が聞こえてきた。


寝た。

ゆっくりと抱っこ紐を解いて、布団におろす。


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