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トクベツ

公園はトクベツらしい。

もう間違いなく、冬になってしまった。だって、年末がやってきているし、寒さを感知するアンテナのような僕の耳も、霜焼けになりそうだ。

寒い、寒い。寒いのに、子どもたちは外に出て遊びたがる。寒いって、ほら部屋の中でだって言ってるのに。朝起きて、ふわふわ布団から出るのだって寒いって渋るのに。

公園はトクベツらしい。

休日、習い事や家族で出かける用事がないとき、ふらりと近くの公園に行く。家からほんの数分の場所もあれば、てくてく歩いて10分とか20分のところもある。

寒いねぇ、誰もいないかもねぇ。今日は、もしかしたら雪でも降るかもね。なんて口にして、寒いことをみんなで感じながら、遊び慣れた公園に向かう。僕は、もう帰りたいんだけど。

公園はトクベツらしい。

家事の隙間や、日中に外に出てあげられかった罪滅ぼしのような夕方に、子どもたちと公園に向かうことがよくある。すると、公園には誰もいない、なんてことが結構ある。

日差しは明るいけれど、温かさを風がさらっていく。手がかじかんで動きにくいし、金属製の遊具は氷でできているかのように冷たい。動いていないと、すぐに震えてしまうような天気なのに。

公園はトクベツらしい。

遊具で遊んでいる子どもを眺めていると、成長ってこういうことなんだと思う。身長が伸びているとか、力が強くなっているとか、そういうことだけじゃなくて。あれ?この前は怖くて登れないって言ってたのに、とか、あんなに高いところから飛べるんだ、とか。

「鬼ごっこしよ!」子に呼ばれて、走り出す。すぐに追いつかれてしまうのは、子の足が速くなっているのか、僕が体力が落ちてしまったのか。ひとしきり遊ぶと、寒かったはずなのに、息が苦しいはずなのに、大笑いしていた。

公園はトクベツらしい。

時報のように夕方のメロディーが流れると、それを合図に帰宅する家族が多い中、僕はまだ遊具で遊んでいる子を眺めている。余裕がある時なんて滅多にないけれど、誰もいなくなった遊具から離れる方が、子どもたちはすんなりと動いてくれる。

冬は、暗くなるのが早い。そして、日が落ちると心細くなるのか、寒さが増して感じられる。いつの間にか上着を脱いで遊んでいた子は、寒いことなんて忘れてしまって、汗すらかいている。

公園はトクベツらしい。

暗くなった公園に、ひときわ明るく光る自動販売機。この季節「あったか〜い」の赤い表示が多く見える。その赤い訴求力に揺らぐ。僕が幼い頃、自販機の「あったか〜い」は缶コーヒーくらいしかなかった。あるとき父親に缶コーヒーを買ってもらった。

熱くて持てないから、大人用のハンカチで包み両手で握る。缶から伝わる温かさよりも、するりと滑ってしまいそうな感覚に緊張したのを思い出す。恐る恐る飲んでみると、コーヒーは苦くなかった。むしろ甘かった。

子どもたちは思い出したように、公園に来る前と同じように「寒い、寒い」と言い出していた。

公園はトクベツらしい。

真っ暗になった公園で、自販機のボタンを押す。子どもたちは、缶コーヒー…ではなく「コーンポタージュ」のボタンを押した。手袋を忘れてしまった子には、僕の持っていたハンドタオルを巻く。「しっかり持たないと滑っちゃうから気をつけてね」と手渡す。

ひとくち、ふたくちと飲み進めると「これがやりたかったんだよね〜」「うちも〜」子どもたちがつぶやいた。「何言ってんの」と笑って誤魔化したけれど、僕もそう思っていた。

公園はトクベツらしい。




こちらの企画に参加、いえ参戦します!!がんばれ紅組!!

#紅白記事合戦2024 #赤のエッセイ #公園 #ホットドリンク



紅組は、椎名ピザさん納豆ごはんさんご夫婦。食べ物と同じクリエイター名を名乗っている僕としては、このご夫婦を応援しないわけにはいきません。しかし、赤のエピソードって何かあったかな…なんて思い出そうとしましたが、結局、身近なことが書きたいなぁと思ったのでした。

寒い日に、自販機のあったかーい飲み物を買うのって、なんか特別感あるんですよね。紅白記事合戦、盛り上がりますように!

読んでいただき、ありがとうございました!




アドベントカレンダー!!あと4日!!

昨日は、ピリカさん。今年買ってよかったもの、自分のためにキチンと出費する、その楽しさと意味を改めて感じました。いい買い物をすると、他の人にも教えたくなりますよね。




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もつにこみ
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