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輝くロマン #書もつ
毎週木曜日は、読んだ本のことを書いています。
「この本、男のロマンって感じだね」
と言ったのは、・・僕ではなく、先に読んでいた妻でした。人の生き方を美しく描く作家の新たな作品を読んでいた妻が、読み終えた感想として言ったのです。
男のロマンとは一体・・と思いながら、男の僕が読み始めた作品でした。
田園発 港行き自転車(上・下)
宮本輝
なぜ彼はそこに行ったのか・・。
爽やかなタイトルとは裏腹に、何だか不安を帯びた物語の始まりだったのを記憶しています。
ひとりの男が隠していたこと、明るみになるにつれて、人の業の深さというか、罪深さのようなものを感じて読んでいました。
僕の想像を超えるような、体力や気力を持った”おじさんたち”の存在は、ときに煩わしいと思いつつも、“遊び”もしっかりと楽しむという行動に驚かされます。それがいわゆる男の勲章というやつでしょうか。
それ以前に、家族を深く傷つけていることは全く理解できないところですが、物語は小説の中だけであるし、自分に重ねようにも、なんとなくすごいけど羨ましくない主人公への共感はほとんどありませんでした。
だからこそ、妻は読み手として「男のロマンを描いたんだね」と語ったのだと思います。架空の小説だからこそ書ける世界、というか物語だと。
タイトルにもある自転車、今でこそさまざまなスポーツバイクも出てきて、ママチャリばかりではなくなりました。手軽な移動手段であり、健康的な道具として、この状況下も手伝って、乗る人が増えているかも知れません。
僕も引越し屋にいた時に、お客さんから廃棄予定のスポーツバイクをいただきました。一年くらい乗っていたら、管理が悪くて、盗まれてしまいました。犯人は捕まって警察からわざわざ連絡いただきましたが、品物はバラして売り払った後でした・・。
そんなことを思い出しながら、僕には真似のできない男性像が描かれていた物語に没入していました。この物語は、作家の夢なのかも知れないし、人には見えない歴史や影があるものだと感じました。
道義的に、なかなかに罪深い主人公でしたが、その周囲に生きる女性たちが明るく元気で、それは読み手にとっては救いでした。
ところどころに、作家の用意したラフさのような表現があって、後から考えると、物語の通底した緊張感を弛緩させるためのものだったのだと気がつきました。
京都や新潟の風景が描かれていて、これまた旅への憧れを募らせる作品のようです。他人の秘密は、何やら気になるものですが、そんなものたちを飲み込んで暮らすことこそ、この現代には必要なことなのかも知れません。
男のロマンとは、隠し事、なのでしょうか。
infocusさんにサムネイルを作っていただきました!これから夕暮れに向かう景色は美しいけれど、何かを隠しているような、ちょっと不安な気もします。田園風景広がる作中の景色から、作っていただきました。ありがとうございます!
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