光年 #毎週ショートショートnote
「彦星が消えた」
国立天文台の職員が、天体望遠鏡を何度確認しても、あるはずの彦星の光が消えていた。年に1度織姫との再会ストーリーで盛り上がる七夕を前にして、事件が起きた。
公式発表をするにしても、原因が分からない。超新星爆発の兆候などなかったし、周囲に衝突するような彗星も走っていなかった。星が自発的に動くことはあり得ないし、彦星の周囲の10光年程度の距離で同一の性質を持つ天体を探したけれど、見つからなかった。
一年に一度の逢瀬として七夕がもてはやされるようになったものの、物理的に出会うとしたら、距離がとても離れている。地球から見ているとわずか数センチだが、実際の宇宙では15光年もの距離がある。
地球からの距離も、織姫は25光年、彦星は16光年ある。
あっ!
職員は声を上げると、16年前の七夕前日の観察日記を検索し表示させた。
備考欄に記載があった。
「メール受信。彦星を誘拐するという予告。悪戯?」
(420文字)
いいなと思ったら応援しよう!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
サポートは、僕だけでなく家族で喜びます!