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今夜の食材は #書もつ

子どもの頃、教育テレビ(今のEテレ)で「おはなしのくに」という番組が好きだった。多分、今でも放送していると思う。

その番組は、朗読された物語を聴くものだったが、子ども心に想像力がかき立てられて、どんな展開になるんだろうと楽しかった記憶がある。

ただ、怖い雰囲気の物語の時は、僕の怖がりな性格が災いして、どんどんと怖い展開を想像してしまい、途中で消してしまうこともあった。

本を読んでいるときのことを考えてみる。

文字で読むと自分自身の声が頭の中では朗読をしているけれど、音声になると、途端に別人が演じているような鮮やかさを伴う。

聴く読書で、小説を読むのは、文字を追うよりもスピードは落ちるけれど、その場面が映像として結びやすいようにも思う。つまり、おすすめである。

ショートショートの名手として有名な著者による、短編集を聴いた。舞台は、一般的ではない食材(こんな控えめな言い方では足りないくらいだが)を料理して食べさせてくれるお店だ。

もしも料理店
田丸雅智

食材の例を挙げれば、自動車、月、虹…そんな感じだ。実物を思い浮かべると、かなり大きなものばかりで、ほんとに食べられるの?と思うが、登場するのは、ちゃんと「小さい」。

驚いたお客が「おもちゃですか?」とか「ミニチュアですか?」と言ってしまうくらいの大きさで、シェフも「このくらいの大きさなら食べられるのです」と真面目に請け負う。

読み手としては、つい現実世界に当てはめてしまうが、相手(書き手)はショートショートの名手である。お店に入れば、もう非現実なのだ。

そんな非現実的な食材を食べると、その食材の性質によって、お客が様々なことに気付かされ、そして癒される。主人公は、この店に勤めるアシスタントで、お客と同じように驚きつつ、シェフの手腕に憧れる若者で、突飛な設定の橋渡しをしてくれる。

個人的には、トランペットが食材として登場してきて嬉しくなった。金管楽器が、果たしてどんな料理になるのかは読んだ人にしか分からないことにしておきたい。

食材が“とんでもない”から、調理法もきっと“あり得ない”のではと想像する人もいるかもしれないが、そんなことはない。

例えば、最初に登場する自動車は「豚肉」に似ているから、トンカツのように揚げたりする。ほかの食材も、現実にある食材に似ているという設定で、調理過程も描かれているので想像できてしまう。

登場する食材の調理方法は全て違う。それは、シェフの腕前の凄さでもあり、小説ならではのキャラクターでもある。食べたときの美味しさの描写も的確で、読み手はお腹を空かせることになるだろう。

僕の食べたい食材を挙げるなら、信号機、トランペット、月、かなと思う。

それにしても、このお店の料理は一体いくら払えば食べられるのだろうと気になってしまうのは、やっぱり現実から抜け出せずにいるからだろうか。

この感想を書き終えて、布団に入ると、変な夢を見た。

社員食堂のようなところで、大ぶりの鶏肉が入ったパスタと、何か丼ものを注文し、両手に皿を持ってデスクに帰ったところで目が覚める。ふだんは夢なんてほとんど覚えていないが、明らかにこの物語の影響だ。

寝ても覚めても、お腹が空く物語だった。


今年も「書もつ」を読んでいただきありがとうございました。おかげさまで続けることができました。

年末は、昨年同様に「今年読まれた投稿」か個人的に印象深い作品を振り返りたいと思います。


紫色が印象的なサムネイル、infocusさんありがとうございます。鮮やかにいろんな料理を作るシェフのイメージがピッタリでした。



アドベントカレンダー、ゴールまで1週間!

昨日は、三谷さん。かぼちゃのお菓子って、たくさんありますね。ソフトクリームの鮮やかなかぼちゃ色が印象的でした。野菜が材料になっているお菓子って、身体に良いイメージがあって、つい食べ過ぎてしまいます・・って僕だけか。

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もつにこみ
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