物語を、解いて説く、ひたすらに
毎週木曜日は、読んだ本のことを書いています。
読書記録、noteでは多くの方が書かれています。実用書の要約、自分が学んだことのまとめ、さまざまな本を有機的に繋げる試み、図解、読書感想文、書評・・さまざまな形式と視点があって、たとえ同じ作品に当たっていたとしても、そこから導かれる言葉には、多様な視点が見えてくるものです。
実家にいる時、毎週日曜日に必ずと言っていいほど観ていたアタック25がまもなく終了(先週末?)と言う話を聞いて、ふとこの読書家さんのことを思い出しました。いつもは物語を紹介すると決めている場所ですが、今回は少し趣向を変えて。
ひたすら面白い小説が読みたくて
児玉清
長い旅でした。的確な文章に驚かされ、はてこの人は作家だったかと思ってしまうくらいに、熱く愛情のある解説たちが並んでいました。
無邪気に作品を称え、登場人物が架空の存在であることを忘れてしまうような思い入れを正直に告白する。
本が好きでたまらない児玉さんの気持ちが溢れる作品でした。こんな解説を書いて貰えたら、作家も嬉しいし、読者も嬉しい。
「あの」児玉さんの解説に出会うために、まだまだたくさんの本を読みたい。
この作品、文庫本を買った時に、作品の後につけられている「解説」を集めたものなのです。しかも、一人の筆者のものをただ集めて並べているだけのシンプルな作品。
その筆者が、アタック25の司会者でもあった、児玉清。彼は、読書家、本の虫、強読家・・そんなふうに表現されるくらいに、本を読んでいることで有名でした。
文庫本の解説は、じっくり読む派でしょうか、それとも読み飛ばす派でしょうか。僕は、どちらでもあります。冒頭の数行を読んで、判断することが多いのですが、作品を読み終えてから、自分なりの理解と、他者の視点の確認のような意味合いで読むことがよくあります。
この本を読んだ時、紹介されていた物語のほとんどを僕は知りませんでした。でも、作品を愛し、小説を愛している筆者のほとばしる感情と、冷静な筆致が、まだ見ぬ作品たちを輝かせてくれました。
どうやったらそんなふうに書けるのか、作品を讃えつつも、具体的なネタバレを避けるのです。作品の後に記載されるのを知りつつも、まだ読んでいない人に向けても書いているのです。これが、本当にありがたかった。
そして、作家を手放しで褒めない。その厳しさと温かみのある文章は、好々爺にふさわしい雰囲気を感じるのでした。とにかく、筆者の解説に触れると、実際の作品を読みたくなるし、読んでみると、当時の解説の記憶に「なるほど」と膝を打つ思いがします。
この作品を読んだ後に、「日本国債」「かなしぃ」「鹿男あをによし」なんかを読んだ覚えがあります。解説を読んでから、作品を読むと言うのも普段やったことがなかったので、新しい本の選び方だなとワクワクしたのも嬉しかったです。
42編もの解説が収められていますが、国内の作家さんたちを勇気づけるだけでなく、海外文学も多くて驚きます。
読みながら、なんとなく原田マハの「キネマの神様」のおじさんの雰囲気も思い出したりして、小説を読み、物語を愛し、作家を励まし、さらに読み手へ訴求すると言う、彼の深い愛情が感じられる作品でした。
読む本がわからない・・と思っている人は、この解説集から読むのもおすすめです。
お見事!と児玉さんの声が聞こえてきそうです。アタック25の本の紹介みたいになってる(笑)infocusさん、ありがとうございました!
厳密に言えば、まだ空いている数字があるのでアタックチャンスは出来なさそうです・・。