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手紙と遺言と

毎週木曜日には、読んだ本のことを書いています。

仕事にずっと打ち込んでいると、ふとした時に家族の存在を強く感じることがあります。最近、NHKの記者のブログをTwitterで流れてきたものを読みましたが、特に夫と妻という関係性の、不確かさと強さのようなものを感じました。

家庭内のことを公にすることは恥ずかしい・・そんな考え方がだんだんと薄れてきているのでしょう。僕は、それはむしろいいことだと思います。

もし、妻から遺言をもらうとしたら・・そんなことを考えるのは”縁起でもない”不謹慎なことかも知れませんが、この物語の主人公のことを重ねて考えてみると、果たして自分は何をするのだろうかと、考えてしまう読み終わりでした。

秋ちょっと寂しい感じと、旅の楽しさと、そんな雰囲気の漂う作品。

あなたへ
森沢明夫

じんわりと風景が流れていく物語。どんな人生を歩んでいくのか、それは誰にもわからないけれど、きちんと生きようと思える作品でした。
出会いも別れも、人生の部品として成立していること、淡々とした描写ながらも力強く感じました。
塀の中という特殊な世界の前提は、常に緊張感を与える効果があったし、正しさの中で生きねばならないという苦しさが象徴されているようでした。旅の間に読みたい作品です。

この作品は、どうやら映画が先で、そのあと小説化されたようです。小説にしたくなる映画・・見てみたいです。僕の持っていた文庫本も、高倉健が神社で祈っているような写真でした。だから、きっと映画なり映像化されたんだろうなぁと思っていました。

刑務官として働いていた男が主人公。妻が亡くなり、妻が残した遺書をめぐって旅を始めるという出だしに、僕はとても揺さぶられたのを思い出します。

夫婦や家族って、一体感のようなもの求められたりして、社会の最小単位だなんて言われてしまうけれど、ただそれが一つにはなりきらないこと、個人で生きていくのは変わりないこと、そんなことを思いました。

旅先では、またいろいろな人との出会いや、展開が待っている訳ですが、塀の中で”悪い奴ら”を見てきた主人公の出会う人たちが、基本的にはとてもいい人たちだったのが印象的な物語でした。悪い人が出てきて欲しい訳じゃないのですが(笑)

生きていくために、何かを隠さないといけないとか、大切な存在から離れないといけないとかって、実はどんな人にもあるし、起こり得ることだなと思うと、寂しさも怖さもある、みんなにある影を見た思いです。

遺書にまで残し、自らがいなくなってから真実を明かすという、そんな気遣いというか配慮が、夫婦の形を考えさせてくれる思いでした。単なる幸せとか愛とか、そういうキラキラした言葉ではなく、噛み締める思いというか確認していくようなしっとりとした視点もまた新鮮でした。

そして、キャンピングカーで日本を旅する、というのもとても魅力的な設定でした。人生そのものを旅に例えることはよくありますが、やっぱり最後はひとり旅で、その時その時に出会う人たちによって、旅が少しずつ変化して続いていくのだなぁと思いました。


映画のワンシーンのようなサムネイル、infocusさんありがとうございます。infocusさんは映画を観たそうで、小説と映画のコラボですね。奥さんに感謝を伝えたくなる作品です。

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もつにこみ
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