大好き、って言うな
「だいすきひゃっかい」という絵本があります。子と保育園から借りてきて読んだことがありましたが、涙が出てしまうほどに、あったかくてやさしい作品でした。
子どもは衒いなく「だいすき」と言ってくれます。上の子が字を書き始めたとき、小さな紙に鏡文字で「だいすき」と書かれた手紙をもらったことがありました。
対して親が「大好き」と子どもに言えることは、大切なことだし、子どもにとって安心につながるのかもしれません。僕は、初めての子が生まれたとき、その言葉をかけてあげることはあまりありませんでした。恥ずかしかったのです。
少し前に、1歳、5歳、9歳の子どもたちの寝かしつけ事情について書きました。年が明けても、同じようなシフトで親たちが順に寝かしつけをしています。
そんな中で、僕が1歳児を寝かしつけることになった日のことでした。
1歳児は御多分に洩れず「ママっ子」で、機嫌が悪くなると「ママがいい」と泣く傾向があります。
そのたびに、ママ(妻)が駆け寄っては、なだめて、あやして、時間が溶けていって。1歳児の機嫌が直り、別のものに興味が移るまでは、ママイスは身動きが取れないことが多くあります。その間、僕は自分のことや家事を進めていくことにしています。
さて、我が家の寝かしつけは、常夜灯だけ点けた寝室で、とにかく布団に寝ころばせて、子守唄を歌い、身体をトントンとさするようにたたく、ふつうのやり方です。
穏やかにしていたらスッと寝るときもあれば、座ったり立ったり、落ち着かずに動き回って、結局上の子たちも合流して、さらに寝ないこともあります。日によって寝かしつけの反応も違うので、気力を削られているような心境になることも。
その日は、ようやく寝る体勢が整ったようで、とろんとした目に。何かの本で、子どもに肯定的な言葉を伝えるのは、寝入るタイミングがいいと読んだので、時々実践しています。
「大好き」
下の子は、ふだん上の子たちからの「かわいい」「だいすき」のシャワーを浴びているので、僕が言っても大したリアクションもないのです。
「大好きだよ」
何度か、同じことを繰り返していたら、この表情が少しずつ変わっていきました。喜んでくれたのかな?なんていい気になって、ゆっくりと繰り返しました。
「大好き」
子の表情は、喜びではなく悲しさを訴えるような様子になっていました。そして、目からこぼれ落ちる涙。声を出すのを我慢しているかのように、静かに泣きだしました。
なんで?どうした?
慌てました。大好きという言葉が、何か別れを想起させたのか、大好きと言われるのが嫌なのか、大好きと言われた過去の悲しい記憶か…。一歳の子にそんな記憶があるとは思えません。
結局、静かに涙を流しながら寝てしまいました。
もしかしたら妻も同じようなことをしていて、ママを思い出して泣いてしまったのかと思い、妻に確認すると「さぁ?」との返信。
妻からは、「自分の感情を出さないで静かに泣いているのは、僕に似ている」との言葉。大好きと言われて、嬉しかったのかな…。
結局、真相は分かりませんでしたが、子と僕が似ているかもしれないというのは分かりました(笑)