人間っていいな #書もつ
ああ、そうだった・・そうだった、この作家さんを読み始めたら、こんなに引っ張られるんだったなぁ。と思い出しながら、どんどん物語に没入していく僕に気がついたのです。
毎週木曜日には、読んだ本の記録を書いています。
おまじない
西加奈子
長編の小説をいくつか読んではいました。冷静な視点を保ちつつも、物語が熱を帯びてくると、途端に隣に座っているというか・・うまく表現ができませんが、とても距離が近い感じがするのです。クラスにいたな、とか、近所に住んでそう・・なんて思ったりする、登場人物の普通さとアクの強さ。
小説だからこそ、突飛な設定が出来るのですが、物語の終盤に来ると、見事に収斂されていくのが見事だなぁと思うのです。だから、この作品のような”短編集”というのは、とても意外でした。
短編集というのを知らずに、単に家族から借りたから読む・・という感じで、本を開きました。初話「燃やす」から、圧巻でした。
子どもを子どもとして書かない・・それは読み手にとって冷静さを忘れさせずに、特に男性にはズシンと来るような、胸ぐらを掴まれるような距離感を感じる瞬間はありつつ、心温まるラストへつながる、とても人間味溢れる展開・・これが西加奈子だー!!って、久しぶりに思い出して、そして久しぶりなのが悔しくもなりました(笑)
人間を信じて観察し、人間らしいところを飾らずにキャラクターに落とし込むところが、僕は好きなんだなぁと思うのです。こんな人、いるわけないじゃんと思うくせに、読み進めたら「あれ?これって僕か?」と思ってしまうようなことも。
中でも、人間の表裏の鮮やかさを描き、それはつまり愛情の表現の一つでもあるよなぁなんて思えるからこそ、この作家に出会えてよかったなぁと思うのです。
そんな瞬間が訪れたのは「孫係」という話でした。読んで字の如く、孫の係。仕事をしていると、自分の役割みたいなことを考えがちで、暮らしの中でも「ふるまい」とか「よそおい」のような、その立場に求められる言動を考えてしまうこともあります。その行動の裏側にあるものは、「係」のような意識なんだなぁと気がつきました。
一つ一つの話の感想は、読んだ方それぞれで楽しんで欲しいなぁと思いつつ。
長編小説が苦手って方は、この作品を西加奈子の初めましてにするのをオススメしたいです。結構キツめなキャラクターも出てくるけど・・この作家ならばちゃんと救ってくれる、そんな風に思える作品ばかりです。
水溜りに映った葉っぱ、同じようで違う、そんな関係性を表しているようです。infocusさん、ありがとうございます!
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