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【重度知的障害②】私が教えてもらったこと(中編)

◾️毎日を真剣に、やりたいことに全力

モナミの運営する、重度知的障がい者向けのグループホームに住んでいる、ある男性ご利用者の話です。

そのご利用者は、テレビを見るのが大好きです。
大相撲、甲子園は特に大好きで、シーズン中はテレビにかじりつき、大興奮
どちらかを応援してて、負けて怒ったり、勝ってバンザイして大喜びをしたり、喜怒哀楽を気持ちよく表現しています。そんな姿を見ていると、見ているこちらが自然と微笑んでしまいます。

また、将棋も大好きで、将棋の番組を見ながら、テレビの前に自分の将棋版を置いて、一緒に将棋をさしていきます。真剣な面持ちで、集中して、一手一手を熟考するような表情です。

そんな姿を毎日見ていて、毎日、自分の好きなこと・やりたいことを、人目を気にせず全力でやり続けている姿を、率直に「すがすがしい」と感じるし、「羨ましい」とすらも感じたりします。

昨今、「人からどう思われるか?」「どう見られるか?」ということを気にし過ぎてしまい、メンタルが不調になってしまう人も多くなってきていることを考えると、彼らの生き方は、学ぶことが多いのではないか?と思うような生き方です。

◾️とあるお正月の日のこと

設立当初(というかつい最近も)、年末年始などの長いお休みの時は、私が支援員として、泊まり込みで一緒にご利用者と生活したりしています。
(ご家族のいるご利用者は帰省などをしていますが、各ホーム毎年1〜2名は滞在されます)

今年は2名の男性ご利用者と一緒に過ごしましたが、そのうち1名が、上述のテレビが大好きなご利用者さんで、毎年ご兄妹が「おせち」を送ってきてくれます。
ご本人はそれを楽しみに、「おせち!」と毎年到着を指折り数えて待ちます。

そして今年も、恒例のおせちが無事送られてきました。とても嬉しそう!
しかし、もう1名のご利用者さんは、ご家庭の事情もあり、おせちなどはありません。ホームとして、お雑煮やお餅、少し正月っぽいメニューをプラスαして、お食事を出していました。

そんなお食事の席で、テレビ大好きなご利用者がもう1名のご利用者を指差して、「おー!おー!」と言って、自分の大好きなおせちを分けてあげていました。

こいつにおせちないのは可哀想だろう、ちょっと分けてやるから、食え食え!」と(言っているだろうご様子)。
もう1名のご利用者は、言葉は発せずも、満面の笑み。とても嬉しそうに召し上がりました。

いつもはヒトのことを気にせず、自分のことを全力で楽しんでいる一方で、
こんな時はとっても仲間想い
。なんてイイヤツなんだ、、と胸がジーンとすると共に、
自分の大事なローストビーフやエビはあげずに、煮干しとか大根とか、ちょっとショボめのやつをあげているところも、とても人間ぽくて、元旦からホッコリしました。

◾️一昨年の年越しのこと

また、一昨年の年末は、私とテレビ大好きなご利用者の2人で、ホームで年越しを迎えました。
ちょうど12時を回る時間になると、

ドタドタドタドタ!!!

と階段を荒々しく駆け降りてくる音が聞こえ、「なんだ!何かあったか?!」と驚いていると、ガチャ!とリビングのドアを開け、

「おめとう!!」

と言って、またドタドタドタドタ!と階段を駆け上がっていきました。
駆け上がった後、2階からは、正月の特番を見て楽しそうにしている声が聞こえてきます。

彼は、誰にでも分け隔てなく接してくれる仲間想いの(それでいてサッパリしている)ご利用者で、とても嬉しい気持ちになった年越しでした。

◾️尊敬すべき人間としての在り方

このような年末年始のエピソード以外の日々の日常でも、彼らは、私が行くと、いつも「お、来たのか」と温かく迎え入れてくれます。
日々の生活は自己完結しているようで、実は仲間想いで、相手を思いやることができ、決して誰かを仲間はずれにすることなどありません。

また、日々は、人の目を気にせずに、全力で自分のやりたいことを、とても楽しそうにやりながら、日々を過ごしています。
このいつも「ブレない」生き方・生き様には、尊敬の念を抱くことが多々あります。

生活を送っていく上で、1人ではできないこともたくさんありますが、その支援のために福祉サービスがあり、日々、私たちが生活における支援をしています。

そんな日々の支援の中で、私たちがご本人の意図を汲みきれなかったり、気が利かずに失敗してしまうこともあったりします。そんな時も、いつも寛大な心で、気にせず・変わらずに接してくれ、何度でもこちらにチャンスを与えてくれます。

これらの人間性は、私がなりたい人間そのものを体現しているかのように思えます。

(つづく)

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