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母の大好物が大の苦手である
あなたの親御さんの好きな食べ物は何ですか?
実は先日ある方から亡くなった母の好物は何でしたか?と聞かれて、私は咄嗟に答えることができませんでした。姉は「母はさつまいもの天ぷらが好きで、自分が亡くなったらお供えしてほしい」と言っていたと話していました。姉がまだ小学校の2年生くらいのことなので、かなり昔の話です。
私はパッと思いつかなくて、「いも、かぼちゃ類は好きだったと思います〜」と場を誤魔化すように答えてしまったのでした。
いや〜、お母さんの好物が何だったかすぐに答えられなくて悪かったな〜、なんてことを考えながらスーパーで買い物中、ふと果物コーナーに視線をやると、あった。お母さんがめっちゃ好きだったのあったやん。
それはいちじく。
兵庫県川西市産 朝採り と書いてあります。
兵庫県川西市はいちじくの県内有数の産地で、現在流通しているいちじくの大半を占める品種「桝井ドーフィン」発祥の地とされています。
川西市ホームページより以下引用します。
川西のいちじくの歴史は、昭和初期、広島県の桝井光次郎氏がアメリカから帰国する際、フランス人の友人からもらった北米原産のドーフィン種を持ち帰り、果樹地帯であった川西に注目し、萩原に住んでいた友人の前川友吉氏と当地での栽培に成功。桝井ドーフィンという品種を作り出し、神戸、和歌山や愛知へと栽培が広がりました。
現在、桝井ドーフィン種は国内のいちじくの大部分を占めるようになり、海外へも広がっています。
阪神エリアではお盆を過ぎた頃から出回り始め、10月上旬頃までが美味しい時期。まさに今が旬ですね。
川西産いちじくの最大の魅力は何といっても「朝採り、完熟」おしり?のところがパカっと割れて完熟したいちじくを農家さんが日が登る前に収穫して、すぐに阪神方面へ出荷され、その日のうちにスーパーなどの店頭に並びます。
生産地と消費地の距離が近いために受けられる恩恵です。
この鮮度抜群のいちじくの愛称はその名も「朝採りの恵み」わ〜、美味しそう!
スーパーの果物コーナーに朝採りいちじくが並ぶと、ご婦人方がわらわらと集まりだし、1パック、2パックと買い物かごへ入れていきます。
もちろん私も・・・、と言いたいところですが、この記事を読んでくださっているいちじく好きの皆さま、いちじく農家さん、すみません!今からいちじくをディスります。(え、これなんの宣言?)
自分の好きなもの、丹精込めて育てているものを悪く言われるのは、決して気持ちのいいものではないと思うので、もう先手必勝とばかり先に謝っておきます🙏
亡くなった母はいちじくが好きでした。
毎年この季節が来ると必ずいちじくを買ってきて、美味しそうにひとりで何個も食べるくらい大好きでした。
ですが、私は母がいちじくを食べる姿を見るのが嫌いでした。
いちじくを割った時のビジュアルがどうにも苦手でして。
あの赤いところが子ども心にグロテスクに感じ、毒々しくて邪悪な悪魔の食べ物だと思っていました。
今で言うところの悪魔的に美味しいの意ではなく、悪魔が人間の血肉を喰らうようなイメージです。
そんなわけで、母がいちじくを食べている姿は、まるで人間の血肉を喰らっているかのようなイマジネーションの世界へ誘われ恐怖すら感じてました。
しかも母はジュクジュクに熟れたのが好きだったので、ジュルジュルっと音をたてて果肉をすすり、指先からは果汁がポタリと滴り落ちる・・・。
これがホントに嫌で。
子どもの頃、お母さんが美味しそうに邪悪なもの食べてる!イヤーー!😭と思ってました。
そんな頃から20数年。ウソです。30年近くが経ち自分が母親となったある日、食わず嫌いのままじゃあかん、これじゃ我が子に示しがつかないやん!という思いに至りました。
親が子に対して「好き嫌いしないで何でもまんべんなく食べなさい」なんて偉そうに言いながら、その親がしっかりちゃっかり好き嫌いしてるわけですからね。
そもそも普段食事を作る人が嫌いな食材は、基本食卓にのぼらない傾向にありませんか?だって自分が食べたくないのですから。
なので私もご多分に漏れず、苦手ないちじくをわざわざ買うことはしてこなかったのですが、でもふと思いました。
自分の食わず嫌いのせいでウチの子たちはいちじくの味を全く知らなくてもいいのだろうか?
これって食育的にどうなのよ?
以前の職場の同僚は、母親がセロリ嫌いだったため食卓に並ぶ機会が一切無く、高校2年生になるまでセロリの存在を知らなかったと話していました。
それを聞いた時は「よく高2になるまでセロリに出会わずに来れたねwww」と笑ったけれど、ウチの子たちだって大人になるまでいちじくの存在すら知らないまま社会に出て、恥をかく羽目になるやもしれん。
うおお、もしそうなったら「おかんのせいで、いちじく知らなくて恥かいたやんか!」て恨まれてしまう。
それはあかん。たかがいちじくだけど、あかん気がする。
子どもたちがまだ小学校低学年くらいだった頃でしたが、我が子にいちじくの味を知ってもらうため、食の豊かさを自分の舌で感じてもらうため、これは食育なのだ。といちじく買うだけなのに、めっちゃ大層な理由をつけて買いましたよ。たった一度だけ。
「朝採り いちじく」をいざ実食。
・・・・・・・・・
参りました。
いちじく好きの皆さま、いちじく農家さん、本当にごめんなさい。
やっぱり割った時のビジュアルと、赤い部分のプチっとした食感がどうしてもダメでしたーーー。
一緒に食べていた娘は、目の前で私があまりにダメージくらってるのを見て「美味しくないもの」という先入観ができてしまったらしく、少し口にしただけでそれから食べなくなってしまいました。
息子は知らない食べ物に対して警戒心が強くて、初めて見たいちじくにドン引きし、「ボク食べない」宣言。
食育は完全なる失敗に終わりました。
残ったいちじくは夫に食べてもらいましたとさ。
毎年いちじくの季節がやってくると、母が美味しそうにかぶりつく姿を思いだします。
まだまだ元気なうちに産地直送便で「朝採り いちじく」をドーンと送ってあげればよかったな。
いつもお土産のお菓子などをいただいても「一人じゃ食べきれないから」と言って、結構ウチへスライドさせてたから(お土産をくださった方ごめんなさい)、食べ物を送るのは気が引けていたーーというのは、やっぱり言い訳かな。
親孝行 したいときに 親はなし
これ、本当ですよー!
今のうちにたくさん親孝行しておいてくださいね!
最後まで読んでくださりありがとうございます!